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眠りの薬師  作者: うちゃたん
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第四十九話 絶対絶命

殺意に満ちた視線。



弾と千疋の間に、張り詰めた空気が流れる。



弾さへいなければ、千疋の計画を見破る者などいなかった。

弾は絶対に許せぬ存在であろう。

千疋は、少しだけ口角を上げて不気味な微笑をしてみせる。




そんな二人の様子を見て、アゲハが叫んだ。

「弾がやられるッ!」



アゲハは弾の元へ走ろうとした。




「待って!」くるみは、アゲハの腕を掴んだ。




「坊やたちから、離れるなッ!」くるみは震える手で、アゲハを引き止める。




「だけど、だけどさ!弾がいなければ皆・・・皆、もうダメだったんだよ!

これで弾がやられちまう所を見てるだけなんて!

恩知らずじゃないか!」アゲハは泣き叫んだ。




周りにいる妖怪たちは、アゲハの話しを聞いても

あまりの恐ろしさにうつむいているだけだ。





すると、どこかの妖怪が言った。




「黒式が誰も助けに来ない・・・。銀猿(ぎんざる)(つごもり)(ぬえ)

千疋が暴れているっていうのに誰も来ない!きっと皆やられたんだ!

千疋を誰も止められない・・・」




主の白虎、獅子大丸が力を無くした今。

千疋より力のある者などいない。

ましてや、理性を無くし暴れている千疋からは失う物のなどない強さを感じてしまう。





だがその時、ある一人の弱々しい妖怪が立ち上がり言った。




「もう、いいや・・・」




そう一言いって、千疋へ向かって歩き出した。




「おい、何がいいって言うんだ!」




「どうせ、死ぬところだったんだ。

弾に拾ってもらった命。

獅子大丸の後に続くとしよう・・・」そう言って、走り出した。




すると、病にかかった者たちが、続々と千疋へと向かって走り出した。

どうせ無かった命、弾・・・今のうちに逃げろ・・・。

皆は口々に言った。




千疋はその様子に気付くと・・・

もちろん、あの音を立てながら

次々と地面へと叩きつける。




誰もが、やすやすと簡単にやられて行く。




波のように押し寄せる、病にかかった者たち。

それを一気に叩きつけた。

その音は轟音となり、大きな風が吹いた。




アゲハとくるみは、風に飛ばされぬよう

どんぐり坊やたちを抱き小さく丸まった。




弾は、風に押されながらも

ただただ散って行く者たちを見ていた。

逃げろと言われても・・・そんな事できなかった。




「何て事を・・・」震える声でつぶやいた。




掃除を済ませたかのように、すっきりとした顔をする千疋。

もう寄り付く者はいなくなった。




―静まり返った、この丘。





すると、弾を呼ぶ声がした。




「弾!俺はここだーッ!だーーーーん!」




茶々丸の声だ!

走って弾へと向かって来る。




だがその声に気付いたのは、もちろん弾だけではない。




千疋・・・。

声のする方へと、ゆっくり首を回し茶々丸を睨みつけた。




―――しまったッッ!!!





「来るな――ッ!!!!」弾は力いっぱい叫んだ。




「弾!待ってろ!すぐそっちに行くーッ!」茶々丸にはまったく聞こえていない。




訳がわからない状況の中、ずっと弾を探していた茶々丸。

弾の所へ行く事で頭がいっぱいになっていた。




「茶々丸―ッ!!!戻ってこい!!!」くるみとアゲハも必死に叫んだ。



だが、茶々丸は無我夢中で走り続ける。




「弾!今行くぞ」茶々丸は、弾が見えて安心したのか笑顔で走っている。




しかし、弾の目の前にはあいつがいるのだ。




残酷な事に・・・また、あの音が響き出す。

腹がよじれるような、あの嫌な音だ。





《ギュィィィーーーーンッ》






茶々丸は、空へ舞った。



そして体を回転させながら、勢いよく落下する。



地面へと叩きつけられた茶々丸、グシャと鈍い音がした




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