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第−ZERO−話

〈最終話の第一案としてイメージしたモノです、実際に書いた時のラストは違っているかも知れません〉


【中ノ小国国歌『愛の流れる大河に向かって国民は辰砂姫とセシウム王子の愛を讃えよ』】


小国を流れる大河に向かって

国民は姫と王子の愛する姿を讃え祝福せよ


姫と王子の愛する姿こそ小国民の幸せ

愛せよ乙女 愛せよ青年 

ラブリーワンダホー


愛に満ちる中ノ小国

おおっ我らが祖国


勤勉労働税金免除

愛に満ちた中ノ小国


結婚式では国歌を詠唱

卒業式でも国歌を詠唱


辰砂とセシウムを讃えよ二人の愛は永遠に


国歌セリフ

「愛しています、りりしい王子」

「わたしも愛しています、愛しい(いとしい)姫」


姫と王子の愛で栄える我が祖国

働け国民


姫と王子の愛で豊かな我が祖国


作詞・導師『序福』&仙女『東王母』


 高い岩山の山頂に立った、辰砂姫とセシウム王子は手を握りしめて。眼下に広がる全方位の絶景を眺めていた。


 心地よい風の中、二人を山頂まで運んでくる役目を終えた。

 (あま)の浮船──銀色の東洋龍『水銀龍』の背に乗った無人の『金平糖(こんぺいとう)号』は、ゆっくりと山頂を離れて遠ざかっていく。


 (みかど)の追尾軍を壊滅状態にして、数々の冒険で愛を深めてきた。

 辰砂姫とセシウム王子は、対面で向かい合って互いの顔を見つめる。

 辰砂姫の唇の片側に生えた闇属性の吸血鬼八重歯さえも、今のセシウム王子にとっては愛らしく思えた。

 見つめる王子が言った。

「辰砂……闇属性の八重歯も愛らしい」

 姫が答える。

「セシウム……太陽神の末裔である、光属性の神秘的な瞳に惹かれます」

「深く愛している世界の誰よりも……辰砂のコトを」

「わたしも、セシウムが大好き……出会えたことに感謝しています」

「わくわく」

「きゅん」


 辰砂とセシウムは、愛を確かめるために抱擁して唇を重ねる。

「んッ……んんッ」

 互いの背中に回した手で、愛する二人は背中だけを撫で回す。

 腰から下を触る行為は、男従者のアンチモンと女従者のテ・ルルから、気持ちが高まり過ぎて危険だと禁止されていた。

 唇を離す辰砂とセシウム。


 気分が高揚して【子作り】の準備が整ったセシウムの言葉に辰砂が答える。

「それでは、わたしたちの【子作り】を……」

「はじめましょう」

 長い新婚旅行で、宝の島で発見した。闇属性の者と光属性の者の【子作り】の方法。


 向かい合って互いの手の平を合わせた、闇属性の姫と光属性の王子が、両目を閉じて祈る。

「この世界に平和と幸せを……闇の安らぎと光の希望に満ちる愛を」


 合わせた手の中で、闇から光り(ビッグバン)が生まれ。

 綿毛が生えた一つの種が誕生した。

 綿毛の種は二人の手の中から離れ、空中で次々と分離して綿毛の雲になって広がっていく。


  ◇◇◇◇◇◇


 少し離れた地で、山頂に広がり拡散してうく綿毛の種子を眺めている。

 東丿国の仙女と、西丿国の青年導師の姿があった。

 仙女が呟く。

「ついにはじまりましたね……アレが姫と王子の子作り、あの綿毛種子の一つ一つが二人の愛の結晶」

 空を流れるように広がっていく、綿毛種子の一つがフワフワと落下してきて。

 導師の肩に付着すると、すぐに乾燥して地面に落ちた。

 導師が言った。

「この綿毛の種子は、悪人や悪党の体に付着すると、根を張って悪人の養分を吸い取って大樹に成長する。善人には根を張らない、地面に落ちた綿毛種は大地で根を張る」


 導師の言葉通りに、地面に落ちた姫と王子の子らは、根を張り二葉を伸ばして成長をはじめた。

 見る間に森が広がっていく。

 綿毛種子の雲は、辰砂姫とセシウム王子に軍隊を差し向けた。大帝カエンがいる大都の帝宮殿内部にまで侵入してきた。

「や、やめろ! 来るな!」

 寝室で枕を振り回して、綿毛種を吹き飛ばそうとしている。

 大帝カエン・ダケが転んだ時に背中に、綿毛の種子が付着する。

「ひッ! ちくしょう!」

 姫と王子が子作りで生み出した子らは、大帝の悪人の体に根を張って養分を吸収して、帝宮殿の中で大樹へと成長していった。


  ◇◇◇◇◇◇


 導師と仙女は自分の体の変化を感じていた。

「この世界の新たなはじまりが、はじまりました……わたしたちも姫と王子が起こす愛の宿命からは、仙女と導師であっても逃れられません」

「この世界の人々は、一度赤ん坊にもどって、世界をやり直す……段々記憶が消えてきた……また、成長して出会おう東丿国の仙女」

「はい、西ノ国の導師も無事に成長できますように」

 仙女と導師の体が縮み、衣服の中で眠る赤ん坊の姿に変わった。


  ◇◇◇◇◇◇


 世界中の人間が、赤ん坊に変わると。

 辰砂姫とセシウム王子の子らの大樹から、(つる)が伸びて赤ん坊になった人々を保護回収していく。

 赤ん坊は大樹の幹や枝や葉や花から染み出してくる、白く甘い樹液を飲んで大人に成長して、長い年月をかけて新たな世界を作る。


 子作りの大役を果たした辰砂姫とセシウム王子は、心地よい虚脱感の中で互いの顔を眺めて微笑む。

「辰砂……わたしの大切な人、愛している」

「セシウム……どこまでも、二人で一緒に永遠(とわ)に」

 三回前の前世から、約束されていた出会いを果たした二人は、そのまま抱き合って愛を確かめ合う。

 二人の体を太陽の光りをキラキラ反射する(まゆ)のようなモノが包み。

 辰砂とセシウムは、人々が成長するまで、愛の眠りに入った。


 次に二人が目覚めた時──辰砂とセシウムが聖母と聖父となった新たな世界。

 姫と王子の子作りで「ワクワク」で「キュン」な愛と恋に満ち溢れたラブラブな世界が誕生した。



 第−ZERO−話~おわり~


中ノ小国〔新法〕


【小国内では舌を絡めた、男女の濃厚なキスが許されるのは『辰砂姫』と『セシウム王子』のみ、一般の小国民が濃厚なキス(ディープ)をすると「めっ!」と怒られる】


 忠告を受けてから一ヶ月を越えて、舌を絡めたキスを続ける違反を故意に行う男女がいたら罰則として。


『女性は筋肉を増量させる、筋トレ肉を食べさせられて、ムキムキの筋肉女に肉体を改造』


『男性は女性化の果物を長期間食べさせられて、心身を女性化(TS)させられる』


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