未発見エリア
カトラさんがキラキラと目を輝かせて、僕の手を取りブンブンと振ってくる。
「トウヤ君、大発見よ! 誰も踏み込んだことのないエリアにはお宝もたくさん眠っている。それに、地図を作ったらギルドに高額で買い取ってもらうこともできるの。それだけじゃなくて、歴史的な発見として語り継がれることも……」
「……だったら」
リリーが先に進もうとする。
「だからって、無闇に突き進んだら危険って……わかるわよね?」
カトラさんはその肩に手を置き、引き留めた。
それでもリリーはまだ先に進もうとしてるけど。
「どんな魔物が出るかもわからないし、トラップが仕組まれているかもしれないのよ? 二人が行くことを私は認められないわ」
「でも、せっかくトウヤが見つけたのに。誰かに横取りされる」
ようやく足を止め、普段よりも強く反論するリリー。
その気持ちもわかるけど、カトラさんが言っていることに僕も賛成だ。
誰も踏み込んでいないエリアはお宝なんかが残されている分、危険も潜んでいる。
ハイリターンを求めるなら、自ずとハイリスクになるものだ。
「まあ、二階層の端っこにある木の下だからさ。入り口を塞いで帰ったら見つけられないんじゃないかな? サムさんたちに相談して、最初は僕たちの代わりに探索してもらうのはどう? ある程度わかってきたら、僕たちも来てみることにして」
だから、今回は僕もそう提案してみた。
納得してくれるかな。
リリーは口をへの字にして考えている。
自分たちが一番乗りで探索できないことが悔しそうだったけれど、最終的には理解してくれたみたいだ。
「わかった。それだったら、いい」
そう言って、今日は一旦引き戻すことに賛同してくれた。
薄暗い洞窟を後にして、木の下に空いた穴から外に出る。
僕たちは他の木から樹皮を切り取ってきて、なるべく綺麗に穴を隠す細工をし、地上に帰還することにした。
帰り道も魔物を倒しながら移動し、ギルドで諸々を売り払って宿に戻る。
それにしても、なんであんなところに穴ができていたんだろう。
最初にもたれ掛かった時、絶対に木の中は空洞じゃなかったのに。
◆
夜。
雪妖精のかまくらの食堂で、日が暮れてから帰ってきたサムさんたちと食事を共にすることになった。
長時間ダンジョンで活動していたのにな。
四人とも疲れは全然なさそうだ。
僕が注文したメニューは煮込みハンバーグ、バゲット付き。
デミグラスっぽいソースはコクがあってバゲットによく合う。
ハンバーグも、これまでこの世界では見なかったけどダンジョールでは一般的とのこと。
繋ぎが少なくて肉肉しいから、かなり食べ応えがある。
ハンバーガーとかにしても絶対に美味しいだろうなぁ。
チーズをたっぷりと挟んだりして。
僕がモグモグと舌鼓を打っている間、カトラさんが今日見つけた未発見エリアの話をすると、ジャスミンさんは笑いながらちょんちょんと指でつつくような動きをした。
「またまた~。カトラも可愛いところあるじゃん。今更あそこに未発見エリアがあるわけ……ない、けど……」
だけど僕たちが冗談を言っている様子でもないことに気づき、段々と真顔になっていく。
「えっ。もしかして本当なのっ?」
「はい」
固まるジャスミンさんに、首肯するカトラさん。
「…………そ、そんな」
口を開けたまま、僕とリリーも順に見られたので頷きを返す。
すると、いきなりニッコリと笑ってジャスミンさんが立ち上がった。
「凄い、凄いよっ!! え、本当、本当なんだよね? じゃあトウヤが見つけったってことでしょ。なんて言ったらいいかわからないけど、もぉー最高じゃんっ!」
なんか、変なダンスを始めたけど。
腕を振りながら、体をクネクネさせている。
ぜ、絶妙にダサいダンスだ……。
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(1巻未購入という方も、この機会にセットでぜひ)




