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第七話 新しい仲間 リオム・ガルド兄弟

森の奥へ進むにつれて、木々は背を低くし、下草が増えていった。

人間族の集落から離れて1日が経った。追っ手の気配は感じないが、三人とも緊張は解けていなかった。


「……このままだと、食糧が足りないな」


ラウネスが前を向いたまま言う。

乾いた声だった。


フィルカナは荷袋に目を落とし、小さく頷く。

干し肉もチーズも残りわずか。これ以上、森を抜ける前に手を打たなければならない。


その時、ルウが足を止めた。

低く鼻を鳴らし、風上へ顔を向ける。


「……誰かいる。人間族じゃない。僕たちに近い?」


不安よりも、驚きが勝った声だった。


ラウネスが剣の柄に手を置き、視線を巡らせる。

同時に、フィルカナが足元で何かに気づいた。


「罠……狩り用ね」


踏み荒らされていない地面。巧妙に隠されているが草がしっかり結ばれている。


「出てこい」


ラウネスの声が森に広がる。

威圧ではなく、確かめるための声だった。


一拍置いて、下草が揺れた。


「……おいらたちに言ってる?」


軽い声と共に、小柄な影が姿を現す。

肩には、砂色の小さな獣――フェネックがちょこんと乗っていた。


「人間族じゃなさそうだな」


少し遅れて、もう一人。

大柄で、丸みのある体つき。頭上では鷹が円を描くように舞っている。


「……おら、ガルドだ。上の鷹はセイラってんだ」


「おいらはリオム。こっちはサフ。フェネックだ」

小柄な少年は、肩に乗った小さな狐を撫でながら名乗った。


ラウネスは一瞬だけ仲間を振り返り、それから名乗った。


「俺はラウィル族の次期族長ラウネス。こいつらは――」


「人間族から逃げてきた」


リオムが言葉を継ぐ。

その一言で、空気が変わった。


「おいらたちも同じだ。」

「ただ……東側を放牧地にしてるラウィル族さ」


ナリムが目を見開く。


「同じ、部族なのか……?」


ガルドがゆっくり頷く。ラウィル族と、いっても常に一段となって動いてるわけではない。

いくつかのグループに分かれて、草を食べすぎないように生活しているのだ。


「人間族から、逃げてきたんだ……おらたちも」


短い沈黙の後、リオムがラウネスを見る。


「お前、西のラウィルの次期族長なのか?」

「なら、おらたちも一緒に連れて行ってくれないか?」


ラウネスは眉をひそめる。部族に合流する為の旅ではないからだ。


「俺達は……」


「今は、まとまった方がいいでしょ?」


ナリムが割って入る。

不安そうな声だが、視線は逸らさない。


「食糧も足りない。人数が増えれば、狩りも安定する」


フィルカナが静かに続ける。


「協力しましょう。敵は、人間族だけじゃない」


 ラウネスはルウを見る。

 ルウは何も言わない。ただ、森の奥を見据えている。


「……分かった」

「だが、俺達は部族の元には向かってない」


「僕達はラウィル族を救うために、森の賢者に助言を求めに行く途中なんです」


リオムがにっと笑う。

「おいらたち西のラウィルのほとんどが」

リオムの瞳が鋭くなる。

「殺されたか、捕まった」


ラウネスは答えなかった。

いや、何も言えなかった。


助け舟を、出すようにフィルカナが声を出した。

「私達に、ついてくる気があるなら」

「狩りを手伝ってくれない?」


「それなら任せておけ。サフもセイラも見つけるのは得意だ」

「それに、おいら達も獲物を探してたとこだ」


狩りの準備は静かに進んだ。


リオムが膝をつき、地面に指を這わせる。

サフがその動きに合わせて耳を立て、風の匂いを嗅いだ。


「鹿だな。数は……二つ」


ガルドが空を仰ぐ。

セイラは高く円を描きながら、森の向こうへ滑空していく。


「……南西。水場に向かってる」


声は小さく、だが確信に満ちていた。


ラウネスは短く頷く。


「ルウ、回り込め。追い立てるな、逃げ道を塞ぐだけだ」


ルウはナリムを背にしたまま、音も立てずに駆け出す。

灰色の巨体が、森に溶けるように消えた。


フィルカナは狩場に着くと、木陰に身を寄せ弓を引く。


ナリムはルウの背から降り、低く身を伏せた。


先に居る、リオムが罠を張る。


木々の間に、つるを緩く張り、その先を握りしめる。


森がざわめいた。


枝が折れ、獣の足音が近づく。

次の瞬間、鹿が視界に飛び込んできた。


逃げ道を失い、方向を変えようとした刹那――


「今だ!」


ラウネスの合図の声。


ルウが姿を現し、進路を遮る。

リオムが、ツルを強く引っ張る。

驚いた鹿が跳ね、ナリムの仕掛けた罠に足を取られた。


その一瞬を、フィルカナは逃さない。


弦が鳴り、矢が走る。

首元を正確に射抜かれ、鹿は崩れ落ちた。


残る一頭が逃げようとするが、上空から影が落ちる。


セイラが滑空し、爪で視界を奪う。

動きが鈍ったところへ、サフが飛び出し、足元を撹乱した。


「……止めだ!」


ラウネスが剣を振るい、深く斬り込む。


森に静けさが戻った。


しばらく誰も口を開かなかった。

やがて、ガルドがぽつりと言う。

「……すごいな。それ、石じゃなくて青銅なんだな」


リオムが眉を顰める。

「人間族から奪ったのか?」


フィルカナは弓を下ろし、獲物に黙祷する。


「はるか昔にドワーフが置いて行ったものよ。」

「貴方の命、無駄にはしないわ」


その場で手早く解体が始まった。

肉は焼き固め、草に包む。内臓は食べられる分だけ取り分け、残りはルウたちに与える。


ナリムが包みを結びながら言う。


「……これで、しばらくは持つね」


ラウネスは血のついた手を拭い、森の奥を見る。

一つ懸念は無くなったが、まだまだ不安は拭い切れなかった。

リオム

・ラウネス達とは別の集団のラウィル族。小柄だが行動力のある、おにいちゃん。


サフ

・小さな狐のフェネック。リオムの相棒。可愛い。


ガルド

・リオムの弟。ラウネスと同じくらい大柄で少しぽっちゃりしてる。優しく穏やかな性格だが力持ち。


セイラ

・ガルドの相棒の鷹。索敵に奇襲と、とっても頼りになる女の子。

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