ー7ー 破壊神
「だが俺は天には昇れなかった。ゼウスは俺の裏切りを恐れたのだ。そうなると俺は地獄で死人を終わりなき生涯ずっと見ていないといけないことになる。神に生まれたのに残酷だ。だからゼウスを倒しそこに俺が就こうと考えた、だがゼウスはある力をもっていたのだ、そして俺は負け人間界に落とされた。」
そこまで言うとカオスは立ち上がりおもむろに歩き始めた。
「俺は特別な神だった。俺に不可能はない。」
「輪廻操作は俺を強くした。すべてを司る絶対神の力なのだ。時空を歪め、時を操り、生死をも思うがまま。」
「ゼウスと戦ったとき、俺はまだ子供だったがゼウスは俺の力を見抜いていた。だから俺に足枷をつけた。」
カオスは大助に近づくとしゃがみ込みまた話しを続ける。
「足枷を外し絶対神になるには神の力が必要だこの世界では「特級職業」と言われている、そして俺は4人の力を集めた「戦神」「海神」「天神」「女神」。最後がお前だ。」
「ここは体力が回復しない場所にしてある。だからお前にとっては監獄だな。」
カオスが浮かび上がる。
「一週間後、空に2つの月が昇る。そのとき俺は完璧となる」
そういうとカオスは残像を残して消えていった。
**
あれからどれ程の時が過ぎただろうか。空の暗雲は消え去り綺麗な青に染まっている。
意識が途切れそうで途切れない。
『苦しい。』
鳥が囀り風が人々を慰める。しかし太陽の光は大助の気力を容赦なく削る。
「我が希望よ」
『なんだ・・・?』
「君をここに送り込んでしまってすまなかった。」
「だれだ・・」
「私はゼウス」
急に体が軽くなる。
「君に少し説明をしなければならない。」
「説明?」
「元の世界での誘拐はここへの移動、君以外は全員加工能力をもつ。そして私は君を革命者としてここに送り込んだ。君には魔法の使用不可と引き換えにある力を与えた。」
「私の兄、ハデスは地獄の妖気により命が削られもう長くはない。だから私は地獄を消す事にした。だがモンスターと化した囚人はどうしようもない。だから君にランキング1位つまり|最強(神)となり囚人を消して欲しい」
「なぜ俺を?」
「君の祖先は私、とだけ言っておこう。」
「じゃあ・・」
「私は君の人生の明日にいる。わからないか。まぁいい最後に一つ私がジュロイだ。」
そういうと森の中に消えていってしまった、
突然の事に理解が遅れる。
まるで突風のようだった。
[私は君の人生の明日にいる]
**
山を下りた大助は明日まで何をするか考える。
明日になれば何かわかるはずだ。
自身への疑問が大助の心に暗雲を呼ぶ。
とりあえずランカーギルドに向かう。
その途中今まで気づかなかった街の美しさをみて胸の奥で何かを感じる。
ランカーギルドに着く。
中に入るとさっきとなにも変わらぬ部屋があった。
「どうしたんですか?」
受付の男が話しかけてくる。
「やつに負けた」
「カイナかい?そりゃあんだけ居たら・・」
「リーダー1人にだ」
男は少しうつむいてから話しを続ける。
「リーダーはなんでもランキング10位以内とか。負けるのも無理はないですよ」
「仲間が、仲間が捕まってるんだよ!あと一週間しかないんだ」
つい口調を荒げてしまった大助に落ち着いた口調で話しかける
。
「双月の時か、関係はあるのか?」
「あぁ、やつも言ってた。」
「この現象は滅多におこらない。だから一回なんとかしちまえばあんたに余裕がでるって事か」
頷く
「余計なお世話かもしれないが聞け。双月の時の効果は一つ、吸収とそれを解放させるものだ。防ぐにはあんたがさっき行った神の祭殿、その地下を破壊すればいい。だが神の祭殿の一部は再生する。なんでも創造神「ブラフマー」と維持神「ヴィシュヌ」の仕業らしい。維持神の力で壊しにくくなってるから、人間の力じゃ無理だな」
「ありがとう、じゃあ また来るよ」
「おう」
**
あれから大助は宿に戻り考えた。
カオスの事、ゼウスの事、そして自分の事。
明日になればきっとなにかが変わるそれまでに自分はなにをすればいいのか。
人生は決まっている。だから何をしようが明日は来る。
『寝よう』
今日はいろいろあり過ぎた。
・・・
「シヴァ」
『っ!』
驚いて目を開く。そこにはベッドで横になる大助を見下ろすゼウスが居た。
「0時だ」
「まじで明日ちょっきりかよ」
「神の行動には理由がある」
「別にいいけど、で用件は?」
「力を与えに来た」
「力?」
「破壊神、それは三大神の創造神と維持神に並ぶ力をもち死神の過程が必須となる職業だ。」
『初期職業は3つ・・、たまたま俺は死神を選んだのか?』
・・・
「ジュロイか」
「あぁ、私が君を操作した」
「なんでもありかよ」
「すまない、だが時間がない本題に入る」
「あぁ」
「力はこのジュリビアの中に入れておいた。これを吸収すればLvはそのままで新しい職業とそれに伴って新しいスキルを習得する。」
渡されたのは漆黒のジュリビアだった。
「わかった、ありがとう」
「では私は行く。健闘を祈る」
「あぁ」
ゼウスはまた同じように消えていった。
大助はもう一度寝る事にした。ジュリビアの吸収は朝にやる事にした。
**
目が覚める。この世界の朝は辛くないのですごく助かる。
外はまだ薄暗い。
まだみんな寝ているようなのでこの時間を利用して新しい能力を確認する。
まずはジュリビアを手に押し当てる。
急に体に力が漲るのを感じた大助は能力を確認するためステータスとスキルを開く。
破壊神
レベル:23
戦闘ランク:S
体力:306 D
攻撃:0 G
防御:407 D
速度:803 S
魔攻:896 S
魔防:873 S
戦闘スキル
八咫烏
魔力を放出しその魔力に触れたものを自由に操る事ができる。攻撃範囲は魔力量に依存。
歪空
右手のみ使用可能。空間を歪める事ができ、攻撃を防ぐ事ができる。防御範囲は魔防に依存。
黒炎
左手のみ使用可能。手に宿した黒炎を自由に操作できる。ダメージは魔攻に依存。攻撃速度は速度に依存。
「 」
「 」
生活スキル
浮遊
移動時の体力消費をなくす
装備
アクセサリー
「ミッドナイト」
三大神器の一つ。
すべての終わりを告げるとされる。
すべての武器の能力を跳ね上げる。
能力?
「カムイ」
賢者石を12個繋ぎ合わせたブレスレット。
魔攻+300
「レイン」
賢者石を12個繋ぎ合わせたブレスレット。
速度+530
「アリエ」
賢者石を12個繋ぎ合わせたブレスレット。
魔防+300 魔力+30%
『はぁ・・。強すぎだろ。ゲームバランス・・・』
スキルの空欄を気にしつつ、次は姿を確認する。
ブーゥン
ミッドナイトはそのままで左手首には「カムイ」と「レイン」。右手首には「アリエ」が着けられている。
ズボンは黒いスーツで上は黒いシャツの上に袖の広い白い上着を羽織っている。袖には術式のようなものが刻まれている。
武器がない分楽だ
『サクリ砂漠で試してみよう』
朝の街にでる。太陽が昇りきっていない街は違う魅力がある。
すぐにもと来た道を1人で歩く。双月の時まであと5日、それまでに力を手に入れなければ。
国を出ると草原の向こうに砂が見える、草原を一歩出れば戦場だ。
草原を歩きながら「黒炎」と「歪空」を発動してみる。
左手には手を包み込む程の黒い炎が絶えず燃え盛り、右手には変化がないようにみえたが時折、紅い魔力が手の周りを泳ぐように現れ消える。
左手を振る。すると大助の左側の草が燃え、右手を振ると右側の地面が綺麗にえぐれる。
『すげぇな』
そうしている間に砂漠に着く。前と同じ屍賢者10Lvとゴーレム41Lvが砂煙をあげながら現れる。
「八咫烏」
すると体からジワリと魔力が漏れるのを感じる。
『こうか?』
力を入れると大助の体から大量の魔力が吹き出る、それがゴーレムとリッチを包み込むのを感じた。
意識の奥底から記憶が蘇る。
「実行」
すると2体は小さな衝撃とともに倒れる。
『ジュリビアすげ〜!!』
不意に眩暈がする。
『あんだけでこんなに魔力使うのかよ。』
魔力の30%程を一度に消費したショックで体が悲鳴をあげる。
『 諸刃の剣か・・・』
さすがにここまで強いとリスクもある事を知る。
『慣れば魔力の消費だけですみそうだ。』
そのあと大助は砂漠中のモンスターを倒してまわりかなりスキルにも慣れた。さらに砂漠の広さと再生力を知る、国を中心に砂漠を一周する頃にはモンスターが復活しているのだ。
雑魚ばかりでレベルは上がらなかったが調整にはもってこいの場所だ。
だが魔力が足りない。そこでサラマンダーのクエスト報酬を思いだす。
『賢者石貰ってたよな』
急にテンションが上がってくるシヴァだった。
『ユナが居たら暇なんてないのになぁ』
今度は太陽が出ている、そんな事を考えながらさっき歩いた道を戻りギルドに向かう。
行ったり来たりでかなり時間を無駄にした気はするが時間が余って仕方ないのも事実だ。
あと3日で強くなって双月の時の2日前に神殿を破壊するという段取りだ。
ギルドに着くとクエストボードを舐めるようにみる。
3日で達成でき、報酬が魔力に関係するものを探す。
「ゴーレムかぁ、簡単だけど報酬が・・。うぉ、報酬すっ・・。無理だ・・・」
「護衛、目的地ネフト帝国、往復2日程度。日付、双月の時に間に合えばいつでも結構。城受付おこしください。報酬「節約術」?」
節約術
一つのスキルのリスクを軽減。
「やった!ってか、この世界は俺の為にあるのか?」
今なら間にあう、時間も丁度いいので早速向かう、というか隣だ
城の一階、そんなに人は居ない。
店は軽食程度のものしか売っていない、広場がすぐ近くなので当たり前かもしれない。
正面玄関からまっすぐ奥に進むと受付がある、見るからに受付だ。
「あの、護衛の・・」
「身分と力を」
エリートオーラを出す若い男性だ。
「えっと、力なら・・」
職業の姿になる
「破壊神っ!!」
死神より驚かれている気がする。
「しっ、失礼しました。ゼウス様とはどういう」
『破壊神とゼウスの関係って有名?』
「家族っていうか」
「失礼いたしましたぁあああ」
「うゎ、えっ?」
「大変申し上げにくいのですが、身分のはっきりしない方には反抗ができないように術式をかけさせていただく事になっております」
「どうぞ」
「でわっ」
男性の手から赤い光がでる。それを大助の右手首に押し当てる。
手を離すとそこに短い術式が刻まれていた
「少しでも反抗しますと仮死状態に陥るのでお気をつけください。」
「はあ」
「すぐに連絡を入れますので2時間後、南門でお待ちください。」
「誰を護衛・・・」
受付は軽く頭を下げる。まただ、また帰れの代わりに頭を下げられた。
『隠す事ないのに』
**
約束の時間、南門。
馬車の音が聞こえてくる。
馬車には運転手1人男女1人ずつ乗っていた。
大助の前で止まり男が下りる。
「私はこちらに居られる姫様の世話役兼護衛のムロイです」
白ヒゲを生やした優しそうなおじいさんが護衛というのに疑問をもつ。
「よろしく」
「それで仕事の内容ですが」
「貴方は屋根の上からの周囲の監視と姫様を守るのが役目です、ネフト帝国で報酬の「節約術」をお渡しします。」
「わかった」
屋根に飛び乗る破壊神大助を見た運転手は馬を走らせる。
砂漠に入る、ゴーレムをあっさり倒して見せたのに無反応だ、かなり護衛のハードルは高いようだ。
それからサソリの群れに出くわすが馬車は加速し切り抜ける。
砂漠を高速で走る馬など聞いた事ないが考えない事にした、ゲームなのだから。
これなら半日でつきそうだ。
馬車に揺られること数時間。
日差しは和らぎ大助はウトウトしていた。
『ねっ、眠い・・・』
バシュッ
「なんだ!」
突然の攻撃らしき音に世話役の男性が慌てる。大助はある事に気づく、馬の脚から血が出ている。
「馬に恨みはないが」
左右に五人、前に一人 人間が現れる。全員フードを被っている。
「姫を人質にしないといけないんだ」
「我らはカイナ、そして僕はカイナの4柱の1人「ムール」です」
「私が相手だ」
男性が静かに立ち上がる。
「いや、あんた歳なのに大丈夫か?」
カオスを思い出す。部下でも一筋縄ではいかないだろう。
「私は魔導士の2次職「賢者」だ、歳は関係ない」
『2次職?賢者って』
「君たちは下がってて。」
世話役の男性が馬車を飛び降りムールの右側に着地する。
そして同時にスキルの詠唱を始める。
「朱雀の咆哮を受けよ【ファダイン】!」
男の手から回転しながら炎が吹き出しムールを襲う。
「僕も舐められたもんだね」
『ロック』
男性の両肩から術式が湧き出し中央で交差し腰で止まる。
「うぅっ」
「僕は人殺しは嫌いでね、行動を制限させてもらうね、まぁそこで見ててよ」
男は向きを変え大助を睨む。
「僕は拘束士、君は破壊神だね?憧れるよ。でも今の職業で満足してる」
『ロック』
さっきの男性同様大助の体に術式が刻まれる。
「八咫烏」
体の周囲を魔力で覆う。
「実行」
パリン、と言う音と共に術式を的確に破壊する。
そして大助はゆっくり立ち上がる。
「強いね、でも今のは初級スキル、あと二段階僕は強くなる。」
「歪空」
やつを空間ごと歪める
「空切」
ムールの左右の地面がえぐれる。
「空間を切る、それは拘束の絶対解除を可能にする。それは僕の力を解放できるという事だ」
「八咫烏」
やつを含め敵全員を一掃する。
「俺は忙しいんだ」
っ!
ムールに焦りを感じる。
「これからだったのに、今日は引き下がるよ。みんな飛天符の用意」
散!
一瞬にして敵が消え同時に男性にかけられていた術式もとける
「申し訳ない、私が未熟で・・・」
「いいですよ」
人が良い気持ちで日向ぼっこしてるときに邪魔されたのにはイラっと来たが。
それからは何事もなく無事ネフト帝国に着けた。もう外は真っ暗だ。
北門に入ったところで馬車は止まり大助は降ろされる。
報酬をしっかり受け取ると馬車は走り去って行ってしまった。
「姫様ってなんか話したか?」
今さらながら疑問を抱く。だが時すでに遅し。
今日は久しぶりにネフト帝国の宿に泊まる事にして大助は買い物に出かけた。
『ジュリビア専門店にも行ってみたいな。』
光り輝く商店街に向かう大助であった。
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