第五十七話 あなたは妖怪ですか?
“不可思木の森”と書いてある、小さな看板が目に入る。
ようやくたどり着いた。
「ふ~ようやくたどり付いた!以外と時間がかかったな!」弾は安堵の顔をした。
さっそく、大きな木がそびえ立つ、この森を進む。
木はあまりに大きくて、太陽の光は差し込まない。
木や地面には、一面の苔が生えている。
その苔は水分たっぷりに輝き、緑一色の世界だ。
とても美しい景色で、今にもキラキラと音が鳴りそうだ。
「朝っきり何も食ってねぇから、腹減った~」茶々丸は元気のない声で言った。
「そうだな。この森にある茶屋は、森の名物であるきのこを使った料理を出していると聞いた。きのこ料理の昼飯といくか!」
「おう!そう来なくっちゃ!」茶々丸はすこぶる元気となった。
「話しは変わるけどよ。
今は真冬だ。不可思木の木の実、こんな時期になるのか?」茶々丸は、木を眺めながら質問した。
「そこも不可思議・・・。
木の実がなる時期が決まっていないんだ。
だから、木の実と出会える事自体がむずかしい。ましてや奇跡の実は、本当に奇跡が起こらないと・・・」
「なるほどな・・・本当に不可思議な木だな」
すると、茶々丸が指を差して叫んだ。
「あったーッ!!!」
その先には、茶屋があった。
“てんてこもぐら茶屋”と書いてある小さな、茶屋だ。
「びっくりした・・・実があったのかと思ったじゃないか・・・」弾は胸に手を当て、肩を落とした。
「行こうぜ!行こうぜ!早く茶屋へ行こうぜー!」
―二人は、茶屋の前に置いてある椅子に腰をかけた。
赤い布が引いてある、長椅子だ。
この椅子から見える、眺めも最高。
店の人間に“森の名物である、きのこを使った料理”を頼み、ひと休み。
料理が出てくるまでの時間、二人は天まで伸びる不可思木の木を見上げた。
「実・・・あるかな?
木が高すぎて実がなっているのか、なっていないのか見えないな。
どんな実なんだろう?」茶々丸はずーと実を探している。
すると弾は、荷物から本を出した。
いつも読んでいる“五行書”だ。
「この本に不可思木の実の事が書いてある。ほら、実の絵も描いてあるんだ」
どんな実なのか、茶々丸にも見せてやった。
「林檎のような形をしているが。
林檎と違う所は、横しま模様だって事だ」
「ふ~ん。覚えとかないとな!間違えて食っちまうかもしれない!」
そんな会話をしていると・・・
二人に、心臓が止まるほど驚く事が起こる。
―「あなたは妖怪ですか?」
急な質問を問いかけられた。
人間に。
「「・・・・!!???」」弾は固まった。
“間違いない。
間違えなく、人間だ”
店で働くおばあさんが、確かに弾にそう言った。
そして、そのおばあさんは、微笑ながらきのこ汁をそっと弾に渡す。
“何故、人間がそんな事を?”
その時の弾は、全く状況がわからなかった。
“あなたは、妖怪ですか?”
この世に、そんな事わかる人間などいるのか。
弾は返事も出来ないまま、きのこ汁を受けとった。




