第四十八話 負けに行く戦い
《ギュィィィーーーーンッ》
《ギュィィィーーーーンッ》
《ギュィィィーーーーンッ》
止まらない。
腹がよじれるようなこの音は、激しさを増すばかり。
千疋は狂ったように
次から次へと、妖怪たちを吹き飛ばし地面に叩き付けた。
その頃、くるみとアゲハは、どんぐり坊やたちの手を引き
必死に逃げていた。
だが、茶々丸の姿がない。
「茶々丸―!!!」くるみは、はぐれてしまった茶々丸の名を叫んだ。
茶々丸も必死になって探していた。
「弾!クルミ!どこだーーーー!」悲鳴の中、皆の名を呼び探した。
だが何度叫んでも、声はかき消されて届かない。
茶々丸は、逃げ惑う妖怪たちに蹴り飛ばされてしまうばかり。
あまりの恐怖に、体を小さくして怯えていた。
―その頃、弾は
負ける戦いだと、知りながら
向かおうとする獅子大丸の背中を見ていた。
「獅子大丸・・・」弾は小さく名を呼んだ。
すると獅子大丸、振り返り微笑んだ。
「なーに、心配はいらないさ」そう一言だけいって、目の前からふわっと消えた。
これが最後の会話になるんじゃないか・・・
そんな事が頭によぎる。
振り返り微笑んだ獅子大丸の顔が、切なくまぶたに残った。
そして、次の瞬間。
獅子大丸は、目にも止まらぬ速さで千疋の目の前に現れた。
その速さのまま、千疋の顔面を殴りつける。
千疋の顔は、激しく歪み、勢い良く吹っ飛んだ。
一瞬の出来事で、目が追いつけない。
誰もが、唖然とした。
だが、吹き飛ばされた千疋はというと・・・
何がおかしいのか、腹を抱えながら笑いはじめた。
涎をダラダラ流し、地面に転がり笑っている。
その姿はまさにキチガイ。
かと思いきや、ひょいっと起き上がり真顔になる。
ぼーっと前だけ見て立っている。
その不気味な姿に誰もが固まった。
「サ・・・祭リヲハジメヨ・・・」千疋は感情のない声で言った。
―そして、またあの音が響く。
《ギュィィィーーーーンッ》
―獅子大丸は、舞い上がり地面へと、叩きつけられた。
だが、今までとは違う。
舞い上がり、叩きつけられる。
これが、物凄い速さで繰り返された。
獅子大丸が叩きつけられる度に、大地は地震が起きたかのように揺れた。
体の骨が粉々に砕けてしまうのではないか・・・。
目を覆いたくなる、残酷な光景だった。
だが、千疋に容赦などはない。
やがて地面には、大きな穴があいた。
千疋は動かなくなった獅子大丸を見て、優越感に浸っているような顔をしている。
「ウオーーーーン」
千疋は月に向かって大きく遠吠えをしてみせた。
だが、決して勝利に勝ち誇っている訳ではないだろう。
長い時間をかけてきた計画がぶち壊された。
開き直っているだけであろう。
そして、開き直ってしまった者ほど、手がつけられない。
千疋はゆっくりと振り返り、次なる相手を探した。
“次はお前だ”
心の声が聞こえてくるような、視線を送った相手。
それは、弾だった。




