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第三十話 決着!熱戦!激戦!超接戦!

ラウネスは、改めてオーガと向き合った。


その巨体に、思わず息を呑む。


シルヴァやザンよりも、さらに頭二つは大きい。

腕は丸太のように太く、握られた石の棍棒はまるで攻城兵器のようだった。


「まったく……五月蝿い虫どもが……」


低く響く声。


ラウネスの目が、見開かれる。


「お前……言葉が分かるのか」


オーガは鼻で笑った。


「ああ。とっ捕まえたエルフの奴隷共から、戯れにな」


力のこもらないように見える動きで、棍棒が横薙ぎに振るわれた。


ラウネスは剣で受け流す。


しかしガルドは直撃を受け、吹き飛ばされた。


「ほう?少しは頭の使える奴もいるとは」


オーガの目が細まる。


「エルフに教わったのか?」


棍棒が再び振るわれる。


二度。


三度。


凄まじい威力だった。


数発受けただけで、ラウネスの腕は痺れ始めている。


まともに受ければ剣ごと腕を持っていかれる。


ラウネスは横目でガルドを見る。


ガルドは、動かない。


力を溜めている。


(それでいい)


ラウネスは思った。


この怪物の攻撃を、大槌で受け続けるのは無理だ。

一発でも直撃すれば、命はない。


ならば自分が時間を稼ぐ。


ラウネスは剣を握り直した。


より深く。


自分の内側へ潜る。


このオーガは間違いなく強者だ。


ザンやシルヴァと同じ領域の敵。


今までと同じでは、勝てない。


もっと深く潜れ。


もっと強く。


「はあっ!」


気合を吐き出し、踏み込む。


全身の筋肉が悲鳴を上げた。


限界を超えた一撃。


ラウネスの剣が、オーガへ振り下ろされる。


オーガの表情が変わった。


棍棒で受ける。


衝撃。


ラウネスは止まらない。


剣を振るうたびに、速度が上がっていく。


二撃。


三撃。


四撃。


ついにオーガは捉えきれず、斬撃を腕で受けてしまった。


血が散る。


オーガが咄嗟に踏み込み、棍棒を突き出す。


ラウネスは身体を捻って躱す。


そして――


再び斬撃。


小さなハーフリングとオーガ。


体格差は歴然だ。


それでも今、この瞬間。


二人は対等に斬り結んでいた。


歴史的に見ても、こんな戦いは初めてかもしれない。


もっと深く。


もっと強く。


ラウネスは渾身の力で斬りつけた。


その一撃でオーガの巨体が、わずかに退く。


だが。


ラウネスの身体も限界だった。


全身に激痛が走る。


動きが止まる。


その隙をオーガは逃さなかった。


棍棒が、上段から振り下ろされる。


ラウネスは剣で受けた。


衝撃。


腕が悲鳴を上げる。


受け切れない。


棍棒の軌道が僅かにずれ頭部に届いた。


視界が、真っ赤に染まる。


ラウネスの身体が揺れる。


オーガはゆっくりと棍棒を振り上げた。


次の一撃。


それを、ラウネスが躱すことも受けることもできない。


その時だった。


「今よ!」


フィルカナの叫び。


「起きなさい!リオム!」


次の瞬間。


ラウネスの足元の土が沈んだ。


茂みから蔦が伸び振り上げた棍棒に、絡みつく。


オーガの動きが止まる。


リオムは血まみれのまま地面に伏していた。


だが、意識は繋がっている。


サフと。


オーガが驚きに目を見開いた。


体勢が崩れる。


その瞬間を、逃さない。


ガルドが動いた。


溜め込んだ力を、すべて解き放つ。


大槌が唸りを上げオーガの膝を叩き砕く。


衝撃。


巨体が揺れる。


オーガが片膝をついた。


それでも、棍棒を振り下ろそうとする。


その腕へルウが飛び掛かった。


鋭い牙が、手首に食い込む。


「今だよ!ラウネス!」


ナリムの声。


その声が、ラウネスの意識を引き戻す。


残った力を、すべて振り絞る。


剣を振り上げる。


そして――


振り抜いた。


斬撃が、走る。


次の瞬間。


オーガの首が、ごとりと落ちた。


巨体がゆっくりと崩れ落ちる。


地面が揺れた。


そして――


ラウネスもまた、その場に倒れ込んだ。

「ラウネス!」


ナリムとフィルカナが、同時に駆け寄った。


ラウネスは地面に倒れたまま、ぴくりとも動かない。


全身が血に濡れている。


「兄ちゃん……!」


少し離れた場所では、リオムがかすかに声を漏らした。


意識はあるようだ。


だが、返事をする力までは残っていない。


その傍らで、サフが心配そうに寄り添っている。


それは、まさに死闘だった。


フィルカナはラウネスの傷だらけの身体を見て、思わず涙が込み上げそうになる。


だが、ぐっと堪えた。


震える手で薬を取り出し、傷口へ塗り込んでいく。


止血。


呼吸はある。


まだ助かる。


フィルカナはもう一つの薬を取り出すと、ナリムへ手渡した。


「これを……リオムに」


ナリムは小さく頷いた。


「……死なないでね、ラウネス」


小さく呟く。


そしてすぐに立ち上がると、リオムの元へ駆け寄った。


静まり返った森の中。


戦いの跡だけが残っている。


ゴブリン族の死体。


そして首を落とされたオーガの巨体。


しばらくして。


森の奥から、羽ばたく音が聞こえてきた。


セイラだった。


その後ろから、シルヴァが姿を現す。


「……すまない、皆」


シルヴァは戦場を見渡しながら言った。


「まさか、オーガまで来ていたとは」


森に散らばる死体の数。


ゴブリン族。


そしてオーガ。


その光景を見て、シルヴァは小さく息を吐く。


「しかし……」


苦笑する。


「お前達だけでオーガをやっちまうとはな」


呆れたように頭を掻いた。


「大した連中だ。まったく」


そしてすぐに表情を引き締める。


「よし!」


シルヴァが声を上げた。


「ゆっくり運べ!」


倒れている二人を指差す。


「ラウネスとリオムは重傷だ!」


周囲の仲間達が慌ただしく動き出す。


こうしてラウネス達の初陣は。


辛くも、勝利という形で終わったのだった。

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