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売却

 まだ冒険者が帰ってくるには早い時間だ。


 買取所も、ギルド同様に空いていた。


「ルーダンさん、こんにちは」


「おう。今日もホーンラビットだな」


 僕が挨拶をすると、カウンターの奥で腕を組んで座っていたルーダンさんが立ち上がる。


 そして魔物を解体する裏へと足を向けた。


「ふふ、今日は違うわよ?」


「……んあ? トウヤが持ってくるもんっつったら、ホーンラビットに決まってんじゃねえか」


 カトラさんの言葉に、ルーダンさんが首を傾げている。


 手前にある小さめの魔物用スペースに入ろうとして、カトラさんの腰にある物が目に入ったのか、ルーダンさんは眉を上げた。


「お、なんだ。今日はお前も手伝って他のもんを持ってきたのか」


「いや、私のこれは念のため持って行っただけよ。結局全部、トウヤ君が1人で倒しちゃったから必要なかったわ」


「はあ……まあいい。デカい奴ならこっちだ」


 初めてさらに奥へ通される。


 天井が高く、大きな机がいくつもあった。


 長いカーテンで区切ることもできるようだけど、今は捌く物がないのか、どこも開いたままで広々とした印象を受ける。


「トウヤ、担当する奴を呼んでくるからこの上に適当に並べておいてくれ」


「あ、はい」


 ルーダンさんはそう言うと、横にある扉の先へ行ってしまった。


 今日、僕が倒した森オークは全部で4体だ。


 1つの机に乗らないこともないが、全てを綺麗に並べられるほどのスペースはない。


 なのでドーンっとアイテムボックスから出し、良いバランスで重ねておく。


 カトラさんと話しながら待っていると、ルーダンさんが入っていった扉が開いた。


「待たせたな――って、森オークが1、2……4体もいたのかっ!?」


「1人じゃ時間がかかるわよ?」


 ワクワクしたように目を丸くするルーダンさんに、カトラさんが何故か誇らしげに声をかける。


「だな。すまねえが他の奴らも呼んできてくれるか?」


「おうっ! ちょっと待っとけ」


 ルーダンさんが後ろに声をかけると、つなぎ姿の男性が奥へ戻っていくのが見えた。


 残ったルーダンさんは森オークを観察している。


「ホーンラビットから、えらい進歩だな。それにこの切り口、今日はその犬ころじゃなくトウヤが倒したのか! 魔法で一撃かっ」


 いつもはレイが獲ってきてくれてると言っているので、ルーダンさんは現在カトラさんに抱かれているレイに目を向けてからニカッと笑った。


 よくやったじゃねえか、と頭をガシガシされる。


 の、脳震盪が起きそうな勢いだ。


「ちょっとルーダンさん! トウヤ君が倒れるわよっ」


「うぉっ、す、すまねぇ……」


 カトラさんが間に入ってくれたおかげで、僕は何とか事なきを得た。



 4体の森オークは、5人の男性たちによってあっという間に解体された。


 ほとんどの部位を売ったが、自分たち用に一部のお肉と皮を貰うことにする。


 それらを収納してから僕たちは買取所を後にした。


 全部で大銀貨1枚と、大銅貨5枚。


 魔物としてはD級〜強い個体でC級のようだから悪くはないけど……。


 体の大きさを考えるといまいちな気がするのは、脂が多く、美味しく食べられる部分がそこまで多くないからだそうだ。


 アイテムボックスに入れておけば物は劣化しない。


 だから何より、食材には適した保存方法だと思う。


 たとえ野営が続いたとしても食べる物には困らないだろう。



 森オークの皮は、なめしたら外套に出来るらしい。


 雨具がなくて、雨に濡れて困ったからなぁ。


 ぜひ、フストを出る前に外套を作っておきたい。


 そう思って貰ったのだが……。


「すまないねえ、注文がいっぱいで」


「いえいえ。お邪魔しました」


 カトラさんに案内してもらい買取所から直接向かったお店は、大量の予約が入っており、完成が僕たちの出発に間に合いそうになかった。


 優しそうな女性店員さんに謝られ、店を出る。


 カトラさんは外套を持っているそうだから、問題は僕の分だけだ。


 歩いていると、カトラさんが顎に指を当てた。


「どうしたものかしら……。皮をなめすのはお父さんが出来るのだけど、縫い物は私たち2人とも苦手なのよねぇ」


「あ、でしたら」


「ん? 何とかなりそうなの?」


「はい。まだいけるかは分からないですが、アーズの孤児院の院長さんに手伝ってもらえないか頼んでみます。以前、祭りのポンチョを自作するときにお世話になったので」


 前からタイミングがなくクッキーのお礼がまだ出来ていなかったし、そのついでに伺ってみるのがいいかもしれないな。


「それにしても……」


 外套の件に光が差し、街の光景に疑問を抱く。


「なんか、人が多くないですか?」


 いつにも増して行き交う人の数が多い気がする。


「祭りが近くなったらいつもこうよ。旅人や、周辺の街から人が集まってね。この様子だと多分、今日ぐらいから高空亭も忙しくなるんじゃないかしら? 全部の部屋が埋まって」


 僕がキョロキョロと周囲を見ていると、カトラさんがそう教えてくれた。


 そうか。


 祭りで人がフストに集まってきているのか。



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