第四十話 二つの薬
主屋敷の部屋へと招かれた弾。
白虎は、部屋へと移動する際も駕籠で運ばれ
体は弱りきっている事を伺えた。
そして、ある広い一室。
弾は、白虎と向かい合わせに座った。
二人で話すには広すぎる部屋だ。
弾は部屋を見渡す。
そして、白虎は口を開いた。
「牡丹の息子よ・・・会えて嬉しい・・」小さな声だった。
「急遽、こんな形で申し訳ない。
時間も無い・・・単刀直入に話しをしたい」弾は厳しい顔で言った。
「急ぐ理由、それは私の命がわずかしか持たないからだね。
命わずかな私に告げたい事それは一体なんだい?」
「えぇ、あなた程の方ならわかるでしょうね。
あなたに明日はない事、いや、深夜を待たずして死んでしまう事」
白虎はうなずいた。
そして、ゆっくりと虎の面を取った。
白虎の顔は、シミだらけだった。
どん太郎と比べ物にならないほどのシミだ。
そして目は真っ白に濁り、どこを見ているかわからないほどだ。
“やっぱり、紅あじさいの毒に犯されていたか”弾は心の中で思っていた。
「分かっているさ・・・私に明日は無い・・・だから急いでおる。
この西の国の皆の為にも最後の一仕事。
十六夜祭りだけは見届けたい。
今この辺りでは、流行り病で落ち着かない日々が続いている。
だが私は歳をとり過ぎて、無力だ。
力ある主決めを行い、私は安心してあの世に行きたい・・・」白虎は、落ち着いて言った。
すると弾は、首を傾げて言った。
「おかしな話ですね」
白虎は黙っている。
「すべてを見通す力があると言われたあなたほどの方が、たかが流行り病の事で動揺するなんて不思議でならない」
「私を責めないないでおくれ、若者よ。歳には適わん」そう言って、少し笑った。
すると、弾は懐から薬を出した。
「この流行り病は、紅あじさいによる毒。
解毒剤は病に伏している者皆に渡してある。もう心配はいらないだろう。
そして、あなたの分も作ってきた」そう言って、弾は白虎の目の前に薬を置いた。
「しかし、あなたに限っては
もう一つ薬が必要だ」そう言って、弾はもう一つの薬を懐から出した。
「もう一つ?」
「えぇ。すべてを見通す目を持つあなたが
何故、盲目と化してしまったのか・・・
主としての勤めを果たしたいのならば、まずその理由を知るべきだ」
そう言って、もう一つの薬も目の前へ置いた。
「この薬は、明鏡の絵空事をいわれる夢薬。
あなたに必要な事が夢に現れる。
だが、この薬はほかの薬と合わせ飲むと毒と変化する。
解毒剤を飲むか、夢薬を飲むか決めて頂きたい」弾は真っ直ぐ前を見て、真剣に伝えた。
主はどちらを選ぶのであろうか。




