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第二十九話 危険!きょうてき注意報!

ルウに腕を噛まれ、森の奥へ引きずられていったゴブリンは、やがて地面へ叩きつけられた。


手から石刀が転がり落ちる。


がうっ。


ルウが低く唸る。


反撃は許さない。


今度は脚へ牙を立てた。


再び、激しい悲鳴が森に響く。


ルウは噛みついたまま左右へ激しく振り回す。

体力を奪うための、執拗な攻撃だった。


だが、ゴブリンも必死だった。


地面に落ちていた石を、残った左手で掴みルウへ振り下ろした。


がん。


硬い音が響く。


ナリムだった。


咄嗟に左腕の小盾で受け止めていた。


「それはさせないよ!」


ナリムが叫ぶ。


「ルウ! とどめだ!」


その声に応えるようにルウは喉元へ噛みついた。


鋭い牙が食い込む。


ゴブリンの身体が痙攣し、やがて力を失った。


戦いは、終わった。


一方――


ラウネスたちは、残る四体のゴブリンと対峙していた。


戦いは、わずかにこちらが有利だった。


フィルカナの矢が常に牽制を入れている。


そのためゴブリンたちは連携を取りきれず、徐々に傷を増やしていた。


盾を構えれば――


ガルドの大槌が叩きつけられる。


仲間を助けに動けば――


ラウネスやリオムが間に割って入る。


このまま押し切れる。


そう思った時だった。


ゴブリンたちに変化が現れた。


槍兵の一体が槍を突き出す。


その瞬間、槍が、うねった。


穂先が不規則に動き、蛇のように軌道を変える。


突然の変化。


ラウネスの反応が一瞬遅れる。


革鎧が裂け、浅い傷が刻まれた。


魔法か、それとも技術か。


判断できない。


だが、状況の変化は明らかだった。


「ラウネス!」


フィルカナが叫ぶ。


魔法を使うべきか迷ったのだろう。


だがラウネスは目を逸らさない。


「大丈夫だ!」


視線は敵から離さないまま、短く返す。


そして前へ出た。


うねる槍。


不規則な軌道。


それを、身体強化で高めた反射神経で強引に躱していく。


下がれば不利だ。


距離を取られれば、あの槍が活きる。


ならば――


前へ出る。


変化する前に、抑え込む。


リオムもガルドも目の前の敵を無視できない。


武器と武器が激しくぶつかり合う。


一進一退の攻防が続く。


その時だった。


どす。


どす。


地面を踏み鳴らす重い音が、森に響く。


ラウネスの背筋が凍った。


「しまった……!」


思わず声が漏れる。


「もう一人を忘れてた!」


次の瞬間。


森の奥から飛び出してきた。


それは――


ゴブリンより遥かに巨大な怪物だった。


見たこともない重装の防具。


そして手には、巨大な石の棍棒。


怪物はゆっくりと顔を上げる。


リオムが思わず叫んだ。


「なんだあ!? でけえ!」


ラウネスの背中を冷たい汗が伝う。


「まさか……」


喉が乾く。


「あれが――オーガか」


ただでさえ互角の戦い。


そこへ、この怪物。


勝てるはずがない。


先に動いたのはリオムだった。


「おいらが時間を稼ぐ!」


短剣を二本、煌めかせる。


そしてオーガの前へ躍り出た。

そこをオーガの棍棒が、空気を引き裂いた。


唸りを上げる一撃。


リオムは姿勢を低く落とし、滑り込むように躱す。


正面から戦える相手ではない。


それは、最初の一撃で理解していた。


素早く横へ回り込み、機会を伺う。


だが振り向いたオーガが、棍棒を叩きつけるように振るった。


どがん。


ガルドの大槌のような、凄まじい打撃音が森に響く。


「リオム!」


ラウネスが思わず叫ぶ。


援護に向かおうと踏み出した瞬間ゴブリンの槍が突き出された。


思わず身を引く。


ラウネスも、ガルドも。


焦りのせいか、動きに精彩がない。


フィルカナの弓が援護の矢を放つ。


しかし戦況は徐々に悪化していた。


ラウネスたちの身体に、小さな傷が増えていく。


一方、リオムは距離を取りながら軽やかに躱していた。


その様子を見てオーガの口元に、邪悪な笑みが浮かぶ。


オーガは大きく振りかぶった。


棍棒を、地面ごと叩き潰すような一撃。


リオムは慣れた動きで身体を横へ流す。


これまでと同じ。


そう思われた瞬間オーガがさらに一歩踏み込んだ。


空いていた拳が、リオムの肩口に叩き込まれる。


衝撃。


一瞬、足が止まる。


その瞬間を逃さない。


横薙ぎの棍棒がリオムへ叩き込まれた。


「がっ!!」


咄嗟に短剣を交差させて身を庇う。


だが。


短剣は、粉々に砕けた。


リオムの身体がくの字に折れ曲がり――


吹き飛ぶ。


「リオム!」


ラウネスの叫び。


リオムの身体は宙を舞い、地面へ叩きつけられた。


その瞬間。


怒声が響く。


「よくも兄ちゃんを!!」


ガルドだった。


普段見せたことのない怒り。


その力で、盾持ちのゴブリンを一撃で吹き飛ばす。


そしてそのままオーガへ突進した。


「おおおおおお!!」


大槌が振り下ろされる。


衝撃。


オーガの身体が、わずかに揺れた。


巨体が、たたらを踏む。


ガルドは止まらない。


雄叫びを上げながら、大槌を連続で叩き込む。


反撃させない。


ひたすら叩く。


その間に森の奥からナリムが駆け戻ってきた。


「ごめんね!遅くなった!」


息を弾ませながら叫ぶ。


「大丈夫!?」


「リオムがやられた!」


ラウネスが叫ぶ。


「オーガだ!」


その言葉と同時にルウが飛び掛かった。


ラウネスと向き合っていたゴブリンを、横から組み伏せる。

鋭い牙が喉元に迫る。


「ラウネス!」


ナリムの声。


その瞬間。


ラウネスが地面を蹴った。


身体強化。


全身の力を爆発させる。


一瞬で距離を詰めると――


槍兵のもう一体へ剣を振り下ろした。


閃光のような一撃。


ゴブリンが倒れる。


「ナリム!フィルカナ!頼んだ!」


叫ぶ。


そのまま一足飛びで戦場を駆け抜け――


オーガへ斬りかかった。


「ガルド!」


ラウネスが叫ぶ。


「一緒にこいつをやるぞ!」


ガルドは息を荒くしながらも頷いた。


大槌を握り直し、距離を取る。


戦場に残る敵は――


槍兵が一体。


盾持ちが一体。


そして――


オーガ。


ラウネスは剣を構える。


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