第四十一話 白虎の答え
二つの薬を目の前に置かれた主。
だが主は、何を考えているのか
白く濁った目で、弾の瞳を見つめている。
優しく、柔らかく、ただただ見ている。
事の重大さがわかっているのか疑ってしまうほどだ。
そして、穏やかに言った。
「あぁ。牡丹の目にそっくりだ。私は牡丹の透き通る目を信用していた。
彼女には敵が多かったが、私は主として、心ある者として尊敬していたよ」そう言って微笑んだ。
だが、その時。
白虎は、まるで正気を取り戻した如く
弾を見つめるその目は、黒くなり力強さを戻した。
その姿は、まさにすべてを見通すと恐れられていた
白虎本来の力を見た思いとなる姿。
凄まじい迫力だった。
そして白虎は地鳴りのような声で
「見えた」そう一言いった。
弾は、一瞬だけ見た主の力強い目に驚いた。
すぐに白く濁った目に戻ってしまったが、確かに白虎の目には何かが見えたようだった。
だが、もう死が目の前までやって来ている白虎だ。
力を使い果たしたかのように、体をぐらつかせた。
白虎は深く呼吸を整え、話しを始める。
「今じゃ、役に立たない節穴の目となってしまった私の目だが。
辛うじて一つだけ見えた事があったよ」
「何が・・・見えた」弾は、あの瞬間に一体何が見えたのか心から気になった。
白虎はゆっくりと答える。
「弾、お前の真っ直ぐな瞳の奥が見えた。
夢薬を飲む必要はない。
何故ならば、もう弾がすべてを見抜いている。
違うかね?
私の目の代わりになってくれはしないか。
知っている事、感じている事を私に教えてほしい。
これが私の答えだ。
すべての命運をお前にかけよう」そう言って、白虎はまた優しく微笑んだ。
死に際でも、この優しい微笑み。
肝の据わった立ち振る舞いに“何とすごい主なんだ”と
弾の心は震えた。
「わかった。
俺の目に映ること、すべてを話そう」弾はそう言って、解毒薬を白虎に手渡した。




