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清掃員

 作業2日目。


 今日は僕が高空亭を出る頃には、アーズはもう出勤して働いていた。


 彼女に一声かけてから孤児院に行く。


 空に雲が多いな。


 まあ所々青空が顔を覗かせているから、雨が降る心配はないだろう。


 門の前にはアンナさんが立っていた。


「あっ、トウヤさん。おはようございます!」


「おはようございます。本日もよろしくお願いします」


 昨日のアーズに代わり、僕のことを待ってくれていたみたいだ。


 挨拶を済ませると、建物の裏へと同行してくれる。


「運び出していただいた荷物は、必要な物がないか確認しておきました」


「何かありましたか?」


「いえっ。幸いにもあの部屋には、本当に長い間放置していた物ばかりだったので。全てこちらで処分しておきますね!」


 そっか。


 不幸中の幸いだったのか。


 良かった良かった。


 そんな風に思いながら庭を通り抜けていると、近くで遊んでいた女の子が声をかけてきた。


「おはようっ!」


「……あっ、おはよう」


 よく見ると昨日アーズと遊んでいた子だ。


 手を振ってくれたので同じように返す。


 昨日に比べて、警戒されていない気がする。


 なんか嬉しいな。


 鉄扉の前に着くと、デッキブラシが用意されていた。


 前もってアンナさんが準備しておいてくれたそうだ。


 感謝を伝え、アンナさんと別れてから仕事に入る。


 恐る恐る鉄扉を開けると、昨日よりもかなりマシな臭いが出てきた。


 ……うん。


 もちろん断じて臭くない訳ではない。


 だけどこれくらいなら、すぐに慣れるだろう。


 それにだ。


 心配していたスライムの姿もない。


 扉を開けたらすぐそこにいたらどうしよう、と思ってたんだけど。


 階段を下り、穴を塞ぐ棚をアイテムボックスに収納してみても姿は見えなかった。


 やっぱり、わざわざ水路からこっちに移動してくることはなかったのか。


 と言っても、昨日の時点ではそれで良かったけど、今は素直に喜べないんだよなぁ。


 一日考えた末、計画を変えたからだ。


 昨日のうちに前もってスライムを移動させておけば、すぐに仕事が終わったかもしれないのに……。


 まあ考えても仕方ないか。


 とりあえず落ちている大きめの木片なんかは収納して。


 次にやるのは『地下室の洗浄』と『スライムを倒す』のどちらでもなく、『スライムの大移動』だ。


 壁に空いた穴を抜けて水路に行く。


 真っ暗な空間。


 ランタンで照らすと至る所にスライムがいた。


 たしかにこう見ると、動く巨大葛餅くらいに思えてくるな。


 生きている物をアイテムボックスに入れることはできない。


 なのでスライムたちからそこそこ距離を置いて、昨日に収納しておいた生ゴミを出す。


 これで……どうだ?


 しばらくすると、巨大葛餅たちが動き始めたのがわかった。


 全部ではないだろうけど、これくらいいれば十分なはず。


 にしても一体どうやってゴミを感知してるのか。


 嗅覚?

 視覚?


 よく分からない。


 途中で満腹になられてしまう可能性も0ではないので、スライムを引き寄せると食事を始める前に生ゴミを収納する。


 次に穴の入り口に生ゴミを出し、また引き寄せる。


 そんなことを繰り返して、30匹ほどのスライムたちを地下室に連れてきた。


 穴を棚で塞ぎ、僕は階段の上の方で時間を潰すことにした。


 水や火の生活魔法は、あくまで生活魔法なので遠くまで飛ばせない。


 けれど風の生活魔法と組み合わせたりしたら、ひょっとして少しは遠距離魔法っぽくできたりしないのかな?


 そんなことを考えながら練習してみる。


 ようやくコツを掴んできたあたりで、1匹のスライムが階段を上ってきた。


 おっ、終わったのかな。


 スライムを避け、地下室に下りる。


 すると先ほどまであったゴミや汚れはなくなり、地下室はクリーンな状態になっていた。


 よしっ。


 上手くいったぞ。


 スライムたちがしっかり食べてくれたみたいだ。


 それじゃあ次は……。


 このスライムたちを倒そう。


 頑張って働いてくれたのに申し訳ないけど、許してほしい。


 これも仕事なんだ。



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