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手助け

 結果から言うと、アルヴァンさんと話し合って僕の提案は受け入れられた。


 ちなみにリリーがダンドに向かって凄い魔法を放ったことは、アルヴァンさんも知っていたらしい。


 だから協力を申し出たらリリーについては、案外すんなりと受け入れてくれたけど……。


 僕も同じようなことが出来るから、二人でやると言ったらかなり驚かれた。


 まさか10歳児が二人とも、そんな量の魔力を持っているとは思ってもみなかったそうだ。


 まあ今の僕ができるのは、氷の生活魔法でのゴリ押しすることだけだ。


 試したら、リリーと同じように一般魔法でできないかな?


 ……ま、今はいいか。


「よし、じゃあついてきてくれ。他のヤツらには俺から説明する」


「はい!」


 まだ全面的に信頼してくれるわけではないのかもしれない。


 だけど今は一刻を争う状況だ。


 可能な限り早いほうが良いので、アルヴァンさんの後を僕とリリー、カトラさんとニグ婆も駆け足で続き氷造機の方へと向かう。


 人だかりの中には、すでに布で包んだ氷を両手一杯に持ってきている人の姿もあった。


 そのせいなのかな?


 中に来てみたらちょっと涼しい。


 しかし快適な空間というわけでもなく、今は指示やら何やらが飛び交ってかなり騒々しかった。


「お前らー、話があるッ!」


 そんな中、建物の入り口付近でアルヴァンさんが叫ぶと、良く日焼けした巨漢たちが一斉に動きを止めた。


 一瞬で辺りが静かになり、こちらに視線が集まる。


 い、威圧感が凄いな……。


「何か決まったのか、アルヴァン?」


 集団の中からは、代表してアルヴァンさんに尋ねる声がした。


 声の主を探していると、奥から腕まくりをした男性が出てくる。


「ああ。お前らには手を煩わせちまったが、今日の所はなんとかなりそうだ」


 アルヴァンさんが、その腕まくりをした細マッチョのイケオジに返事をする。


 代表して訊くってことは、この人で組合内で偉い方なのだろう。


 アルヴァンさんとも近しい関係のようで、ニグ婆に会釈したてから、ちらっと僕たちを見る。


 彼はすぐに視線を戻したが、周囲の他の人たちは興味ありげに僕たち見てくる。


「この人たちが魔法で氷を作って貰うことになった」


「ま、魔法でか!?」


 アルヴァンさんの説明に、細マッチョの男性は目を丸くしている。


「そうだ。この……」


「トウヤです」


「……リリー」


「お二人がご厚意でな。まあ、こうなったら新しい氷造機は明日までに商人から急ぎで手に入れないといけないが」


 アルヴァンさんに促され僕とリリーが前に出る。


 僕の肩からレイが地面に飛び降りた頃、ワンテンポ遅れて周りがざわつき始めた。


「あの子供、二人がか……?」


「本当に大丈夫なのか?」


「いや、すげえ魔法使いなんだったら年齢は関係ないだろ」


 あちこちで言葉が交わされ、決して少なくない数の不安をはらんだ視線を向けられる。


「アルヴァンさん、じゃあ早速」


「ああ、すまないな。嬢ちゃんも頼んだ」


 みんなの不安を取り払うには、行動で示した方が早いだろう。


 だから僕が声をかけると、アルヴァンさんは一つ頷きリリーにも目を向けてから周囲に対し大きな声を出した。


「安心しろ、今からやってもらう! ほら、そこ道開けろ!」


 僕たちを氷造機のもとまで先導してくれるみたいだ。


「本当にもう大丈夫なんだな?」


「当たり前だ。ダンドのバカの頭を冷やしてくれたんだぞ」


 すれ違いざま、細マッチョの男性がアルヴァンさんに話しかけるのが聞こえた。


「ああ、なるほど。この子たちだったのか」


 そう言って僕たちを見る男性の横を、ぺこりと頭を下げて通過する。


 彼はもう安心しきった様子で腕を組むと、優しく微笑んでくれた。


「まあアルヴァンの言うことだ。黙って見ていれば大丈夫だろう」


 通り過ぎた後、背後で彼のそんな言葉を皮切りに、他の面々も一同に心変わりしたみたいだ。


「たしかに……それもそうだな」


「アルヴァンさんの言うことなら、心配の必要はねぇか」


 す、すごい信頼関係だな。


 命の危険もある海に共に出る仲間だから、こんな感じなのか。


 それこそ冒険者のパーティーとも同じ感じで。


 ぞろぞろと氷造機まで辿り着くと、排出口らしき場所の下にある巨大な受け皿から傾斜のあるレーンが伸びていた。


 レーンは建物の奥側に続いて、枝分かれしていっている。


「今ある分だと、ここを一回山盛りにしてくれたら足りるはずだ。問題なさそうか?」


 アルヴァンさんに訊かれてえ改めて氷を入れて欲しいと言われた受け皿を見る。


 人が何人も入れそうな、大浴槽とでも言えるくらいの大きさだ。


 でも……魔力を頑張って使えば僕は問題ないかな。


 リリーもいることだし。


 確認の意味合いでリリーを見ると、彼女はいつもとすんっとした顔で小さく頷く。


「はい、大丈夫そうです。ここに氷を入れたあとは……」


「あとは自動で流れていくから、そこからはこっちの作業だ」


「わかりました」


 枝分かれしたレーンの先にある金属の板を外したら、その場所で箱に氷を入れていくのだろう。


 あれは魔道具とかじゃなく、上手いこと設計されただけみたいだ。


 あっ、そういえば。


 このレーンって金属製だし、たこ焼き器を作ってくれる場所がこの街にあったりしないのかな?


 ……って、今はそんなことは置いておいて。


 ダメだ、集中集中。


 頭を振って、リリーに声をかける。


「リリー、じゃあ行くよ」


「うん。いつでもオーケー」


 いつもと変わらない平坦な声は、頼もしい。


 受け皿に向かって僕が両手を伸ばすと、リリーが詠唱を始める。


 彼女が出す魔力を感じ、僕もフルスロットルで魔力を放出する。


 いつもみたいにちょろっとではなく、大量の氷を作りたいんだ。


「『氷よ』」


「『アイス・レイン』」


 次の瞬間、僕の両手からは勢いようくピンポン球サイズの氷が飛び出し始め、リリーも同じくらいのサイズの氷を、受け皿の上から雨のように降らせ始めた。


「うぉっ!? す、すげぇ……」


「これ、氷造機よりも速くないか?」


 周りからはそんな声が聞こえてくる。


 僕たちが一心に魔法を使い続けていると、みるみるうちに氷は溜まっていった。


 ほんの一分も経たないうちに、受け皿は無事に山盛りの氷で埋まり、漂う冷気で周囲は肌寒くなっていた。


お読みいただきありがとうございました。

また、かなり久しぶりの更新となってしまい本当に申し訳ないですっ!


まさか1巻の発売報告から2話しか更新できていなかったとは……。エタってたと言ってもいいくらいの期間が経ってしまっていたこと、本当に情けない限りです。


ただ問題は「無事書籍化しました!おかげさまで好調のようです!」と言ったあと、私が何をしていたのか、ということですが……。


ずばり!

2巻の発売に向け、せっせと執筆を進めておりました!!


いや、書いてたのに更新がなかったのはどういうことなんだ。という疑問につきましては、忙しすぎて完全にこっちには手が回らず、更新作業が追いついていなかった感じです。すみません……本当に。


のんびりと読めることをモットーにしていることもあってか、本作は書籍版でイラストなどとともにマイペースに楽しんでいただくことにもマッチしているようです。

1巻を手に取っていただけた方はぜひ2巻も。

自分はwebだけでいいかなと思っていた方も、2巻決定で少しは安心して手に取ってもらえるようになったと思うので、この機会に1、2巻セットで。

すでに各種サイトなどで予約が始まっているので、ご購入いただけますと幸いです。


発売は10/14ごろ。

これからはwebの更新も再開しますので、あわせて楽しんでいただけると嬉しいです。


それでは、長らくお待たせてしまい誠に申し訳ありませんでした。改めて、再びよろしくお願いいたします!

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