表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/37

第六話 これからの行方・頼れるもの

人間族の集落から半日の林の中。

三人と一匹は、ようやく腰を落ち着けていた。


木々は密で、陽はほとんど差し込まない。

足元には湿った落ち葉が重なり、踏みしめるたびに鈍い音がした。


ラウネスは悔しさを目元に表しながら、その場に腰を下ろしていた。

手のひらから、じわりと血が滲んでいる。


強く剣を受けすぎた。

刃を弾いた衝撃が、そのまま皮膚を削ったのだ。

それだけブロクという男の剣は、重かった。

それだけ種族の違いというのが、大きかったのだろう。


ラウネスから、言葉はなかった。


ナリムは少し離れた場所に立ち、林の奥を警戒していたが、やがて視線を戻した。


「……こうなることも、予想していたでしょう」


責める声ではない。

ただ、事実を口にしただけだった。


フィルカナがすぐに言う。


「ナリム、言いすぎよ」


彼女はラウネスの手元に視線を落とし、唇を噛んだ。


「悪いのは人間族の方よ」


あの時の村人の顔が、脳裏に浮かぶ。

蔑むような目。無遠慮に伸ばされた大きな腕。

価値を量るような視線。


フィルカナは、それを振り払うように首を振った。


ナリムは一度だけ息を吐き、話題を変える。


「……これから、どうする?」


ラウネスは視線を動かさないまま答えた。


「このまま戻るなんて、できない」


短く、はっきりと。


「仲間は、助ける」


ナリムはラウネスの声に耳を澄ませていた。

そこに迷いはなかった。


「……なら」


ナリムは言葉を選ぶように、一拍置いた。


「森の賢者に相談すべきだ」


ラウネスの眉がわずかに動く。

森の賢者とはハーフリングと元を同じくする妖精族の一つだ。


「今の僕らには、知恵も足りない。力も足りない」


ナリムは続けた。


「正面からどうにかできる相手じゃない」


沈黙。


「だから、彼らを頼るべきだ」


ラウネスは困ったような顔をした。

簡単な話ではない。

遠回りになる。

それに森の賢者は、誰にでも手を貸す存在ではない。

元を同じくすると言っても、今では別の暮らしをしている。

どこまで協力してくれるか、わからない。

もしかしたら拒絶されるかもしれない。


その時、フィルカナがそっと近づいた。


ラウネスの手を取り、葉に包まれた薬を開く。


「これ」


そう言って、傷口に丁寧に塗り込む。


「長老たちから預かった薬よ」


ラウネスは何も言わず、それを受け入れた。


ナリムが静かに言う。


「僕たちは、最初から一人で生きてきたわけじゃない」


ルウが小さく鳴き、ラウネスの足元に座る。


「森の賢者だって、妖精族だ」


「きっと……助けてくれるはずだ」


ラウネスは二人の顔を見る。

それから、ルウを見る。


林の奥から吹く風が、草を揺らした。


「……ナリムの言う通りだ」


ラウネスはゆっくりと立ち上がった。


「森の賢者を頼ってみよう」


一瞬、遠くを見る。


「随分と遠回りになるが……仕方ない」


フィルカナは荷をまとめ直し、逃げる際に回収していた剣をラウネスに差し出す。


「日が落ちる前に、もっと離れましょう」


「追ってくるかもしれないわ」


ナリムが頷き、歩き出す。


「行こう」


ラウネスは剣を再び、腰に差すとナリムに預けていた荷物を受け取り、歩き出した。

森の賢者

・ラウィル族に伝わる伝承。草原の北にある森に住むとされる妖精族。昔、ハーフリングの流行病を治したと伝わる。ラウネス達もよく分かってない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ