お疲れさま
【宣伝】
長らく在庫切れ、品薄状態が続いていたコミカライズ1巻が、補充されているかと思います!
書店でご購入予定の方は、今のうちに行っていただけると発見しやすいかと。
ネット通販にも在庫がありますので、そちらからもぜひ。
今週末のお供に、何卒よろしくお願いいたします!
ノルーシャさんが泣き上戸だったことに驚いていると、ゴーヴァルさんの声が聞こえてきた。
「こ、これ。ジャスミン、やめんか」
「えー? 別にいいじゃない、これくらい。ほら、テンション上がってきたし、私も一杯だけっ」
止めようとするゴーヴァルさんから逃げ、ジャスミンさんが残っていたショットグラスに口をつけている。
そして、グビッと呑み干した。
「お、おぬし……」
ゴーヴァルさんは絶望的な表情をしている。
その瞬間、ジャスミンさんが停止したかと思うと、いきなり小刻みに震え始めた。
「え。大丈夫──」
僕が声をかけ終わるよりも先に、ジャスミンさんが地面に崩れ落ちた。
四つん這いになると、小さく「うぐっ」という音が。
あー、これは。
ゴーヴァルさんが止めていた理由がわかった気がする。
その後の展開は予想通りだった。
嘔吐するジャスミンさんに、泣きながら頬をリリーに擦るノルーシャさん。
フレッグさんとカトラさんは楽しそうに肩を組んでいる。
お酒は呑んでも呑まれるな、だな。
いや、本当に。
何事もほどほどが一番だ。
こんな大人にはならないように、あとでリリーに言っておこう。
カオスな状況の中、僕とゴーヴァルさんがムルさんに謝って片付けをしていると、床の端で膝を抱えているジャスミンさんが呟いた。
「……い、インスタント・リフレッシュ」
彼女の周りに星が浮かぶ。
「ご、ごめん。調子に乗って迷惑かけちゃって……」
あれ、さっきまであんなに気持ち悪そうだったのに、かなり快復している。
顔色も、もうあんまり悪くないし。
「この魔法、酔いにも効くんですね」
「……う、うん。あー私って、ほんとダメな人間だ……」
頷きを返すジャスミンさんだったが、頭を抱え落ち込んでしまった。
酔いも消すオリジナル魔法は、心の状態には影響を及ぼさないらしい。
ブルーなジャスミンさんの横で、カトラさんたちがワイワイと楽しそうにしている。
そんな光景がしばらく続き、フレッグさんは機嫌良く帰宅していった。
「いつでも工房に遊びにきてくれ。歓迎するぞ」
よほどカトラさんのことが気に入ったようで、最後にはこんなことまで言ってくれていた。
前にお邪魔した販売店も楽しかったけど、魔道具が実際に作られている工房か。
どんな感じで作られているのかも気になるし、ぜひとも一回は行ってみたいな。
翌日。
ノルーシャさんの体調が優れないので、ジャックさんへの報告は日をまたいでから行うことになった。
午前中に僕たちの部屋を訪れたノルーシャさんは、開口一番に頭を下げた。
「昨日はご迷惑をおかけしました。カトラ様も、改めて感謝申し上げます。貴女のおかげで無事に話をまとめることができました」
「あー。い、いえ……それは良かったです」
カトラさん、もしかして昨日の記憶が曖昧なのかな?
目を逸らして流しているけど。
ノルーシャさんは『合わせ鏡のマジックブック』でジャックさんに報告を済ませる。
今後は引き続きフレッグさんと詳細を詰めていくとのことだ。
報告文を書いている最中、ずっと頭を痛そうにしていたのは二日酔いのせいだろう。
この日、ノルーシャさんは残りの時間を自室で過ごし、夜もあっさりした物を食べていた。
一仕事を終えて、多分ホッとしたんだろうな。
食事中はいつもより表情も緩く、時々ぼうっとしていた。
ノルーシャさん、本当にお疲れさまです。