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展望台

「……ん? えっ、入場料がかかるんだ。中に入るのって」


 ネメステッド像の足下にある開けた場所。


 像内への入り口まで行くと、簡単なゲートのようなものがあった。


 思わず驚いて足を止めてしまう。


 そんな僕に、以前に訪れたことがあるというリリーが教えてくれた。


「大人は銅貨1枚。子供は、タダ。レイは……タダ?」


 おっ。


「じゃあ僕たちは……」


「うん、タダ。有料なのはカトラちゃんだけ、多分」


 おお。


 どうやら無料で入れるみたいだ。


 レイがどうなのかは、まだ不確かだけど。


 まさかこんなところで子供であることの恩恵があるだなんて。


 まあ、大人も銅貨1枚ってことは修繕費とかに当てられる募金みたいな感じなのかな?


 僕とリリーがカトラさんを見上げると、彼女はポケットから銅貨を取り出し、「私はこれね」といった感じで見せてきた。


 朝なので入場口に長い列ができていたりはしない。


 前にちょうどいた旅人風の装いの男性に続き、僕たちも像の中へと入る。


 結果、問題なく同行できたレイは……見事リリーの予想が当たり、子供と同じで無料だった。


 ちなみに抱えたりしていれば良いが、地面に下ろすのは厳禁とのことだった。


「あら、中は結構新しめで綺麗なのね。風通しも良くて涼しいし」


 ネメステッド様の体内を見て、カトラさんが意外そうに眉を上げる。


 たしかに。


 それこそつい最近に修繕でもされたのかな。


 しっかり掃除された石造りの床や壁には目立つ汚れもない。


「そうですね。外観はある程度の歴史を感じましたけど……」


 僕も頷きながら、先導してくれてるリリーの後ろをついていく。


 決して狭くはないが、だだっ広いわけでもない。


 入ってすぐは天井があったが、一つ階段を上ると、あとは吹き抜けで階段がずっと上まで続いていた。


 レイは抱き上げたまま、ぐるぐると回りながら上に上り続ける。


「大丈夫、リリー?」


「……うん」


 途中、リリーが少し疲れ始めたようだったので僕とカトラさんもペースを落とすことにする。


 僕たちほどではないとはいえ、リリーも体力がからっきしなわけではない。


 なので、そこまで時間がかかることもなく、最上階の展望台まで無事に三人揃ってたどり着くことができた。


 展望台は外から見ると、ちょうどネメステッド様の首あたりに位置してるらしい。


 下から見たときはわからなかったけど、ワンフロアごと展望台になっており、壁の大部分が鉄柵になっていた。


 やっぱり昨晩、夢の中で会った方の首の中にいるなんて変な経験だな……。


 きっと、そうあることではないはずだ。


 まあまあ風があるが、温暖なネメシリアの気候もあって気持ちがいい。


「おお……」


「これはまた凄い景色ね……」


 外に見える光景に僕とカトラさんが感嘆しながら鉄柵に近づいていくと、やはり少しは疲れを見せていたリリーもここまで来るとテンションが上がったみたいだ。


 元気になった様子で僕たちの横に駆け足で来た。


 チラリと見ると、爽快そうに僅かに口角を上げて遠くを見ている。


 ビュウビュウと鳴る風の音。


 そもそもが高台にある巨大な像の上だ。


 鉄柵の外にはかなり下にネメシリアの街が広がっている。


 海を挟んで湾の向こう岸までも見ることができた。


 大きな海側に目を向けると、遠くの島々なんかも見える。


 遠い水平線がきらきらと輝き、銀の海亭からでは望むことのできない場所まで観察できた。


 そして陸側には、小さくロッカーズ大橋らしき物まで確認することができた。


 ネメステッド様が持つ杖の部分には、鳥が巣を作っていたりする。


 なんか、この像が長らく街を静かに見守り続けてるんだって実感させられるなぁ。


 ……。


 三人で色々な場所を指でさし見合ったりして、しばらくのんびりと眺望を堪能した後、僕たちは下に戻ることにした。


「いやぁ~凄かったですね!」


 地上に帰還し、外に出る。


「わたし、あれ買う」


 するとリリーがそう言って、広場の端にある売店に足を向けた。


 見ると、どうやら記念のネメステッド像キーホルダーが置かれているようだ。


 僕とカトラさんもリリーについて売店へと行く。


 売店に並べられたキーホルダーを手に取ってみると、紐がつけられたメダルにネメステッド像が描かれている。


「せっかくだし、僕も買っておこうかな」


「そうねぇ……記念に、みんなでお揃いにしてみましょうか」


 と、いうことで、結局僕とカトラさんも購入することに。


 売店のお爺さんに支払いを済ませ、お手軽価格のキーホルダーを受け取る。


 そうして僕たちは、そろそろニグ婆との約束をしている昼頃なので、昨日の海沿いの道を目指して坂道を下ることにしたのだった。


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