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眠りの薬師  作者: うちゃたん
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第四十三話 闇の中に捨てた事

―木漏れ日溢れる日だった。



穏やかな風、土の香り、無邪気な子供の声。

昨日の事のように覚えている。



美しき思い出だ。



「主様、主様!あのね、弓矢の腕を上げました!」嬉しそうに話す子供。




「そうか、立派だ!もっともっと力を付けて、黒式になるんだぞ」そう言って白虎は、千疋の頭を撫でた。




まだ、小さかった千疋との思い出。




白虎は、弾の話しを聞き

千疋がまだ、子供だった頃の事を思い出していた。




千疋は、真っ直ぐで素直な子供だった。

黒式になる事を夢見て、熱心に使者として励んでいた。

文句の付け所などない。

白虎も、千疋には大いに期待を抱くほどだった。

周りの使者たちも、千疋の存在には一目置いていた。




「主様、主様!」こうやって、いつも無邪気に報告してきた。

キラキラと目を輝かせて。






―だが。




この目の奥を覗いた時

背筋が凍る思いをした事。

白虎は思い出してしまった。




“そうだ、この事は・・・

過去に捨ててきた事。

決して思い出してはいけないと、闇に心を捨てて来た。

すべては、間違えだと言い聞かせて・・・

私は見る事をやめてしまったんだ”




白虎は弾の目を見た。

まだ子供のように怯えるような目をしていたが

白く濁った目は、黒く透き通る目へと変わっていた。




「私は目を閉じていた・・・」そう一言いった。



弾は黙って聞いていた。



白虎は話しを続ける。




「私に恐れなど無かった。

主として、全うできるのならば命など惜しくもない。



そして、誰もが私を恐れた。

私の目を見て話す事を恐れ、私を信じた。


だが。

たった一度だけ、この私が恐ろしい思いをした事があった」




白虎は思い出してはいけない事を話そうとしている。

時より、話しに間が空いた。




「千疋・・・。

幼い頃から使者として私に仕えていた。



子供の頃から、黒式になる事間違いなし。

もしくは私の後と継ぐ者となるかもしれない。

私は大いに期待を抱いていた。



だが、だが。


千疋は・・・」




白虎はダラダラと汗をかき始めた。

異常なほど動揺している。




「千疋は一体なにを!」弾は厳しく問い詰めた。




白虎は、頷き話しを続ける。





「千疋は幼い頃から。



私を殺す事しか考えていなかった。

その事を今、思い出した。



あまりにも美しい目で。

私の死に様を、毎日思い描いていた。



だが、小さな子供の考える事。

私は心の奥底に、この事をしまい込んだ。

何かの間違えだと言い聞かせて。



しかし、本当は・・・

人生でこんな恐ろしい物を見た事はなかった。

千疋の事が恐くて、恐くて仕方なかった。



私はこの事を受け入れられず

千疋をより期待するようになった。



きっと、すべて、間違えだと信じたかった!



そして、もう何も見えぬよう

私はそっと目を閉じた。




これが、私が盲目となった理由だ・・・」





部屋は静かになった。

弾も言葉が出なかった。




少し間を置いてから、白虎は少しだけ穏やかな顔をして

弾の母、牡丹の話しをした。




「私は・・・

牡丹を心から信用していた。

同じくらい、黒式を信用していた・・・

もし・・・牡丹が今ここにいたら、こんな私に何と言ってくれるかな」白虎がつぶやいた。




弾は少し悩んだ顔をして、答えた。




「母の記憶はほとんど無いが・・・

立派な使者たちもいるって事を忘れるな・・と言うかもしれない」そう言って、ほほ笑んだ。




「弾よ、ありがとう。

目を取り戻した私には今すべてが見える。

必ず解決する」白虎は力強く言った。




弾は頷いた。




「では、これで。

旅の道中ながらも、この国の未来を楽しみに見てる」




こう言い残し、弾は主屋敷を後にした。






―外へ出ると十六夜祭り真っ只中の景色。

十六夜祭りだった事など、何だか忘れていた。

主はどう動くのであろうか。




“目を取り戻したんだ、心配などない”

呟きながら、祭りをかき分け道を進んだ。



茶々丸たちが待っている、帰ろう。




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