第十話 戦う力 石や木で武器と防具を作ろう!
夜露を含んだ草が足元で柔らかく音を立て、焚き火の跡だけが昨夜の名残を残している。
ナリムはルウの背に乗りながら、皆の装備を順に眺めていた。
青銅の剣は一本。弓はあるが矢は限られている。
数が増えた分、心細さも増していた。
「……このまま進むのは、ちょっと心配だよ」
ぽつりと零れた言葉に、ラウネスが振り返る。
「あのデカい人間族に負けた事、忘れちゃだめだと思うんだ」
「人間族の兵士が、あれで、ほんの一部だとしたら…僕らも、今のままじゃ自分たちも危ういんじゃないかな」
フィルカナが静かに頷く。
「幸い森の中なら、木も石も沢山ある」
その瞬間だった。
「おっ、じゃあさ!」
勢いよく声を上げたのはリオムだった。
「武器、作ろうぜ! 似合うやつ!」
「似合う……?」とナリムが首を傾げる。
「そうそう! ガルドはさ、でっけーんだから、木の棒に石くくり付けて、どーん! ってやつ!」
「かっけーじゃん!」
「え、えぇ……?」
ガルドは困ったように笑いながらも、少し嬉しそうだ。
「おいらはこれな!」
リオムは腰の辺りで短く手を振る。
「短剣、二本! しゅぱっ、しゅぱっ!」
「それなら……」
ナリムは少し考え込んでから言った。
「戦い方には、合ってるかも」
「だろ?」とリオムが得意げに胸を張る。
フィルカナは黙って石鏃を手に取り、形を確かめる。
「矢も、石に変えましょう。貫通力は落ちますが……数は作れないけど、防具を着てる相手には有効かも」
「じゃあ、ナリムは?」
ラウネスが問う。
「僕は……防具かな」
ナリムは少し照れたように言う。
「木を薄く削って、巻き付ける。盾代わりにもなるし、ルウに掴まってる時の反撃を防げる」
「お、じゃあ普段は丸めて、ルウに担いでもらえばいいじゃん!」
リオムが笑う。
ルウは低く喉を鳴らしただけだった。
それからしばらく、彼らは石を割り木を削り蔦で結び続けた。
決して洗練されてはいない。
だが、それぞれの戦い方を考えた形になっていく。
一通り揃った頃、リオムが目を輝かせた。
「なぁなぁ、試そうぜ!」
そう言って彼が指差したのは、森の奥に転がる黒っぽい岩だった。
表面は滑らかで、どこか異様な硬さを感じさせる。
「ガルド! あれで大槌、どんくらい効くかやってみよーぜ!」
「え、これを……?」
言い終わる前に、ガルドは構えさせられていた。
振り下ろされる大槌。
乾いた音が森に響く。
次の瞬間。
「いってぇぇぇぇぇぇ!!」
ガルドは大槌を落とし、腕を抱えてしゃがみ込んだ。
震える手。涙目。
「ちょ、ちょっと! 大丈夫!?」
ナリムが慌てて駆け寄る。
リオムが、腹を抱えて笑い転げる。
ラウネスは呆れ半分、安心半分で息を吐いた。
フィルカナは一歩離れた場所で何も言わず、ただ静かに溜め息をついた。
森には、しばらくガルドの小さな呻き声とリオムの笑い声が響き渡っていた。
装備変更
ラウネス→無し ナリム→木を巻いただけのよろい
フィルカナ→一部の鏃を石に変更
リオム→鋭い石にツタを巻いた短剣2本
ガルド→石の塊に木の棒をくくり付けた大槌




