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反応

「あの……どうでしたか?」


「そ、そうだな。とりあえずもうちょっと続けてみてくれ」


 グランさんの指示に従い、さらに何度か振ってみる。


 最初の一振りが自分でも引いてしまうような速さだったので、本能的に少し手を抜いてやってみたが、それでも風を切る際の鋭い音は消えなかった。


「これはとんでもない逸材かもしれねえな……。今は怪力一辺倒、剣に振り回されてるような状態だが、ある程度技術を身につけたら面白くなりそうだ」


 腕を組んだグランさんの瞳に、どこか少年のような輝きがある気がする。


「しかし重要なのは体の使い方、身のこなし方になるがな。まずは足腰を使って、地面を踏ん張った力を利用できるように意識してみろ」


「足腰を……。ありがとうございます!」


「間違っても自ら魔物に挑んだりはするなよ?」


「もちろんです。僕は自分の身を守りたいのであって、今はそんな勇気もありませんし」


「ならこれは男と男の約束だ。俺がいいと言うまでは可能な限り戦いを避け、逃げろ。アドバイスをする代わりの、絶対の約束だからな。破んなよ?」


「わかりました。今後もお時間があるときによろしくお願いします」


 グランさんは心配してくれているのだ。


 調子に乗った子供が危険を冒さないようにと。


 優しい人だな。


 僕が深くお辞儀をしていると、横で自分も剣を振る真似をしていたアーズが溜息を吐いた。


「はぁ……あたしにはあんな速くできないよ。トウヤってスゴいんだね」


 思わず顔をそらしてしまう。


 これは僕が凄いのではなく、レンティア様のお陰だ。


 技術を身につけるところからが自分の努力になる。


 本当、頑張らないとな。


「普通は体が大きくなってから練習して、速く振れるようになっていくんだ。だからそう落ち込むな、アーズ」


 グランさんがアーズの肩に手を置く。


 2人は仕事に戻るとのことだったので、僕はもうしばらく貰ったアドバイスを意識しながら裏庭で剣を振ってみることにした。


 いやぁ……にしても驚いた。


 こんなに速く振れるだなんて。


 まあ今までの身体能力から考えれば当然と言えば当然なのかもしれないけど。


 手に持っているのが刃物だからなおさら怖い。


 安全第一。


 怪我には気をつけよう。


 試行錯誤を繰り返し、軽く汗を掻き始めたところで練習を切り上げる。


 水浴びをしてから部屋へ。


 そして仮眠。


 …………。


 目を覚ますと、窓枠の少し出っ張った所に腰をかけて生活魔法の訓練をする。


 側溝の掃除をした時、水を熱する技術が足りないと思った。


 冷やす、凍らすも同様に。


 勢いよく温度を変えられるようになりたい。


「『水よ』『炎よ』『氷よ』」


 部屋を濡らしたり燃やしたりしないよう細心の注意を払いながら、微妙な調整を行う。


 これに関しては完全に感覚頼りだ。


 目の前に浮かした水の玉に左手の炎を近づける。


 次に右手を近づけ氷にしていく。


 効率よく最良の結果を実現させるため、方法や発想を変えながら何度も何度も繰り返す。


 …………うん。


 今日はここらへんで終わりかな?


 最終的に納得できる段階になったのは、窓の外の景色が薄暗くなった時間帯だった。


 窓枠から降りて伸びをする。


 屈伸などのストレッチをすると、節々から音が鳴った。


「ふぅ」


 もうお腹がペコペコだ。


 食堂に行こう──いや、もう少し時間をおくか。


 今は利用客が多いみたいだ。


 耳をすますと、下の階から賑やかな声が聞こえてくる。


 …………。



 そろそろいいかな?


 腹の虫はさらに騒がしくなった。


 食堂に行くと、席は3分の1が埋まっているくらいの状態だった。


 端っこの方に座る。


 僕がグランさんの料理に舌鼓を打っていると、アーズの声が聞こえてきた。


「おやっさん、また明日ー!」


 アーズは仕事を終え、大きな鍋を持って帰宅するところのようだった。



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