二・五階層(仮)
ダンジョン二・五階層(仮)。
名称未定。
入り口は以前と変わらず樹皮で隠されていた。
坂を下って広々とした空間に出る。
サムさんたちが探索済みとはいえ、人類で二番目に足を踏み入れる。
なんか緊張するなぁ。
気持ちが伝わったのか、隣にいるジャスミンさんに肩を叩かれた。
「楽しんでいこっ。程よく魔物が湧いてくるから、ストレス発散になるくらい攻撃魔法を連発できるよ」
リラックス、ということのようだ。
笑顔で「はい」と返す。
僕が発見した空間ということで、ダンジョンへの報告は僕名義ですることになっている。
アイテムボックス持ちということもあり、サムさんたちが描いた地図は僕が持っていた。
「えーじゃあ、ゴブリンが出てくるという左側から行ってみましょうか」
左端を中心にゴブリンが、右端を中心にコボルトが出現するそうだ。
どちらもファンタジーでは定番の魔物。
地図を見ながらより身近に感じていたゴブリンを選ぶ。
「そうね。私はサムさんたち同様に見ているから、リリーちゃんと二人で好きにやっていいわよ」
「おー」
カトラさんとリリーからも反対意見は出ない。
なので三つに分かれる道のうち、左の道へ進んでいく。
洞窟だからちょっと肌寒い。
湿気も少々ある。
だけど岩肌にかけられたランタンのおかげで視界は良好だ。
移動中はサムさんとモクルさんが先頭に立ち、最後尾にはゴーヴァルさんとジャスミンさんがついてくれる。
S級パーティに護衛してもらえるなんて。
豪華にも程がある。
信頼もしているし、どこに行っても安全なんじゃないかと思えるくらいだ。
「俺たちが見た限りでは、ここのゴブリンは多くて三体までだ。それ以上の集団になることは確認できていない」
と、先頭を行くサムさん。
「他の階層でゴブリンが出てきたときは違うんですか?」
「ああ。例えば十階層にも現れるが、個体としての能力は同程度でも奴らは明らかに知能が高い。群を作り、戦略的な行動を取ってくる」
「ダンジョンって階層によって魔物の知能まで違うんですね……」
細かいところまで設定しているんだな。
差異を持たせるあたり、アヴァロン様って凝り性なのかも。
「まあ、本当に怖いのは地上にいる野生のゴブリンの方だけどねぇ」
後ろでジャスミンさんが呟いているが、詳しく聞く気にはなれなかった。
フストやネメシリア、ダンジョール。
僕が今のところ巡っている場所は魔物も少なく比較的安全だと聞いている。
けれど広大な世界の中、場所によっては……。
魔物がいる世界なんだから、世界の隅々まで平和ってわけじゃないだろう。
分岐する道を真っ直ぐに数分間歩くと、開けた場所に出た。
最初にいた空間の少し小さい版のようなところだ。
道が繋がって、これと似た空間がアリの巣のようにあるのだろうか。
足を踏み入れてしばらくすると、肌が緑色の小鬼が現れる。
まずは二体。
想像していたままの姿のゴブリンだ。
「トウヤ、最初は一体ずつ」
「うん」
リリーと横並びに立つ。
ゴブリンは手に握った木の棍棒を振りながら走ってきた。
「落ち着いて、いつも通りよ」
カトラさんが声をかけてくる間、サムさんたちも後ろに下がってくれる。
思ったよりも足が速い。
しゃがれた声で叫びながら向かってくるので一瞬だけ気圧されそうになった。
でも……そうだ。
落ち着いていつも通りにすれば大丈夫なはず。
ふぅ。
呼吸を整えて、近頃練習を重ねてきた魔法をお見舞いする。
「『ウォーター・ランス』」
「『アイス・ボール』」
僕が水の槍を放つと、リリーは氷の豪速球を射出した。
二人とも見事に命中。
攻撃を受けたゴブリンは、グギャと声を残して倒れ消えていった。
うん。
練習の成果もあって、ウォーター・ランスの完成度は上々だ。
実力的にも通用することがわかったし一安心だな。
ホッと胸を撫で下ろしていると、後ろで見守ってくれていたカトラさんたちが温かく拍手してくれた。
リリーと二人で照れくささを感じながら魔石を拾ってくる。
ジャスミンさんにそれぞれの魔法を褒められながら、次はコボルトが湧くという場所に移動することに。
広めの道を通っていけば迷わず一番奥まではいけるそうだ。
だけど今回は地図もある。
間を繋ぐ細めの道を通って、最短ルートで右側エリアに移動する。
洞窟内で風景がほとんど同じだから、これは地図がなかったら大変だっただろうな。
魔物は主に開けた空間に人が来ると出現する仕組みになっているみたいだ。
コボルトは鋭い爪と牙を持った、二足歩行の犬といった見た目だった。
こちらも問題なく魔法で倒す。
移動中の魔物も僕とリリーが倒していたので、最後に一番奥の空間まで辿り着いた時には二人ともレベルアップを達成していた。
宣伝を兼ねて、更新再開します。
今回の更新でダンジョール編は……終えれるかな?
【コミカライズ3巻が、今月5/15に発売予定です!】
すでに各種サイトで予約が始まっています。
ぜひ、お手にとっていただけると嬉しいです。
作品の今後にもかかわるので、何卒よろしくお願いいたします!




