第三十二話 騒がしい一日
茶々丸、くるみ、アゲハは、弾が薬を作る様子をじっと見ていた。
皆、自分にも何か手伝える事はないかと、落ち着かない気持ちでいっぱいだったが
今はただ弾が薬を作り終える事を、拳に力が入る想いで待っている。
すると、くるみはどん太郎の話しを始めた。
「どん太郎も、主に使える使者なんだ。
この国の為、役目を果たしている立派な使者だ」
「えぇ!使者なのか!」茶々丸は驚いた。
弾と茶々丸は、通りすがりの旅人。
十六夜祭りは行くつもりもなく、この辺りで起きている流行り病の事も知らない。
ましてや、どん太郎とは初めて会った。
「どん太郎さんは、妖力も弱いし、頭も悪くてね。
でも主様の忠誠心と国を思う気持ちは誰にも負けないくらい強かった。
主様にその心意気を買われて、使者になれたのさ。
気は優しくて、力持ち、そんな所だよ」アゲハは少し照れながら言う。
「わぁ・・・」茶々丸はため息交じりの驚きをする。
さっき見ていた、大主大行列。
あの厳格な空気を思い出し、どん太郎も使者なのかと思うと
驚きと尊敬の気持ちがいっぱいになる。
―動き出す香り
皆が話しをしている間に、部屋には薬の香りが満ちてきた。
弾は顔を粉だらけにしながら、すごい速さで薬を作る。
「まさか、薬を作れるなんてね」アゲハは弾を見つめながらそっと呟いた。
「さぁ、出来た!」弾は皆の顔を見た。
出来たのは、淡い桃の色をした薬。
「紫陽花の毒には、海の食べ物が良いと言われている。
香りが少しきついが・・・きっと毒には良く効くだろう」そう言って薬を小さな紙に小分けした物をアゲハに手渡した。
「これを、どん太郎に」アゲハは頷いた。
「弾、オイラは皆に薬を渡してくる!」くるみが言った。
「よし、俺も行くぜ!」茶々丸はそう言って、くるみの頭に乗っかった。
すると、扉の隙間から様子を見ていたどんぐり坊やたちがやって来た。
「オラたちも、みんなに配るの手伝うのコロコロ~」
「ありがとう。みんなで手分けして配ろう」弾はそう言って、坊やたちにも薬を渡した。
「あたしも、どん太郎さんに薬を飲ませたらすぐに行くよ。
今は祭り前で町中が騒がしくなってきてる。
皆、くれぐれも気をつけて」アゲハが言う。
皆で、薬配りが始まった。
祭りの前夜、何だか騒がしい一日になりそうだ。




