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ロッカーズ大橋

 何があったんだろう?


 不審に思いながら、僕たちも橋の入り口付近まで馬車を移動させる。


 一定間隔で馬車が止められた一帯の端で、カトラさんはユードリッドを止めた。


「トウヤ君。先頭の方に行って、何があったか確認してきてもらっても良いかしら? 私たちはここで馬車を見てるから」


「あ、了解です」


 危険な感じは……しないな。


 よし。


 近くの馬車の中でも、退屈そうにしている子供や母親らしき女性の姿がある。


 無力化状態のレイを抱え、荷台から降りながらしっかり安全を確認する。


 自分でも心配性すぎるかと思ったけど、さすがに街の外で人混みへ入っていくのは緊張する。


 だから念には念を、だ。


 盗賊の罠だった、とかだったら怖いし。



 馬車の間を進んでいく。


 橋の入り口には立ち話をしている人々がいた。


 それに、駆け回っている子供の姿もある。


 ふぅ……良かった。


 ここにいるのは旅人や商人ばかりなのかな?


 なんか立ち話をしながら、みんな橋の奥の方に目を向けている。


 さてさて、何があったのか。


 幸いロッカーズ大橋は幅が広いので、横にずれれば簡単に先頭へ行き、僕も先を見ることが出来た。


 大きな石が組まれ、真っ直ぐにかなりの距離がある橋の上。


 事故があったのか、それとも橋自体に通行できないような破損があるのか。


 えーっと……うん?


 橋の中央辺りに人がいるな。


 一体、何をしているのか。


 一目見ただけじゃ、普通に通れるような気がするんだけど……。


 ちょうど隣の男性が会話を終えたようなので、尋ねてみる。


「すみません。何があったんですか?」


「ん? ああ、あそこにいる青年が道を封鎖しているんだよ。自分を倒せる者が現れるまで、ここは誰も通さないってね」


「えっ? そ、そんな理由で」


「まったく困ったものだよ。僕もさっき他の人から教えてもらったんだけど、ここ最近あの青年が頻繁に同じような事をしてるらしくてね。ネメシリアの冒険者なんだそうだ。迷宮都市に向かう実力者と腕試しをしたいんだろうけど……」


「じゃ、じゃあ、あの人を倒せる人が現れるまでは通行止めですか」


「ああいや、それは大丈夫だと思うよ。あと少し経った昼頃には、ネメシリアから衛兵たちが来ることがほとんどだそうだ。だから待っていたらすぐに解決するよ。変に動いて、巻き込まれるのはご免だしね」


 良かった、なら安心だ。


 じゃあ僕たちも待つことにするかな。


「そうですね。教えていただき有り難うございます」


「いやいや。お互い、少しの間の辛抱だね」


 男性に会釈をして、来た道を戻る。


 僕たちは朝から移動してさっき来たばかりなので、1時間もしないうちに昼に差し掛かるだろう。


 きっと問題はすぐに解決するはずだ。


 そう思いながら馬車に戻り、仕入れてきた情報をカトラさんとリリーに伝える。


「なるほど……そんなことが。わざわざありがとね、トウヤ君」


「いえいえ、お安いご用です」


「でも困った冒険者もいたものね。ネメシリアに仕事がないからって、こんな所で腕試しをするだなんて。そんなことならダンジョンに行きなさいよ、まったく」


「……? ネメシリアって、冒険者の仕事がないんですか?」


 不思議な話だな。


 僕が首を傾げると、リリーが口を開いた。


「あそこは漁師と商人の街。陸側にも魔物が少ないから、冒険者が必要になるような仕事はほとんどないの」


「へぇー、そういうこともあるんだ」


「うん」


 冒険者だからって、どこでも働けるとは限らないのか。


 場所によって変わってくるんだなぁ。


「だから、ネメシリアの冒険者は強くない」


「そうね、リリーちゃん。まあそういうわけで、ここで足止めを食らうのも癪だから、私たちで突破しちゃいましょうか」


「え」


 今、なんて?


「あ、あのー……」


 リリーとカトラさんが目を合わせて1つ頷くと、馬車が動き出す。


 自然と、周囲から注目が集まる。


 ざわざわとする人々の間を抜ける最中、先ほど話を聞いた男性も目を丸くして僕たちのことを見ているのが視界に入った。


 馬車が、ロッカーズ大橋に入っていく。


「トウヤは何もしなくて大丈夫」


 未だ僕が困惑していると、リリーが声を掛けてきた。


「わたしの魔法、見せてあげる」


 おぉ、それは楽しみだ──って、それよりもリリーさん。


 いつもの変化が乏しい表情はどこへ行ったのか。


 なんですか、そのスイッチが入ったような顔は。


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