第五十話 怒りの力
茶々丸は・・・動かなくなった。
辺りは、千疋にやられた妖怪たちが溢れていて
そんな中で、小さく、目立つ事なく
声も出さずに、倒れている。
「茶々丸―――ッ!!!!」くるみが茶々丸のもとへ走った。
くるみは動かない茶々丸を目の前に、動揺するばかりであった。
触っていいのか、ゆすって起こせばいいのか・・・
もう、死んでしまったのか・・・わからなくて
頭の中が真っ白になった。
「ちゃ、茶々丸!しっかりしろ!目を開けろッ!」くるみは泣き叫んだ。
アゲハは、くるみのそんな姿を見ていた。
だけど、膝がガクガクと震えて、遠くから見ている事しか出来ずにいた。
「ちゃ、ちゃ・・・丸。ごめん・・・」アゲハは力の無い声で言った。
―その頃、千疋きは目玉を四方八方にグルグルと回し
ダラダラと唾液を垂らしながら、時より大声で笑った。
まさに正気では無い。
すると、ある妖怪が妙な異変に気付いた。
「ん・・?なんだ?木や草が枯れて来ているぞ・・・」そう言って、騒ぎ出したのだ。
皆も辺りを見回すと。
確かに、みるみると草木が枯れて行っている。
「こ、今度は何だ・・・あの千疋がイカれちまったと思えば。
今度は世界がイカれちまったのか!」そう言って皆が騒ぎ出した。
確かに、まるでこの世の終わり。
地獄絵図かのような事が次から次へと起こる。
―その時、誰かが弾を指差し叫んだ。
「弾だッ!
弾がやってるんだ!」
その声に皆が一斉に、弾を見る。
“弾がやってる?”とは何事か。
皆が木陰から覗き込む。
すると、木は砂となり、地面はひび割れを起こしている・・・
その中心にいるのは、確かに弾だった。
「弾の・・・怒りの力だ・・・。
千疋が茶々丸に手を出しちまったから!弾は許さねー!
弾!千疋をやっちまえーッ!」
「無理さ・・・いくら牡丹の息子だっていっても
半妖なんかに勝てるわけない!」
多くの妖怪たちが、行く末を見守る。
―弾は、目を閉じていた。
拳を握り、その拳は怒りで震えている。
髪がみるみると伸び、腕からは真っ黒な羽が生え始めた。
弾の心は、真っ黒な怒りに覆われていた。
怒りの力は、紫の色となって溢れ出す。
千疋は弾のそんな姿を見て、ますます笑った。
だが、目はいままで異常に殺意に満ちていた。




