1.モノガタリのハジマリ
「何で俺がこんなこと~っ」
秋月町にある一番大きい学園。秋月学園。――まぁ、この町にはこの学校しかないのだが――
その学園のあるひとつの教室、2-Aでは。2人の男子が箒をもってせかせかと手を動かしていた。
「女の子と一緒ならともかくさー、なんで葉春と一緒に掃除してんのさー」
「知らない。俺に言うな。大体、真蘭が授業中寝ているのが悪いだろう。そして葉春と呼ぶな」
黒縁の眼鏡をくいっと上に上げ、黒色のサラッとした髪を揺らしながらゴミを掃くのは、蒼音 葉春だ。
「寝てるんじゃなくて、意識が飛んでるだけなんだってば!」
「それを寝てるというだろう!」
ぶつくさと文句をこぼす、茶色のふわっとしたようなサラサラした髪を揺らし、蒼音のほうへと向くのは、紅木 真蘭だ。
彼はぷくぅっと頬を膨らましながらも小さく手を動かし始めた。何を言っても自業自得だとしっかり認識したのだろう。
「…なぁ、葉春。」不意に箒をチビチビと動かしていた紅木がいつもと同じ声音だが、重々しい発音が、教室内に響き渡る。
「なんだ。それと葉春と呼ぶな」
それに気づいた蒼音だが、手を動かすのはやめず、口だけを開く。
葉春というのは、紅木が決めた、蒼音のあだ名だ。葉春と呼ぶのはめんどくさかったらしく、そう呼んでいる。
だが、蒼音にとっては、女子の名前にしか聞こえなく、不快なリズムなのだ。
「本部からの連絡は?」
「……今のところない」
教室内…もとい、2人の間に重い空気が走る。
「そっか…」と息を吐きだすと同時に、ポツリと呟く紅木。
次の瞬間
「まぁいいや!蒼音ーっ、早く終わらそー」と、いつもの調子でヘラヘラと笑いながら話し始める。
蒼音の額にはピキッと青筋が浮かぶ
「俺は、手伝ってるだけだ!お前がやれ」
眼鏡をくいっと上げると同時に、蒼音は持っていた箒を紅木へと投げた。
それの柄が、紅木の額にクリンヒット。「あいたっ」と小さな悲鳴となり、教室に響く
「このやろ~っ」
「すまない。手が滑った」
また眼鏡をくいっと上げ、涼しい顔で対応する蒼音。
今度は紅木の額に青筋が浮かび、蒼音に対して箒を投げ返す。
「手が滑ってこっちまで箒が飛んでくるか!!」
……この変わりない日常。昨日と同じ日常。今日と同じ明日が、ずっと続くと思っていた。
…いや、だれでもそう考えるだろう。
だが。そんな日常はすぐ壊れていくものである……。
情景描写がややおかしいです。許してください。三人称は苦手なのです。
どこからか、1人称に変わるかもしれませんが、そうなった場合も許してください。
この回は、ブロローグの2話目だと思って見てくれれば幸いです。次の話しからお話が始まります。