第十三話 枝の上にある覚悟
辺りはもう、夕暮れ。
今日も寒くなりそうだ。
早く泊まる場所を見つけなくては。
そうしたいものの、すっかり迷子となった弾と茶々丸は森のような場所にいた。
「弾、こんな所に絶対宿なんかねーよ。大通りに戻ろうぜ」茶々丸は来た道を引き返すように言う。
「おかしいな、この辺りだと聞いたのだけど。
しかし、大通りの宿は金持ちが泊まるような場所だ。
俺が持っている銭じゃ泊まれやしない。引き返しても無駄だよ」
「はぁ~・・・さっきの子供に、宿の場所聞けばよかったな」肩を落とす茶々丸。
すると、弾が遠くを指差した。
「茶々丸見てみろ!向うにある大きな木が見えるか?」
「ん~あぁ!あの木か?あの木がどうした?」
「あれが神樹の木だ」
「えっ!さっき買った苗はあんなにデカくなるのか!」
木が生い茂る中に、ひときわ目立つ大きな木があった。それが神樹。
大人が三人、大の字になったくらいの大きさだろうか。
堂々と立つその樹が放つ厳粛な空気は、息を呑むほど気が引き締まる。
だが、弾は神樹を見ながら首をかしげた。
「・・・なんか変だな・・・気のせいか・・?」弾は不思議そうな顔をしている。
「何が変なんだ~?」
「変なんだ・・・この神樹からは気が感じない」
「木?どう見ても木って感じだろ」
「そうじゃなくて、神樹は国の主の力で本来持つ力を発揮する。
国の光と影を動かすほどの力がある樹だ。それなのに気を感じない。
力を発していないって事だと思う・・・」
「気のせいじゃないか?俺はなんとも思わないぞ。
むしろ偉大な力を感じる!
っというかよ・・・
あの枝に立ってるやつ・・・誰だ?何かこっちを見ているぞ!」茶々丸が指を差した。
その方向を見てみると確かに、神樹のずっと上の方。
枝に誰か立っている。
よく見えないが確かにこっちを見ている
その時、枝に立っているその者は声を出した。
「ワシを探しに来たのか!逃げも隠れもせんぞ!覚悟は出来ている!こっちへ来いッ!」
こっちに向かって叫んで来た。
「・・・おい弾。なんだよあいつ・・・
さっきの花と同じような事言ってるぞ。
ここらへんの奴は覚悟をした時、みんな木登りするのか?
めんどくせーな。
無視して行こうぜ」
「ふむ。確かに少しばかりやっかいだ。
ここは、気付かぬふりをして退散するとしよう・・・」
二人は、死んだような目をして
ササーと道を引き返す。
心の中は早くゆっくりと休みたい気持ちでいっぱいだった。
「さー気付かないふり、気付かないふり!」茶々丸が小声で言う。
まったく関わりのない奴だ。無視したって罰は当たらないだろ。
茶々丸はそう思っていた。
だが、残念な事に弾と茶々丸は
この者から聞いてはいけない一言を聞いてしまう事となる。