表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/38

第十六話 エルフの生活・ヤックでカルチャー

シルヴァに促され、建物の外へ出る。


扉をくぐった瞬間、視線が一斉に集まった。

ナリム、フィルカナ、リオム、ガルド。

皆、言葉を発さず、ただラウネスの表情を探るように見つめている。


ラウネスは、静かに頷いた。


「……とりあえず、考えてみてくれるそうだ」


それだけ告げると、張り詰めていた空気が、ふっと緩んだ。

ナリムの肩がわずかに落ち、フィルカナも小さく息を吐く。


「よかった……」


ナリムが小さく呟く。


「それでよ」


沈黙を破ったのはリオムだった。


「おいら達は、これからどうするんだ?」


その問いに答えたのは、ラウネスではなくシルヴァだった。


「長老様たちは、今ごろ考えを巡らせているだろう」

「結論が出るまで、集落を案内しよう。今日は、空いている小屋に泊まれるよう手配する」


「えっ」


ナリムの顔が、ぱっと明るくなる。


「集落の中を、見せてもらえるの?」


「草原とは随分、違うと思うぞ」


皆が立っている場所は、集落の中心らしい。

先程までラウネスがいた一際大きな建物をシルヴァが指し示す。


「ここが集会所だ。今ごろ、年寄りたちが集まって話している」


さらに歩を進め、木々の間に広がる一角へと案内する。


「こっちは芋畑だ」


土が整えられ、一定の間隔で植えられた作物が並んでいる。

自然の中に溶け込んでいるが、明らかに人の手が入っていた。


「俺たちは狩りや採取で生きているが、こうして育てることもしている」

「こいつらはな、そこらに埋めておけば勝手に育つ」

「森のあちこちにあるぞ」


ナリムが、しゃがみ込んで芋の葉をじっと眺める。


「……食べられるようになるまで、どれくらいかかるの?」


「三ヶ月から半年くらいだな」

「年に二、三回は収穫できる」


ナリムはその場で黙り込み、何かを計算するように目を伏せる。

その横顔を横目で見ながら、ラウネスもまた、思案げに視線を落とした。


「次は、こっちだ」


案内された先にあったのは、今まで見てきた建物とは、どこか違う雰囲気のものだった。

大きさもさることながら、装飾のない、ひどく簡素な造り。


そして何より、不思議なことに、地面から少し高い位置に設えられている。


「ここが集落の倉庫だ」

「冬を越すために、皆で準備している」


その言葉に、一同は思わず足を止めた。


この建物を、食べ物で埋め尽くすというのか。


遊牧を生業とするラウィル族にとって、季節ごとに移動するのは当たり前だ。

一箇所に、これほどの蓄えを持つという発想自体がない。


「……」


誰も言葉を発せずにいる中、シルヴァは苦笑する。


「このような倉庫が、いくつもある」


その一言で、驚きはさらに大きくなった。

次に案内されたのは、森の中でも少し拓けた場所だった。


地面にはいくつもの丸太が置かれ、簡素な的が並んでいる。

八人ほどのエルフの少年たちが、真剣な面持ちで弓を引いていた。


弦が弾かれるたび、

カツン、と乾いた音が森に響く。


矢を放った少年たちは、すぐには声を上げない。

自らが射た矢の行方を、じっと見据え、静かに結果を受け止めている。


「俺たちは皆、こうやって弓を覚える」


シルヴァが淡々と告げた。


「エルフの男は、狩りができて初めて一人前と認められる」


その言葉に、反応したのはフィルカナだった。


「……女は、弓を使わないの?」


問いかけに、シルヴァは一瞬、言葉に詰まったような顔をする。

そして、どこか苦い表情で答えた。


「狩りをするのは男だけだ」

「どこにでも例外はいるが……あまり多くはないな」


「そう」


フィルカナは、それだけ答えた。


だが、シルヴァの方を見ることはなかった。


彼女にとって衝撃だったのは、女の弓使いが少ないという事実ではない。

自分と、さほど身長の変わらないその少年たちが、自分が使っている弓よりもはるかに強く、大きな弓を、難なく引き絞っていることだった。


矢は深く的に突き刺さり、弓の反動にも体勢を崩さない。

その姿は、鍛え上げられた狩人のそれだった。


フィルカナの瞳に、悔しさが滲む。


だが、その感情を、口に出すことはなかった。

ただ、唇を結び、静かにその光景を焼き付ける。


やがてシルヴァが歩みを止め、振り返る。


「さて、お前たちも疲れただろう」

「泊まれる場所に連れて行く。夕飯までは、ゆっくりするがいい」


そう言うと、再び森の奥へと歩き出し。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ