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明鏡の絵空事  作者: うちゃたん
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第十四話 赤鼻じーさん

立ち去ろうとする、弾たち。


だが、枝に立つ見知らぬ者は驚きの一言を言い放った。




「この神樹の気を解いたのは、ワシだ―――ッ」山びこのように響く声。



この一言を聞いて、弾は凍りついた。




―神樹の妖力を解く

自分たち妖怪の世界で、何よりしてならない事。

死を意味する言葉でもある。



「おい弾、どうしたんだ?」茶々丸は不安そうにキョロキョロとしている。



すると、またそいつは叫んだ。



「もう一度言う、死の覚悟は出来ている!神樹の気を解いたのは、ワシだ―――ッ」




すると、弾は振り返り物凄い剣幕で叫んだ。

「馬鹿も休み休みに言えーッ

何故こんな馬鹿げた真似をしたーッ」



こんな弾は見た事がなかった。

空気は張り詰め、茶々丸は怖くなって懐に隠れた。






すると、枝の上からそいつが降りてきた。



身軽そうにひょいひょいと降りてくる。

一体どんな奴なんだと、茶々丸は懐の隙間から覗いている。




「相手を間違えたようだ。てっきり主の手先がワシを探しに来たのかと思ったわ」



そう言いながら降りてきた。

その者の顔を見て、弾は驚いた。




「て、天狗?」弾は目をまん丸にした。




「あぁ、ワシが噂の天狗じゃ。

初めて見ただろ?伝説になりかけている存在だからの」

真っ赤な顔、高い鼻に高下駄。間違いなく天狗だ。

しかし想像と違い少々、陽気な感じだ。




「ふざけている場合ではない!さっきの話しは・・・冗談では済まない」



「分かっておるよ。間違えなくワシは殺される。妖怪の世界で一番してはならない事だからな」



「赤鼻じーさん、そんなヤバい事したのか?」茶々丸が出てきた。



「あぁ・・・妖怪にとって、神樹ほど尊く、大事なものはない。その神樹の気を解いてしまうなんて、家の柱を倒してしまうような物だ。最も罪深い」




「おほほ~」天狗は相変わらずふざけている。




「死にたいのか?」弾が詰め寄る。




何を言われても、天狗はふざけた顔をしている。




「ワシ等はな・・・妖怪の中でも古い存在じゃよ。



天狗谷で一族で暮らしておるんじゃが。

妖怪にも、人間にも見えない秘密の場所じゃ。


だが時代が変わったのか、何だか知らんがな。

ある日、北の主が天狗谷にやって来た。

天狗谷にある神樹をよこせと・・・言い出して来たんじゃ。

大地が穏やかになるだとか、平和の為だとか言っておったがな。断ったよ」




「北の国に住んでいると言う事か?」弾が質問した。



「あ・・バレちゃった?秘密なんだけど~


えっへん。


しかし、天狗と言うのは、天狗谷にそびえ立つたった一本の神樹から力を得ていた。

それが、命なんじゃよ。

それを主の縄張りだからよこせと急に言われても無理な話じゃ。



だが、奴等は天狗谷の神樹をも力を解き、自分の妖力に染めたんじゃ。

たちまちに我々は力が無くなり、一族は絶滅寸前まで来た」




「神樹は陰と陽を保っているのは確かだが、そこで困っている者がいるとは・・・

知らなかった」弾は天狗の事情に驚き、考え深い顔をしたいる。





「主が神樹を返してくれなければ、わし等一族は亡びる。

だが、絶対に主は返さないだろう・・・


だからワシは、気を解き歩いている。それが意味のない事かもしれない。

だが、黙って絶滅を待つなんて、できないんじゃよ・・・

死ぬまで抵抗してやろうってな、思ったんじゃよ。

見苦しい所を、見せてしまって申し訳なかったの」




天狗のふざけた態度の奥にある、想いが見えた。




「だけどよ、死んじゃったら元もこうもねーよ。

違う方法ないのか?」茶々丸が言った。




「うん・・・何かいい方法を」弾も頷いた。




「ずーと考えていたよ。だけど、毎日音も無く一族は消えて行くだけだった。

気持ちは焦るばかり。

馬鹿みたいに、解き歩くしか・・・できなかった。

本当馬鹿じゃろ?」笑いながら言った。




「ひでー話しだ!勝手に赤鼻じーさんたちの神樹と取っちまうなんてよ!主って何なんだ?随分と偉そうじゃないかよ!」茶々丸は怒った。




「そうじゃ、そうじゃ。子ネズミよ、よくわかっておるな!ワシは主なんて大嫌いじゃ!今すぐ消えてほしいわっ」




二人はやけに意気投合し、主の悪口を言い合って止まらない。




その時、弾は何か気配を感じていた。

背中のずっと後ろから。

ただならない気配。

どうやら、天狗が覚悟を決めていた相手がついに来てしまったようだ。



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