素となるモノ
ちょっぴりカニバリズムです。
母は何度も繰り返した。「食べた物が身体になるのだから、選んで食べなきゃいけないよ」私は母の言葉に頷きそれからずっと、身体に良い物を選んで食べた。食べたものは私の血になり肉となり、私の身体を日々作り上げていく。
だけどなぜだろう・・・何かが足りない。
私には恋人がいた。私の通う高校の数学の先生で、笑顔がとても優しい人。だけど先生は私のことを一番に好きじゃなかった。私と付き合っていて、「愛してる」と言っていたのに、その口で私の親友に同じ言葉を言うのだ。
あの子が彼を好きだということは、知っていた。彼も、あの子のことを入学した時から気に入っていた。だから私は、彼があの子を好きになる前に私のモノにした。あの子はとてもいい子。ちょっと馬鹿だけどそこが可愛くて、おっとりしていて、いつも私の後ろを付いて回る可愛い子。たとえ想い合ってても、親友から恋人を取るなんてできない優しい子だ。
私はどうしても別れたくなかった。彼が謝るのなら許そうとそう決めて、私は彼のマンションを訪れた。大丈夫・・・彼は私のことを愛してると言っていた。きっとあの子と火遊びをしようとしてるんだ・・・きっとあの子のことは諦めて、また私の所に帰って来てくれる。そう、確信していた。
「僕はあの子が卒業したら、結婚しようと思ってる」
手にした包丁には、人の油と血がねっとりと付いていてこれ以上切れるのか不安になった。血抜きのされた肉ならまだしも、今目の前にあるのはまだ温かみと血の残る肉だ。こんな小さな包丁じゃ切り分けられるわけが無い。それに骨だって私の力じゃ、切れるわけない。どうやって切り分けるか考えたが、何も思い浮かばなかったので私は台所からコップを一つ持ってきた。
この部屋に置いていた私専用のピンクのコップ。あの子が私と彼にお揃いで買ってくれた大切なコップ。床にコップを置いて、彼の右手首を切り裂く。まだ温かい彼の血はぽたぽたとピンクのコップに落ちていく。真っ赤な、真っ赤な彼の血。私を裏切った、裏切り者の血。
彼の血は、温かくて鉄の味がして喉につかえる感じ。美味しくはないけれど、私は彼の血を身体の中に流し込んだ。喉を通って、あぁ、今、私の胃の中にいる。
お母さんは言った。「食べた物が身体になる」って・・・・じゃぁ私の身体はきっと、彼になるんだ。優しくて、たまに意地悪で・・・そして私を裏切ったちょっぴり残酷な彼に。
そう思うと、嬉しかった。
「彼になったら、あの子は私を愛してくれるかな?」
目の前には彼の素が一人分。
親友が好きだったけど、自分のモノにはならないから親友の好きな人を自分のモノにして誰のものにもならないようにしようと考えたけど、結局は彼が彼女を諦めきれなかったから殺して食べて、私が彼になろうとちょっと頭の逝っちゃった女の子でした。はじめファンタジーで描こうと思ってたのにどうしてこうなった\(^o^)/