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【コミック2巻 11/15発売!!】神の使いでのんびり異世界旅行〜最強の体でスローライフ。魔法を楽しんで自由に生きていく!〜  作者: 和宮 玄


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業務連絡

 しばらく再会を喜び、僕たちからは特に危険もなくダンジョールに辿り着き、これからはダンジョンでの活動やその他の観光を楽しもうと思っていることを伝える。


「お仕事は、どう?」


 その後リリーがそんな質問をしたが、ノルーシャさんの表情は曇り気味だった。


「この街にある工房のうち、魔道具の量産が可能な方にお声がけはしているのですが……なかなか話はまとまっておりません。食品を冷凍させる魔道具だけでなく、保冷機能付きのマジックバックの数を揃えなければならないので、その方の工房でしか実現不可能なのではないかと思っているのです。しかし、何と申し上げれば良いのか……その、職人気質の方ゆえ同じ物を大量生産することに抵抗がおありのようでして」


「たしかに……魔道具職人は、プロとしての矜持がある方が多いですからね。量産となると、門下の方々も参加しての一大プロジェクトになるでしょうし」


 カトラさんは職人さんについても知っているようだ。


 簡単なことではないといった様子で頷いている。


「魔道具をゼロから作れる人は少ないって前に仰っていましたけど、量産するとなるとやっぱり大変なんですか?」


 しかし僕はまったくの無知なので、そう素直に疑問を投げかけてみた。


「はい。現在お話をさせていただいている工房ですと、親方と二人のお弟子さんのみがゼロからの製作が可能です」


 ノルーシャさんがこっちを向いて、手を動かしながら説明してくれる。


「なので量産するとなると、お三方のみで保冷機能付きマジックバックや冷凍の魔道具を複数作り、微細な調整などを他の門下生の方々も手伝われる形になります。門下生の数や、三人も魔道具をゼロから作れるのは、この街でそちらの工房だけになるのですが……」


 職人は、作業として同じ物を繰り返し作るのを嫌がっている、と。


 そんなに門下の弟子がいるものだとも思っていなかったし。


 魔道具職人って、体制的にも芸術家寄りの性質があるのかな。


「拒否感を示されているのは、製作ができるお三方ともなんですか?」


 カトラさんが、小さく手を挙げて訊く。


「いえ。お弟子さん方は前向きに考えてくださるようになったのですが、親方からのみ了承が得られておりません。師弟の関係性上、最終的には親方の決定にお弟子さんも従われますので、話が進まず……といった状況になります」


「なるほど。あとは親方だけ、ですか」


 あと一歩といったところみたいだ。


 だけどそう簡単に済ませられる話というわけでもないようで、ノルーシャさんの表情は険しい。


 薄らと眉間に皺を寄せ、難しい顔をしている。


「仰る通りあとは親方だけ、なのですが、その親方は二度目の訪問以降お話さえ聞いていただけない状況でして。今日はお弟子さんから他の案件で親方の機嫌が悪いので帰れ、と言われてしまいました」


 伏目がちになって、彼女は溜め息を吐く。


「性能上、今回は魔道具の独自開発を求めているので、複数の工房との取引は避ける方向性だったのですが……。もう少々様子を見ますが、方針を変更せざるを得ないかもしれません。お嬢様、旦那様と連絡させていただいてもよろしいでしょうか」


「……うん、これに書いて」


 リリーが頷いて、枕元のデスクに置いていた『合わせ鏡のマジックブック』を持ってくる。


 ノルーシャさんも、計画が順調でなくジャックさんへの報告に不甲斐なさを感じたのかもしれない。


 少しの間目を閉じてからペンを取った。


 書く内容を決めるのに時間はいらなかったらしい。


 書き始めると、一度にスラスラと最後まで書き切ってしまう。


「ありがとうございました。お返事がありましたら、お伝えください」


 魔力を込め記述した内容をジャックさんに送ると、リリーにマジックブックが返される。


 けれどリリーの腕の中に戻ったマジックブックは、すぐに光を発した。


「うん。じゃあ、はい。返事があった」


 パラパラっと中を確認して、リリーがまたすぐにノルーシャさんの前に返す。


 偶然、ジャックさんが近くにいたのかな?


 普段から返信が早いといえ、今日はいくらなんでもだ。


「あっ。は、はぁ……」


 ノルーシャさんだって困惑した様子で、恐る恐る光の線になって現れてくる文章を覗き込んでるし。


 お仕事の話に踏み込むのは違う。


 だから黙々とノルーシャさんが文章を読んだ後、もう一回だけメッセージのやり取りをし終えるまで僕たちは静かに待つことにした。


 レイが膝に乗ってきたので撫でておく。


 あ、毛玉ができてる。


 時間を見つけて手入れしてあげてるんだけどなぁ。


「カトラ様、トウヤ様」


 今度こそリリーにマジックブックを返すことができたノルーシャさんに呼ばれる。


「旦那様からお二人にもメッセージがありまして。旦那様曰く『時々高空亭にも行っているが、グランたちは変わらず元気そうだ。アーズは剣の腕をメキメキ上げて、そろそろ冒険者登録をしようかと考えているらしい』とございました」


 グランさんとアーズについて報告があったのか!


 僕だけでなく、カトラさんとリリーも知ることができて嬉しそうにしている。


 そうか。


 グランさんたちも元気にやってるんだな。

 フストの出発前に聞いた通り、アーズは宿の手伝いがない休日に冒険者として活動ができるよう、剣を始めて腕を磨いていたのか。


 色々とお土産になりそうなものをアイテムボックスに入れているけど、この街でも何か買ったりしたいな。


「そういえば魔道具って、一般の人でも買えるんですか? 商会とかじゃない個人でも」


 ノルーシャさんに伝言の感謝を伝えたあと、ふと思いついたので尋ねてみた。


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