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11.買い物

買い物に付き合っている間、裕樹はずっと可愛いかった。

確かに普段入らないお店だろうし、キョロキョロ居心地が悪そうにしているのはわかるけど。

見繕ったもの見繕ったもの似合いそうと言われても…困ってしまう。

どんな子かもわからないので、結局髪留めといくつかのオプションをラッピングしてもらった。

貰っても重くなく、それでいて安っぽくも見えないものだから、プレゼントと言っても通じるだろう。

なんとか買い物を済ませて街をぶらつきながら、裕樹は仕切に感謝していた。

私的には滅多に見れないものを見せてもらったわけだし、そんなに感謝される必要ないのに。


「サンキュー結華♪助かったよ」

「どぉいたしまして♪私も色々と楽しめたよ」

「結華何食いたい?」

「フレンチ♪」

「…ぉぃ」

「嘘ウソ♪そぉだなぁ~。久々にモス行きたいかな」

「あ~俺も暫く行ってないや」

「んじゃ決まりね♪」


意見が一致すると二人同時に振り返る。

――その時、後ろで声がした。


「――井澤……?」


と。

またもや二人は同時に振り返る。

その結果裕樹は首を捻ることになった。

呼び掛けたその人は真っ直ぐに結華を見つめている。

一目で相手が呼び掛けたのが自分ではないのがわかる。

そして結華はハッキリとは覚えていなかったが、その顔に見覚えがあった。


「……海原?」

「やっぱりかぁ~久し振りだなぁ」


名前を呼ばれた海原は人懐こい笑顔を浮かべる。

彼は結華の中学のクラスメイトだった。


「ホントに久し振り。卒業以来だよね。元気だった?」

「そりゃモチロン♪」


――緊張――

裕樹が結華から感じたのはそんな雰囲気だった。

多分一緒に暮らす事さえなければそれが緊張なのだと気付くこともなかったであろうほんの少しの変化。

普通ならはしゃいでもいいような再開。

でも裕樹は少しだけ結華から聞いたことがあった。

小学校の時の事を。

結華がそうとは見せないだけで抱えてる傷を。


「そっちこそ、彼氏?」

「ん?ぁ、……」

「そうです。なぁ結華急ぐぞ?」

「そっか、ゴメンな引き留めちゃって。またな~」

「あ、うん。またね」


二人仲良く歩いている様は兄弟には見えないだろう。

似ても似つかない容姿をしているから。

全く血が繋がっていないのだからしょうがないのだけど。

それでも今まではこんな風に否定されないなんてなかった

なぜあんな肯定をしたんだろう?

強く引かれる手が痛い。

思っていたのより大きな背中。

いつのまにこんなに大きくなったのだろう。

まだまだ小さいと思っていたのに…。


「――裕樹?」


振り向けば、それは祐樹ではないのかもしれないとふと思った。

あまりにも普段と違う行動を取るから。

呼び掛けると同時に、祐樹はこちらを向く。

それはどこからどう見ても祐樹に違いなく、自分の中に浮かんだ考えを否定する。

けれど祐樹がこちらに向けた目…。

その目に何故か胸がチクリと痛む。


「隠さなくていいから」

「ぇ?」

「俺に話した事あるだろ。小学校の時の事」


あれは…もうかなり前の事になるのに。

両親が共に仕事ど帰れなくなったと連絡が来た日。

親睦を深めようとか言って、二人で今までの事を洗いざらい話した。


「…」

「緊張…してたろ?お節介だった?」

「…覚えて…たんだ」

「…家族の事だし…」


――家族――。

祐樹は確かにそう言った。

今まで、祐樹が家族と言ったことはなかったのに…。

祐樹は、私と母を認めてはいた。

けれどどうしても言えなかったのだろう。

祐樹の母は亡くなったわけではなかったから。

変わらないと思っていた。

何も変わっていないのだと…。

私は何を見ていたのだろう…。

こんなにも変わっていたのに…。

緊張していたことにも祐樹は気付いていた。

だからあんな風に…連れ出してくれたんだ。


「ありがと」


素直に、そう言えた。

嬉しかった。

気付いてくれたことが。

同時に、気付いてしまった。

祐樹が振り返ったその時、私は重ねたのだ。

祐樹と、アイツの目を。

アイツも、気付いたから。

私の変化に…自分ですら気付かない程の私の感情に…。


「結華?」

「ん?」

「早く行こ?腹減った」

「そうだね♪行こっか」


考える事もせず、二人は歩き出した。

取り留めのない話をしながら歩く様は、やはり兄弟には見えない。

けれどそれでも、結華は感じていた。

兄弟というより、家族としての絆を…。

血は繋がっていないけれど、しっかりと結び付いたものを。



次話は翌日7時に更新します。

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