第五十五話 旅の計画
「はぁ・・・」
茶々丸は深いため息をつく。
二人は今、青々とした草原を進んでいる。
真冬のツンと冷めたくて、爽やかだ。
だが、何故だか茶々丸は冴えない顔をしている。
「さっきから、どうしたって言うんだ?ため息ばかりついて」弾は、声をかけた。
「はぁ~今、俺。
怪我をして、包帯を巻いているだろ?
俺の腕にある、稲妻模様が見えないから・・・なんか調子でねんだ。
俺からイカした稲妻を取ったら、ただのねずみじゃねーか!」
茶々丸の右腕にある、稲妻模様。
一部分だけ白い毛が生えていて、ギザギザの模様が稲妻に見えるのだ。
茶々丸の自慢の稲妻である。
「なーんだ、そんな事か!」弾はそう言って、懐の中にいる茶々丸の腕を引っ張り出す。
「いてて!もっと優しくやってくれ!」
弾は、腕の包帯を少しだけめくり上げて、稲妻が見えるようにしてやった。
すると、茶々丸に笑顔が戻る。
「っしゃー!やっぱりこーじゃなくっちゃ!
俺はな、この稲妻を見ると、いつも強くなれた!
俺の自慢なんだ!」茶々丸は自信満々に言う。
「ふーん」弾は、真っ青な空を見上げながら、答えた。
“俺はずっと・・・この稲妻を見ながら戦って来たんだ。
俺は特別なんだ!ってこの稲妻に力を込めた。
いつか、アイツ等を見返してやる!
俺は絶対負けないし、諦めない!”
茶々丸は稲妻を見ながら、心の中で呟いた。
スーッと遠い目をして、蘇る昔の記憶。
ねずみの群れの中、一人ぼっちだった自分の姿が思い起こされる。
時より心の中で、見え隠れする辛い過去。
茶々丸は頭を振りきり、気持ちを入れ直した。
「あ、そういえば!
海に向かうと言っていたよな?海に何か用なのか?」茶々丸は、弾がボソっと言った、海に向かうという言葉を思い出した。
「あぁ。
島へ行こうと思っているんだ」
「島?」
「うん。
だが、少し訳ありな島なんだ。
茶々丸は、まだ大きな怪我をしている。
今は行くべきではないか・・・迷ったんだが。
この前、言っていただろ?
「俺の為に危険を避けたり、遠回りしたり
諦めたり、絶対すんなよ!」って。
だから、向かおうと思う。
封印の島へ」弾は真剣な顔で言った。
「え、え、・・・封印の島?
名前からして、物騒な島だな。
た、確かに危険を避けるなとは言ったけど・・・」茶々丸は急に弱腰になる。
「なーんだ。また得意の大口を、叩いただけだったのか!」
「大口じゃねーよ!
行くに決まってんだろ!勘違いすんな!
っで、島に行くって事は、そこに真実の実があるのか?」
「会ってみたい人がいるんだ」
「人間・・・か?」
「封印の島。
そこは決して、人間が辿りつける場所ではない島だ。
極悪の妖怪たちが、島流しされる場所として使われているからな。
少しばかり訳有りな島だが。
たった一人だけ、人間が存在する。
不老不死の修行をして、仙人となった人間だ。
喜楽仙人、その人間に会ってみたい」弾は楽しそうに言った。
「極悪―ッ!?島流しの場所―ッ!?
お、穏やかじゃねーな!
その・・・なんちゃら仙人に、何か用なのか?」茶々丸の瞳が震えた。
すると、弾は荷物からいつも読んでいる五行の書を出した。
「俺が、薬の作り方を学んだ本。
実はこの本、著者は誰かわからないんだ。
明鏡の絵空事、伝説の薬を作ったのは、この本の著者だ。
それが一体何者なのか・・・知りたい」
そして、弾はあるページを開いて見せた。
「この本の、ここに喜楽仙人の名前が書いてあるんだ。
この本の著者が、何らかの薬を作り、喜楽仙人に飲ませたという記録が書かれている。
アゲハたちと祭りに行った時。
獅子大丸と、この本の事、旅の事を話していたんだが。
獅子大丸が、喜楽仙人が封印の島にいる事を知っていたんだ。
だから、海を越え仙人に会いに行こうと思う。
きっと、仙人はこの本の著者と会っているはずだ。
この本の著者がわかる事、真実の実に近づける気がするんだ」そう言って、弾は本と握り締めた。
その話しを聞いた茶々丸は、納得した顔をした。
「よし、わかった!喜楽仙人を探そう!」そう言って、にこりと笑った。
すると、急に弾は立ち止まった。
「と、その前に寄りたい所があるんだ」弾は言った。
「なんだ!また寄り道かよ!さっさと封印の島に行こうぜ!」茶々丸は呆れた顔をする。
「きっと、茶々丸も興味を持つはずだぞ・・・」弾は試すように言った。
「俺が興味を?俺は茶屋に行く事しか興味ねーぞー」
「まー聞きたまえ。
このあたりに、ある不思議な森があるんだ。
その名は不可思木の森。
天にも届きそうな、大きな木がそびえ立つその森では“不可思議”としか言いようがない奇跡が起こると言われている」
「奇跡が・・・起こる?」
「あぁ、奇跡だ!しかも、その森には茶屋もあると聞いたぞ」
「よし、行ってみよう!」茶々丸は喰いついた。
そして、再び大きく広がる草原をテクテクと。
足取り早く進んで行く二人であった。
次の行き先は、“不可思木の森”。
本当に奇跡が起こるので、あろうか。




