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【コミック2巻 11/15発売!!】神の使いでのんびり異世界旅行〜最強の体でスローライフ。魔法を楽しんで自由に生きていく!〜  作者: 和宮 玄


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呑み比べ

 ……。


「え。依頼をお受けいただけるかは、今からする呑みくらべで決まることになったんですかっ?」


 ノルーシャさんたちから何が起こっているのか説明された後、カトラさんが言った。


「そうじゃ。フレッグのやつがそう言っての。だから儂だけというのもなんじゃし、お主らも一緒に観戦せんか」


 ゴーヴァルさんの言葉を聞きながら、ひとまず僕たちは隣の席に座ることにする。


 にしても、呑みくらべで商談を決めるって……。


 テーブルに置かれたショットグラスに入っているのは蒸留酒らしい。


 この世界のものはそこまでアルコール度数が高くはないだろうけど、体に良くないだろうに。


「俺ァ依頼を受けるのは別に構わねえんだ。ゴーヴァルに頼まれちゃ断れねえ。だが、この嬢ちゃんを信頼できるかは酒を呑み交わさねえとな。だから一つ勝負することにしたんだ」


 僕が心配していると、フレッグさんが腕を組みながら話した。


 目を閉じ、眉間に皺寄せているからちょっと怖いなぁ。


 変な緊張が漂っている。


 フレッグさんは目を開けると、僕たちを見た。


「それで、君たちは?」


「……ネメシリアでの、知り合い。わたしたちもここに泊まってる」


 そう答えたのはリリーだ。


 彼女は、ちらっとノルーシャさんと視線を合わせている。


 面倒だから本当の関係性は伏せておくことにしたようだ。


「そうか。よろしくな、俺はフレッグだ」


「……リリー」


「トウヤです」


「カトラと申します」


「せっかくだ。君たちとジャスミンの嬢ちゃんも、依頼については耳にしているようだしな。ぜひ観戦していってくれや」


 ゴーヴァルさんが頼んでくれたジュースを飲んで、ジャスミンさんが頷く。


「そうね、なんだか面白そうだしっ。私たちも応援させてもらいましょ」


「俺ァ負ける気はしねえしな。あれだったら、この嬢ちゃんたちが加勢してもらっても構わないが」


 フレッグさんは、ノルーシャさんに尋ねる。


「私も自信がありますので……と言いたいところですが、ハンデをいただけるのでしたら心強いです。この勝負、必ず負けられませんので。もしもの場合のみ、カトラ様とジャスミン様にもご助力いただいてもよろしいでしょうか」


「え、私だったら問題ありませんけど……。私もお酒は好きなので」


 協力者として誘われたカトラさんは嬉しそうだ。


 かなりお酒好きだからな。


 単に呑めることが嬉しいのかもしれない。


 一方でジャスミンさんは答えを言い淀んでいる。


「あー……私は……」


「儂も見届け人として介入せんことになっとるからの。ジャスミンはやめておけ」


 ゴーヴァルさんに言われ、どうするか決めたみたいだ。


「そうだね。申し訳ないけど勝負は二人に任せて、本当にヤバくなったら協力しようかな……くらいの感じでいかせてもらうかな」


 あはは……と笑いつつ、積極的な参戦は辞退している。


 しかし呑みくらべって、本当に大丈夫なのかな。


 フレッグさんは見るからにお酒に強そうだ。


 カトラさんは結構いい線までいくだろうけど、ノルーシャさんはどれくらい呑めるんだろうか。


「では、カトラ様。よろしくお願いいたします」


「ええ。遥々ネメシリアから来たんですから、絶対に勝ちましょうね」


 二人の目には、早速燃え上がる炎が浮かんでいる。


 ガッツポーズをしてみせるカトラさんに、ノルーシャさんは力強く頷き返した。


「よし。じゃあ始めようじゃねえか」


 フレッグさんがショットグラスに手を伸ばす。


 ノルーシャさんもグラスを持つと、タンブラーを傾け先におつまみと一緒に呑んでいたゴーヴァルさんが開戦の合図を出した。


「では、始めるぞ? ……まずは一杯目!」


 お互いにショットグラスに口をつけ、一気に呷る。


 勢いよくテーブルにつけられた空のグラスが、小気味の良い音を鳴らす。


「ぷはぁ~良い酒入れてんな、女将さん」


「……ふぅ」


 フレッグさんは幸せそうにニヤリと笑い、ノルーシャさんは静かに息を吐く。


「次、二杯目!」


 ゴーヴァルさんの合図で、今度はカトラさんがフレッグさんと同時にショットを呑み干した。


 ノルーシャさんとカトラさんは交互に呑むことにしたらしい。


「まあ、これ美味しいわね……っ」


 やっぱり、カトラさんは完全にお酒を楽しんでいる。


 主にリリーにだが、いつも呑み過ぎを僕たちに注意されているからな。


 ノルーシャさんの大事な仕事に関することとはいえ、これは良いチャンスって思ってるんじゃ……。


 僕とリリーがジュースに口をつけながらジーッと見ると、彼女は気まずそうに目を逸らした。


「の、ノルーシャさんの力になれるよう、しっかり頑張らないといけないわね!」


 なんか、言い訳してるけど。


「ガンガンゆくぞ。ほれ、三杯目じゃ」


 テンポ良くゴーヴァルさんは合図を出す。


 次はフレッグさんとノルーシャさんが。


 その次はフレッグさんとカトラさんが。


 さらに対決は五杯目、六杯目と続いていく。


「すごいね、みんなっ。まだまだいけそうじゃん!」


 一緒に観戦しているジャスミンさんが、拳を握って熱くなっている。


 いけいけーという彼女の応援に押され、空になったグラスにボトルからお酒が注がれる。


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