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それぞれの想い~公園で出会った二人~  作者: 灯月樹青
■私とアイツと親友
7/14

07.弟

どこをどうやって帰ってきたのかすら私にはわからないけど、それでもちゃんと家に帰り着くんだから…、帰巣本能ってすごいなって思う。

本能ともいえる部分の持つ能力…やっぱり人間も動物なんだって実感。

公園を出てからの記憶はあまりない。

気付いたら家の前に立っていた…という感じが正しい。

目にも耳にも何かカーテンのようなものが引かれていて、周りの状況がわからない。

…ううん、違うな。

きっと『私が』それらのことを受け入れることを拒否しているだけ。


尭と出会った事。

後悔してるかって言ったら…多分答えられない。

今までの経過がある…といえるほど、私は大人じゃないから。

こんな思いをするぐらいなら…と思ってしまう。

誰もいない部屋。

一人暮らしをしていてありがたいと思うのは、家族に気を使わなくて済むことだ。

出来れば心配なんて掛けたくないから。

思う存分…泣くことが出来る場所…。

一人でいる機会が多かったからか、気付いたら誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。

取り繕うこともなく、頑張ることもしなくていいから…。


「…たまには実家に帰ろうかな…。あ、公園…行こ…」


引っ越してきてそろそろ2年が経つが、その間帰ったのは年末年始の一回のみ。

電車で2・3時間の場所にあるというのにほとんど帰っていないことに気付く。

なんだかんだと理由をつけては帰らないようにしていた気がする。

緩慢な動作で携帯電話を取り出し、メモリを探すのも面倒なのでそのまま番号を入力する。


――プップッ――という機械音の後、すぐにコールが始まり、3コールぐらいで聞きなれた声が聞こえる。


「もしもし。井澤ですが…」

「あ~、裕樹?私」

「結華か。珍しいなぁ~なんだ?」


弟である裕樹が、年下の癖に私を呼び捨てで呼ぶところは全く変わってないらしい。

その変化していない所が何故か嬉しかった。


「明日帰るからぁ~母さんとかに言っといて」

「明日?ずいぶん急だな」

「なんとなくね」

「ま、んじゃ言っとく~。土産持って来いよ~」

「自分で買いに来いよ(笑)」

「面倒だしなぁ~。ま、父さんとか寂しがってるし。何時頃来るんだ?」

「ん~、…起きて支度して…昼前には付くようにするよ」

「そう言っとくよ」

「頼んだ~んじゃ、それだけだから」

「おぉ、明日なぁ~」

「明日~」


用件だけ伝えて切ってしまう。

これもいつもと変わらない。

久しぶりに話したわりに、お互いの反応は至って普通。

長く距離を置いているとは感じられない。

これが家族ってものなのかもしれない。

何時に起きればいいか…などを考えているうちに、結華は自然と眠りに落ちていった。






次話は明日7時に更新します~♪

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