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第四話 交渉・初めての人間族

村は、遠くから見れば静かだった。

畑の畝、低い柵、土で出来た家屋。

人の営みが、そこにある。


ラウネスは歩みを緩め、距離を保ったまま手を上げた。


「……まずは、交渉から入る」

「慎重に行こう」


ナリムとフィルカナも、それに倣う。

敵意はない、という意思表示だった。


最初に気付いたのは、畑にいた二人の村人だった。


一瞬きょとんとした顔をしたかと思うと、次の瞬間、彼らは声を上げて笑った。


「おい! 来たぞ!」

「本当に来やがった!」


一人が、その場で踵を返す。


「知らせてくる!」


土を蹴り、村の奥へと走っていった。


残った一人は、ラウネスたちを値踏みするように眺めている。


ラウネスは一歩前に出た。


「俺たちは交渉に来た」

落ち着いた声で告げる。

「捕らえられた仲間を連れ戻したい。君たちの族長に会わせてほしい」


「族長?」


村人は鼻で笑った。


「で、お前らはどこの誰だ」


「俺はラウェル族の族長代理ラウネスだ」

ラウネスは青銅の剣を鞘のまま掲げ、ラウェル族の証をたてた。

「なぜ笑う!俺たちは貴様らに、捕えられた仲間の返還のための、交渉に来た」


村人の視線が、ナリムとフィルカナ、そしてラウネスの顔を一瞬だけなぞる。


「捕まったチビ共ならな。ここには居ねえよ」

村人は口の端を歪めた。


ラウネスの眉間に皺がよる。

「……どこだ」


「でっかい街だ。知らねえよ」

男は、楽しそうに言う。

「金になるからな。ああいうのは」


ラウネスは一歩、さらに踏み出した。


「なら、その街の場所を教えてくれ」

声は低く、抑えられている。

「それで済む話だ」

ラウネスの眼は厳しい。


その時だった。


足音が増える。


先ほど走っていった男が、三人を連れて戻ってきた。


村人たちは、最初から距離を詰めてくる。


ナリムは自然な動きで、草原の方へ半歩ずれた。

ルウの姿は、すでに見えない。


「へえ……」

一人が、フィルカナを見下ろす。

「こっちにもいるじゃねぇか」


手が伸びる。


「何をする!」


ラウネスが叫ぶ。


だが、村人は余裕の表情を崩さない。


「いいだろ?」

「うちの村にも、奴隷が手に入る」

「女のハーフリングがいれば、数も増やせるな!」


「待て」

鋭く言った。

「我々は交渉に来た客だ。分かっているのか?」


村人の一人が、笑った。


「チビは、人間じゃないだろ?」

「それに、ここには居ねえって、言っただろ?」


空気が、凍りついた。


フィルカナが弓を引こうとした瞬間、別の手がその腕を掴む。


「何だ、その目は」


「……これが、人間か!」


フィルカナの声は震えていた。


「やめろ!」


ラウネスの叫びにも、村人たちは笑うだけだった。


次の瞬間、ラウネスは剣を抜いていた。


刃先が、フィルカナの腕を掴む男に向けられる。


「離せ」

低く、はっきりと告げる。だが人間族の男は鼻で笑う。

「もう一度言う。離せ」


男は、嘲るように肩をすくめた。


「やれるもんなら――」


言葉は、最後まで続かなかった。


剣が閃く。


地面に血が滲む。


「……っ!」


村人たちは、一斉に後ずさった。


ラウネスは剣を振り回しながら、距離を保つ。


「これ以上、近づくな」


その時、低い声が響いた。


「何をしている」


大柄な男が、村の奥から現れる。


「ブロク!!奴隷が向こうから勝手にやって来たぞ!」

「手伝え!」


空気が、完全に変わった。後ろから現れた、男は他の人間族と違って引き締まった筋肉に、腰には剣を帯びていた。


ラウネスは剣を構え直す。その手は微かに震えていた。

人間族の村

・200人程の集落。主に農業で成り立っている。豪族のような小規模の国がいくつかある。妖精族を奴隷にして農奴として生産力を高めて規模を拡大してきている。

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