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少女の目撃、想定外の事態

「ゆかり! 基地からの通信だ!」

「繋いで頂戴。現状を報告する」


太平洋に浮かぶ孤島、エドレアへと向かう最中、バーガンディを通じての連絡。スリーコールの後、ゆかりは基地からの通信に応答。音声を受信。女性オペレータの声。伸びやかな声。途中に通信音が挟まりながら響く。


「はい、こちらファントム。要件をどうぞ」

「こちら本部。現状を報告せよ」


 ゆかりは周囲を取り囲む計器を見ながら、自身の位置を把握。流し目で確認しながら言葉を紡ぐ。


「現在時刻0208。ポイント11。間もなく、任務空域に入る。順調に飛行中」

「了解。任務の成功を祈る」


 ゆかりと本部の通話は簡潔に終わる。操縦席のモニターに、バーガンディの姿が映る。デフォルメされた青白い不死鳥姿。順調な飛行。順当な道筋。


「こういう時、僕の体が万全であればと思うよ。僕がこの大地に墜ちた時、もっと完璧な状態であれば。そうすれば、位置も正確に伝える事が出来るのに」

「今のままでも充分だと思うけどね」

「そんな事はない! 僕は他の兄弟よりも劣っているから。そんな事は言えないよ!」

「あなたが劣っているとかは聞きたくない。貴方と私は、一心同体でしょ。貴方が「これ」をくれた時から、貴方と私には切っても離せない糸が紡がれている。それで充分じゃない」


 ゆかりは、自身の心臓付近を愛おしそうになでる。


「ゆかり! やっぱり君は素晴らしいよ!」


 感激したように、クルクルと回るバーガンディ。目がハートマークになる。そうした中、機器がこちらに近づく物体を検知。アラーム。瞬時に切り替わるゆかりとバーガンディ。


「まさか、検知されるとは! こっちはステルスなのに!」


 バーガンディが驚く。ファントムの名前は、現在の技術では感知出来ない機体の性能からつけられた名前だ。墜ちる前よりも性能は下がっているといえども、狙って狙撃出来るとは考えづらい。だが、現在の技術でこちらを追うミサイルは骨董品といっていい。


「あんたの言うそれも完璧じゃなかっただけっ! 切り替えな! 行くよ! バーガンディ!」


 ファントムの外装が一瞬光り、それまでのステルス飛行から戦闘態勢へと切り替わる。モニターにこちらに飛びかかってくる飛翔体を感知。慌てるバーガンディ。


「あいつら打ってきた! まだ旧時代の兵器が動くのか!」


 ファントムは、こちらに向かってくる飛翔体。ミサイル五発を、回避する為行動を開始。ミサイルが暗闇に光を描く。ファントムが暗闇に赤の光を引く。


「っち!」


 ゆかりは自身の両腕を変形、機体名ファントム。個体名、バーガンディと接続。出力を上昇させる。彼女の胸に存在するエネルギーコア「マナ」が、青白い光を上げて駆動。それに応じて、機体の出力が上昇。本来の力を発揮する。バーガンディと視界を共有。


「こんな危ない物隠し持ちやがって!」


 ファントムは追いかけてくるミサイルを撃墜する為、スピードを上げる。機体名ファントム。名称、バーガンディは伴侶(パイロット)と感覚を共鳴する事で本来の力を発揮。


「バーガンディ! 一個ずつ行くよ!」


 追うミサイルは五つ。深夜。強烈な赤の光を五つの光が追う。こうした旧時代の武器に対する応戦方法は、二つ。ミサイルの燃料が切れるまで逃げ切るか、撃墜するかの二択。ファントムは、格納されたチャフ(金属片)とフレア(火炎弾)を発射。ミサイルの撃墜を試みる。


「残り三つ! 九時の方向!」


 感覚を共有するパイロットとファントム。爆発音と衝撃が彼女に伝わる。ゆかりの警告と共に、ファントムは雲の上へ。飛行するファントム。月の光がファントムを照らす。彼女とバーガンディの命が躍動する。彼女の心臓コアが、青白い光を発する。


「トランスフォーメーションッ!」


 飛行形態を解除。十八メートルはある鉄巨人へと変形。黒を主色に、赤を補助的に使用した機体ファントム。目の色は、彼女とバーガンディの色。マナの青白い光が、巨人の目に宿る。展開した腕に武装されている機銃を起動。マナのエネルギーが、線となりミサイルに向かう。光から一瞬遅れて生じる爆発。化学反応と月の光が、ファントムを照らす。


 呼吸が乱れるゆかり。 


「大丈夫かい? ゆかり。一度共有を切ろう。想定外だ」

「もうちょっと良いじゃない。せっかく貴方と共有しているのに」


 汗をかき、髪がパイロットスーツに吸い付くように付着。それまでの呼吸とは違い、口呼吸も入り交じっている。呼吸音と何かの機械が駆動する音が、ゆかりの体から生じる。背から、蒸気が放出される。それは、ファントムの排気構造を通じて空気に排出される。


「それでもだ。君は、サイボーグ。そして、僕の命。それでも今の僕は完璧じゃない。一度共有を解こう。今の体を構成する材料では、君に負担を掛けてしまう。本来の四分の一。いやそれ以下しか、本来の力を発揮出来ない」

「そうね……じゃあ」


 解除をしようとしたゆかり、こちらを狙う新たな飛翔体。こちらへ向かう視線。それも殺意がこもった特別製。ファントムは、向かってきていた光線を回避。青色の光線。連発して襲いかかるビーム。回避行動を取るファントム。機体を包む影。雲から、ファントムの上を取る形で登場。


「何者っ!」


 月と星が機体を照らす。黒と青を使った人型決戦兵器。ファントムとは違い、瞳には色が宿っておらず、白色の光を放っている。青龍をモチーフにして作られた機体。


「あれは! セイリュウ! 何でこんな所に!」

「あんたと同類? なら、早く攻撃するのを辞めるようにいいなさい! 早く!」


 急襲して未確定機体。セイリュウはファントムに物理攻撃を仕掛ける。何度かぶつかる事で響く衝撃。ファントムは防戦一方。エネルギーの供給量を上昇。再び、ファントムは光を放つ。


「ゆかり! 無理しちゃ駄目だ! 間隔を空けないと」

「生き残るには、これしかないでしょ! あんたは、こいつと連絡とりなさいっ!」

「それが、反応しないんだ! こいつは、クソ真面目で僕よりも優れているはずなのに!」

「じゃあ、答えはただ一つね」


 ゆかりはニヤリと笑って、ファントムは光と駆動音を空にまき散らす。防戦一方だった中、ファントムは戦法を変えてセイリュウに向かって組みしくように上を取り合う。


「ちょっと、殴れば解決するでしょ!」


 赤と青の光が激突。太平洋の孤島、エドレア海域での激突。


「くそったれっ!」


 何度もぶつかるファントムとセイリュウ。幾度となくぶつかる中、ゆかりは消耗。熱がこもり、彼女の消耗は、ファントムの動作を妨げる。その一瞬。セイリュウの一撃が、ゆかりが存在する操縦席。バーガンディから見れば心臓を打ち抜く一撃。コアの光は、弱まりセイリュウの右腕が抜かれる。ファントムは、コアの光を失って重力に従っていく。壊れて墜ちていくファントム。中心に存在していたコアは、エドレアへと墜ちていった。


「うーんっ」


 上空で起こっていた戦いは、次第に下がっていく空域。それは、孤島エドレアから可視か出来るまで近づく。衝撃と音が響く。エドレアに住む少女、アンネがむくっと目を覚ます。何かに導かれたように外にカーテンを開け外に出る時、ざわめきを覚える


「星がぶつかってる」


 深夜。アンネが普段起きない時間帯。母親譲りの茶髪が、夜風でそよぐ。着ていた、ピンクの寝巻きがはためく。満点の星空の中、墜ちていく流星群。その一部がエドレアの森へと墜ちていくのを目にする。彼女は流星から目を離せなかった。

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