嬉しくない告白
前作の反動からかノリ100%の内容です。
前作とはかけ離れていますが、この作品も全力投球で描くのでよろしくお願いします。
8/21 鏑屋理恵の所属部を剣道部からテコンドー部に変えました。
「好きです、付き合って下さい」
放課後、屋上に呼び出されたボクは先に待っていた女子にそう頭を下げられる。
……ふう、落ち着こうか。
告白した女子はボクから見てもレベルが高く、十分美少女の部類に入ると思う。
背はボクと同じぐらいで、髪は肩口で切り揃えているせいか活動的だと感じる。
特徴的なのはその大きな瞳だね。
ボクはその女子を見た時、まずそこに目がいった。
大きな瞳には一点の曇りもないことから、これまで愛されて育ってきたのだろう。
この輝きを守りたいという保護欲か湧き出てくる。
全く、羨ましい限りだよ。
ボクも何の不自由なく育ちたいなぁ。
「あの? どうかしましたか」
いけないいけない。
途中から愚痴が入っていた。
「ああ、御免ね。少し驚いちゃって」
ボクは愛想笑いをしながら首を振る。
何時の間にか変な方向に脱線していたよ。
気を付けないと反省する反面、現実逃避もしたくなるよという自己弁護がボクの頭を占めていた。
今のままでは双方が納得のいく結論がでないのは明白。
だからボクは時間稼ぎと情報を集めるために口を開いた。
「ええと、確か鏑屋理恵さんだっけ?」
「はい、鏑屋理恵。テコンドー部に所属しています。そして! 私は三月生まれなので時宮さんの方が年上です!」
どうして最後を強調した?
ボクはそんな疑問が浮かんだけど、今は関係無いので頭の片隅において置く。
ボクにとって最も知りたいことは。
「何で……ボクを好きになったのかな?」
「決まっているじゃないですか!」
軽めにそう尋ねた瞬間、鏑屋さんはボクを圧倒するかのように勢い込んで話し始める。
「学年首席なのに少しも威張らず、誰も見下さない優等生! 普段は優しい笑顔を浮かべている中、時折その短めのショートカットの髪から覗く憂いを帯びた表情に私はもうーー」
「ストップストップ! 鏑屋さん」
マシンガンの如く熱く話し始めた鏑屋さんを静止させるボク。
いやあ、何というか自分のことを面と向かって褒められると照れるよ。
多分今のボクの顔は真赤だろうね。
まあ、それはともかく。
「鏑屋さん、確認するけどボクのことが好きなんだよね」
「はい、その通りです!」
その素敵な笑顔が眩しい。
「本当に、心の底から言っている?」
「はい! 本心から時宮さんのことが大好きです!」
……だからどうしてそんな堂々と宣言出来るのかな?
告白っていうのはもっとこう、恥じらいながら相手の反応を待ち、一挙一動に注目するものだと思っていたのだけど。
いや、それはボクの勝手な思い込みだったのかもしれない。
最近の女子はこんな軽い感じで告白しているのかもね。
まあ、それはともかく。
「鏑屋さん……最後に確認して良いかな?」
多分今のボクは相当変な顔をしているのだろうね。
「はい! もちろん!」
鏑屋さんは勢い良く頷いたのでボクは意を決して口を開き、確固たる真実を口にする。
「ボクは……女なんだけど」
鏑屋さんとお揃いのセーラー服とスカート、成長余地のある胸と、どこから見ても啓明高校の女子高生なのだけど。
「はい、知っています!」
そう笑顔で答える鏑屋さんに応える言葉など見つかるはずもなく、ボクは硬直するしかなかった。
「ノックを始めるぞー!」
校庭から響く野球部の掛け声がいやに耳についた。