第二十話 一本隣道の謎
「あ~うなぎ旨かったなー!
あのふっくらとした身・・・甘くて香ばしいタレ・・・最高だぜ!」茶々丸はうなぎの余韻に浸っていた。
かれこれ数時間と、茶々丸はうなぎの話しばかりしている。
弾は隣で、うんうんと聞いていた。
昨夜は赤鼻じーさんの事で色々あった。
二人は自分への褒美、うなぎを食べたのだ。
「良かったな。茶々丸がそんなにうなぎを気に入るとは奮発した甲斐があるってもんだ」
「あの、小さな皿に乗ってる・・・お新香??て言ったか?
あれも旨い!うなぎによく合うよな!
あと、あの汁物もいいよな!」
うなぎの熱弁はしばらく続きそうだ。
弾は、茶々丸の話しを聞きつつ
黄乃松の町に立ち並ぶ不思議な店の、不思議な物たちに目を奪われていた。
やはりここの都は面白い。
「おい、弾聞いてんのか?
だからな、あの汁・・・・・・うッ・・・」
茶々丸が突然黙った。
「ん?」弾は急に黙り込んだ茶々丸を見た。
すると茶々丸は、痛そうに腹を抱えていた。
「茶々丸!大丈夫か?」
「うッ・・・イテテテ」歯を食いしばって痛みに耐えた。
弾はすぐに、茶々丸を抱き上げ腹を触った。
「イタタタ・・・・」弾に触られるとより痛そうにした。
すると、弾は荷物から薬を出し茶々丸に飲ませた。
「に、苦い!!!」茶々丸は飲む事を嫌がった。
「我慢して飲め!」無理やり茶々丸の口に入れた。
茶々丸は、言われるまま薬を一気に飲んだ。
「うわっ!すっげー苦いぞこれ!
こんな苦い物!何だこれ!
でも、あれ・・・?
腹が治った!」そう言って腹を撫でた。
弾の薬で、腹痛は一瞬で治ってしまった。
「ただの食い過ぎだ。今日は食べる事を控えた方がいいぞ」弾はさめざめしたように言った。
「弾、すげー!腹が一瞬で治ったー!!見直したぞ!」弾を見る目が尊敬に変わった茶々丸であった。
弾は、やれやれといった感じ薬を片付けた。
すると、年老いた老婆が弾に話しかけてきた。
「おやおや、兄さんも薬屋かい?
見た所、話しを聞いてはるばるやって来たってとこだね。
今ここにいる人は、ほぼ全員が医者か薬屋だよ
ま~おかげでわたしら店をやってるものとしては
右肩上がりのありがたい話しさ
兄さんもせいぜい頑張ってくるんだね!」
そう言って、老婆は行ってしまった。
弾は何の話しか理解できなかった。
まぁ、いい。
自分が薬を持っていたから、きっとどこかの薬屋と間違えたのだろう、そう思った。
弾は荷物を背負い、茶々丸を肩に乗せた。
「よし、探索の続きをしよう」そう言って弾は立ち上がった。
だが、歩き出して間もなく
弾の足は止まった。
目の前に広がる、不思議な事にようやく気付いたのだ。
たくさんの人が行きかう、この黄乃松。
にぎやかな都だという事は、辿り付いた時点でわかっていたが。
今、目の前を通り過ぎる人々ほとんどが医者か薬屋である事に気が付いた。
風貌、会話、体に染み付いた薬草の香りでわかった。
―一体なぜ?
弾はしばらく、立ち尽くしていた。
右、左、見渡し限りやはり医者か薬屋ばかりだった。
「おい、何ぼーとしてんだ?」茶々丸は立ち尽くす弾に声をかける。
弾はゆっくりと返事をする。
「変だと・・・思わないか?」
「何が!?」
「行きかう人間たちが、医者か薬屋ばかりなんて」
「医者か薬屋?何でわかるんだよ!」
「会話や体に染み付いた薬草の香りでわかるんだ。
しかし、黄乃松に付いた時はこんな香りはしなかった。
昨日は、黄乃松でも一番栄えている大通りを中心に店を回っていたが。
一本隣道に出ただけで、こう景色が変わるとは・・・
少しとばかり気になる」
弾は、医者たちが集う理由が知りたくなった。
「ふ~ん。医者が集う町か。弾にぴったりな場所だな」
二人はこの医者たちが集う大きな一本道を歩いた。
最初に到着した時の大通りと同じく
面白い店は立ち並んでいるものの、立派な建物がこの道には多い。
医者が集う理由と何か関係はあるのか。
「弾、あれ見ろよ!すごく綺麗だ!」茶々丸が指を差した。
そこには、小さな屋台があり綺麗な桜餅が売られていた。
「さっき薬を飲んだばかりだ。少しは控えないと体の為にならないぞ」
「あんな綺麗な食べ物見た事ないぞ!見るだけでもいいから、あの店に行ってくれ!」
「本当に見るだけだからな」
弾は屋台へと向かった。
しかし、本当に綺麗な桜餅だ。
桜の花の形をして、青々とした桜の葉で包まれている。
香りも良い。
「兄さん、いらっしゃい。旨いよ!食ってきな!」
桜餅に見惚れていたら、屋台の男に声をかけられてしまった。
歯が数本ない陽気に桜餅を売る男だ。
「あ、あぁ・・・」弾は困った顔をした。
「桜は縁起がいい。験担ぎに食って行ったらいいよ!
兄さんも医者か薬屋か、何かだ!行くんだろ?村崎屋敷へ
くれぐれも大目玉食らわねーように頑張んなきゃな!ハハハ!」
そう言って、桜餅を売る男は笑った。
また、医者の話だ。
弾は男に聞いてみる事にした。
「医者や薬屋が集う理由・・・それって何なのですか?」




