09.家族
小さい頃、幼いながらも家族仲がいいとはどうしても言えなかった。
母の再婚による新しい父親。
それが――今の父だった。
確かあれは5歳ぐらいの時。
突然血のつながった父が他界。
それによって結華の生活はガラリと変わった。
いつも傍にいてくれる母が大好きだった。
家事をするのも、一人で過ごすのも苦ではなかった。
母と一緒なら…。
けれど8歳になるかならないかというそんな時。
母が、今の父を私に紹介した。
二人は結婚し、母と私・父と裕樹の4人が家族として一緒に住むことになる。
母が父以外の人といることが…許せなかった。
突然現れた父が、当たり前のように父親面するのが…許せなかった。
今考えればなんて幼かったのだろうと思うようなこと。
けれど私はどうしても、二人の仲を認められなかった。
思いを隠していられるほど成熟していなかった私への接し方に、父も、そして母も戸惑っていた。
父とも、母ともぎこちなくなり、裕樹に至っては口を聞くこともなかった。
何が発端だかは覚えていない。
けれど一度だけ、裕樹と大喧嘩をしたことがある。
お互いに溜まっていた鬱憤。
それはどちらも同じもので、『同じ考えを持っている』そんな共通点が見つかっただけで、私達は打ち解けた。
ほとんど家にいない父と打ち解ける時間はなかったけれど…。
だからこそ出来る限り帰らない様にしていた実家。
裕樹とは笑って過ごすことができていたが…、それでも居場所がなぃと感じていたから…。
笑って…出迎えてくれるとは…思ってもいなかったのだ。
『家族』という輪の中に、自分が存在していたことが、結華にとっては何よりも嬉しかった。
しばらくぶりに帰ってきた我が家は、結華が知る当時から何も変わっていなかった。
母親が絶えず生けている花も、家具の配置も、食卓の囲み方も…何一つ変わってはいなかった。
『変わらないこと』
そのことにこれほど喜びを感じるとは思っていなかった。
(あぁ、いい家族なんだな)
と。
数年前の自分が聞いたら噴出すようなことをふと思った。
次話は明日7時に更新します~♪