調査報告
【コミカライズ2巻、発売中です!】
先週の土曜発売予定だったようですが、いろいろと調べると昨日あたりからようやく置かれ始めているお店も多いようです。
週末に探したけど見つからなかったという方がいたら申し訳ないです……。
ぜひ、改めて書店or通販サイトでゲットしてもらえると嬉しいです!
作品の今後にもかかわるので、何卒よろしくお願いいたします!
「これがこの五日間、俺たちが作成した地図だ」
サムさんがテーブルの上に手書きの地図を広げる。
ある程度簡略化はされているけど、丁寧に情報が書き込まれている。
罠があった位置や、休憩に使った場所など。
ジャスミンさんに続きサムさんたちが帰ってくると、僕たちは食堂で最終報告を聞くことになった。
ローレンスさんとクーシーズ商会の従業員さんも外出中なので、他に人はいない。
女将のムルさんも「ごゆっくり」と水を置くと、気を利かせてダインさんがいる厨房奥に入って行ってくれた。
「思ったよりも空間が続いていたんですね」
地図を見ながら僕が言うと、モクルさんが頬を掻く。
「だから頑張ったんだけど、時間がかかっちゃってね」
「そんな。こんなに広い場所を調査しながら踏破しただなんて……やっぱりモクルさんたちは凄いわよ。正直『飛竜』の実力を目の当たりにしたって感じ」
カトラさんは唖然としている。
たしかに、そうだ。
僕と一緒に頷いているリリーも、信じられないといった顔で四人のことを見ている。
「普通に、二階層と同じくらいの広さがあるのに」
僕たちが足を踏み入れた最初の空間から、三本の道に分かれた洞窟は左右に大きく広がり、分岐しつつも最終的に奥で一箇所に収束するみたいだ。
「儂らは触れんかったが、一番奥の空間で脆い壁を発見した。あそこから三階層へと繋がるのかも知れんの。つまり、嬢ちゃんの言う通り実質的にここは一つの階層。新たに出現した、二・五階層といったところかの」
「残念ながらお宝は見つからなかったけど、魔石は効率よく取れたよ。罠も一度解除すればもう大丈夫そうだったし、駆け出し冒険者のレベルアップにはちょうどいいかもね」
ゴーヴァルさんに続けて、ジャスミンさんがアイテムボックスから魔石を取り出して見せてくれる。
二階層の魔物よりも少しだけ大きいサイズだ。
ちょっとだけ難易度が上がりつつも、効率よく魔物と戦える場所といった感じなんだろうか。
ゴーヴァルさんの言葉を借りると、まさに二・五階層。
「お宝、なし……ざんねん」
リリーはガックシと項垂れるけど、僕としては『駆け出し冒険者にちょうどいい』という情報が重要だ。
「ではそのくらいの難易度だったら、僕たちが行っても大丈夫ですかね?」
「ああ、問題はない。というより君たちの実力だったら危険を感じることはないだろう」
よし。
腕を組んで頷いたサムさんは、保護者の確認を取るみたいにカトラさんを見る。
なかなか言葉がないので不安になったが、僕とリリーも見るとカトラさんは眉を上げた。
「わかったわ。善は急げって言うからね。他の人に見つからないうちに、今から出発しましょうか」
「はい!」
「……うん」
カトラさんも楽しみじゃないわけはない。
明日にしてもいいのに、今日のうちに行ってしまうことにするみたいだ。
「俺たちも同行しよう」
「本当に良いの? ジャスミンさんたちも、今帰ってこられたばかりですけど」
サムさんの提案に、カトラさんが四人の顔を見回す。
「全然平気だよ。これでもS級パーティだからね、体力は心配しないで。焼きリンゴのお礼にってことで」
ジャスミンさんはガッツポーズをして答える。
やっぱり、僕たちに万が一があってはいけないと思ってくれているのだろう。
誰も嫌な顔をしていない。
本当に優しい人たちだな。
二階層からすぐの場所とはいえ、今から満足するまで探索するとなると時間がかかる。
準備を整え、僕たちは帰りが遅くなるかもしれないとムルさんに伝えてから宿を出発することにした。




