表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/37

第十七話 獣人 ロップイヤーとキャットテール

シルヴァに連れられて辿り着いたのは、集落の外れにある場所だった。


木々が少し開けた先に小屋が三棟、寄り添うように並んでいる。

その中央には井戸があり、苔むした縁のそばに、三人の妖精族が腰を下ろしていた。


低く切り出した丸太のような腰掛けに座り、何やら言葉を交わしている。


一人は、年若いエルフの男だった。

淡い金色の髪を後ろで一つに結び、整った顔立ちをしている。


だが、ラウネスたちが息を呑んだのは、残る二人の姿だった。


――獣人。


一人は白髪の男。

その髪の脇から、長く垂れた獣の耳が覗いている。

鍛え上げられた体躯からは、野生そのもののような力強さが滲み出ていた。


もう一人は、黒い髪の男だった。

頭の横には、綺麗な三角の耳。

腰のあたりからは、同じく黒く長い尻尾が伸びている。


こちらは、すらりとした長い四肢を持ち、

立ち居振る舞いは、風に揺れる草木のように穏やかだ。


ラウネスたちの間に、緊張が走る。


同時に、白髪の獣人のほうからも、ぴんと張りつめた気配が伝わってきた。


だが――

ナリムだけは、その視線を井戸の方へと向けていた。


「父上」


そう口にしたのは、年若いエルフだった。


シルヴァは短く頷く。


「エリシアス。新しい客だ。もう一棟も使えるようにしておけ」


エリシアスと呼ばれたエルフは、浅くため息を吐くと、

獣人の二人に声をかけ、そのまま小屋の一つへと入っていった。


その背を見送ってから、シルヴァが振り返る。


「あれは息子だ。後で紹介しよう」


続けて、周囲を示すように視線を巡らせる。


「ここは、ドワーフとの交易のために用意した場所だ。今は居ない。だから、好きに使え」


井戸を指し示す。


「水は、あれを使え」


そして、言葉を切り――

獣人の二人へと視線を移した。


「それと……」


一拍、間を置いてから告げる。


「さっきから気になっているだろうが……」

「こいつらも、お前たちと、よく似た話を持ってきている」


その言葉に、空気が再び、静かに張り詰めた。

「こっちのロップイヤーが、ザンだ」


シルヴァが白髪の獣人を示す。


「黒いのが、キャットテールのミル」


続けて、黒髪の獣人に視線を移した。


そして今度は、くるりと向き直る。


「こっちはハーフリングだ」

「次期族長のラウネス。いちばん小さいのがナリム」

「肩にフェネックを乗せてるのがリオム。……丸いのがガルド」

「それで、お嬢ちゃんがフィルカナだ」


ずいぶん雑な紹介だが、誰も文句は言わなかった。


「ラウネス」


シルヴァが名を呼ぶ。


「ザンとミルもな、人間族に攫われた仲間を取り戻すために、長老様に助言を求めて来た」

「着いたのは二日前だ。まさか、他にも同じ目的の連中が来るとは思わなかっただろうな」


ラウネスは、短く頷いた。


「……驚いたよ」


ザンとミル、ラウネスは、それぞれ名乗り、軽く手を差し出す。

短い握手だったが、そこには警戒と、わずかな連帯が混じっていた。


「準備が済むまで、ここで待ってくれ」


そう言って、シルヴァは近くの丸太に腰を下ろした。


それにつられるように、ラウネスたちも、当たり前のように地面へ腰を落とす。

ザンとミルは、先ほど使っていた丸太に座り直した。


最初に口を開いたのは、ラウネスだった。


「俺たちは草原に住んでいる」

「部族の者が人間族に攫われているって話を聞いてな、助け出そうとした」


一度、言葉を切る。


「だが、話し合いにもならなくて逆に捕まりそうになったよ。あん時ナリムとルウに助けられなかったら、やばかったな。」

「ルウってのは、こっちのオオカミだ。ナリムの家族だ」

ルウが尻尾で答える。


「うちのリオムとガルドは、実際に捕まっていたらしい」


リオムとガルドが、気まずそうに視線を逸らす。


「攫われてるのは、ラウィル族だけじゃない、ハーフリング全体に及んでいるらしい」


拳を、膝の上で握る。


「……俺たちだけじゃ、手に余る。だから、助言を求めて、ここに来た」


静かに聞いていたザンが、低い声で応じた。


「まあ、俺たちも、似たようなもんだ」


白い耳が、わずかに揺れる。


「前からな、人間族に攫われるマヌケは居た。群れから外れて捕まっちまうような奴が……」

「だがいつからか、数が増えてきやがった」


溜め息を吐く。


「最近じゃ、あいつら数を揃えて俺たちのナワバリにまで来る」

「一匹ずつなら、どうってことはねぇが、……ああ多いとな」


言葉を切り、ミルに視線を向ける。


「ミルんとこも、大体同じだ」

「だから、ウチとミルんとこで協力して、何とかしようって話になったんだがな」


ザンの目が、険しくなる。


「あいつら、来るたびに数を増やしやがる」

「他の獣人にも声を掛けたが……」


鼻で笑う。


「弱い奴が悪い、の一点張りだ」

「それで、エルフにも声を掛けようってなってな。二人で、ここまで来たってわけだ」


その言葉が落ちたところで、足音が近づいてきた。


「準備が出来た」


エリシアスだった。


「話の続きは、まただな」


ザンが短く言い、ミルと共に立ち上がる。


ラウネスたちも、それに続いて小屋へ向かった。


ふと、振り返る。


――ナリムがいない。


見ると、いつの間にか井戸のそばに張り付き、シルヴァを質問攻めにしていた。


「ねえ、この井戸、どれくらい深いの?」

「水はどこから湧いてるの?」

「森の外にも、同じのがある?」


矢継ぎ早に投げられる問い。


その横で、フィルカナが小さく、呆れたようなため息をついた。


ロップイヤー

・兎耳の獣人。名前はザン。大柄な男性。白髪赤目。

キャットテール

・猫耳の獣人。名前はミル。しなやかな体躯を持つ男性。黒髪黒目。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ