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【コミック2巻 11/15発売!!】神の使いでのんびり異世界旅行〜最強の体でスローライフ。魔法を楽しんで自由に生きていく!〜  作者: 和宮 玄


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凄い偶然

 ノルーシャさんの言葉に嘘はなかったようで、残されていた料理はみるみるうちになくなっていった。


 魔法でも使っているのかと疑いたくなるくらいの早食い。


 喉を詰まらせないか心配になる僕をよそに、彼女は器用に「ご心配には及びません」と途中で答えながら、フードファイターかのような勢いのままペロリと完食してしまった。


 細身で、スタイルも良く見えるのになぁ。


 本当に食べたものはどこへ消えていっているのやら。


 とまあ、ある意味で楽しい観戦を終えて、ノルーシャさんを連れて食堂を後にする。


 ローレンスさんはまだ呑み続けるらしい。


 声をかけたが、溜息まじりに小さく「おやすみ」と応えただけだった。


「私が一人で考え事をしたかった都合上、今晩は外で食事を楽しむことにしてくれましたが、今回は同行している四人の護衛はこの二部屋に二人ずつ。そしてこちらの部屋を、私が使っていたのですが……」


 階段を上がり、廊下を進んでいるとノルーシャさんが自分たちの部屋の場所を教えてくれた。


 四人の護衛とネメシリアから来ていたのか。


 って、それよりもだ。


「凄い偶然ですね。まさか僕たちが泊まることにした宿、それも隣の部屋がノルーシャさんだったなんて」


 僕たちの部屋の前まで来て、背後のノルーシャさんに顔を向ける。


「はい。正直、私も驚いております。昨夜も壁ひとつ挟んだ向こうで皆様が眠っていらっしゃったとは。バタバタしていてすれ違いになっていましたが……本当に、凄い偶然ですね」


 驚きつつ、その驚きのあまりに僅かな興奮が垣間見える。


 それも仕方のない話だ。


 廊下の突き当たりにある僕たちの部屋、その一つ手前がノルーシャさんの部屋だったのだから。


 決して狭くはないダンジョールで、偶々決めた宿の隣室に知り合いが泊まっていたなんて。


 一体どんな確率なんだろう。


 これは……カトラさんたちもびっくりするはずだぞ。


 我ながら子供じみてるとは思うが、わくわくしながら鍵を開けドアノブに手をかける。


「戻りましたー」


「おかえりー。トウヤ君、遅かったわね。サウナ気に入った?」


 部屋に入ると、カトラさんの声が返ってきた。


 しかし姿は見えない。


 いや、ソファーからはみ出した足が見えるから、あそこで寝転がったまま声だけで迎え入れてくれたみたいだ。


「サウナ、さいこー」


 リリーも、ベッドの上にうつ伏せで脱力してるし。


 隣にレイを従わせて、綺麗に横並びになっている。


 ダラ~ン、という音が部屋中から聞こえてきそうなダラシなさだ。


 多分ダンジョンで結構歩いたから疲れているんだろうけど。


 よりにもよってノルーシャさんを連れてきたタイミングで、こんな感じだなんて。


 気まずくて、いつもこういうわけじゃないんですと訴えかけるようにノルーシャさんを見てしまう。


 彼女は見てはいけないものを見てしまったような顔で、視線を逸らし眼鏡をクイッと上げていた。


 もう、仕方がない。


「あのー」


「ん? どうしたの…………って、わぁっ!?」


 声をかけると、体を起こしたカトラさんが目を丸くする。


 ノルーシャさんの姿を見て固まっている。


 なかなか次の言葉を発さないので不思議に思ったのか、リリーもごろんと横に転がって、上体だけを起こす。


 そして結局、カトラさんよりも先に声を出した。


「……あ、ノルーシャ」


「……お嬢様、お久しぶりです」


 ちょっとだけ眉を上げたリリーに、美しいお辞儀で応えるノルーシャさん。


 カトラさんは未だ固まり続けている。


 伸びをして、長い欠伸をしたレイが「何事だ」と僕に顔を向けてきた。


 ……。


 ベッドの端に僕とリリーとレイが、ソファーにノルーシャさんとカトラさんが座って話をすることになった。


 僕がさっき食堂でノルーシャさんに会い、ここに連れてきた経緯を説明する。


 同じ宿、それも隣室に泊まっていたという偶然に、二人も一頻り驚いた後、まず初めにカトラさんが軽く頭を下げた。


「恥ずかしい姿をお見せしてしまって……。それとネメシリアでは、大変お世話になりました。ノルーシャさんが出発される前に、最後のご挨拶ができていなかったので」


「あっ。僕からも、本当にありがとうございました! 遅くなってすみません」


 そうだそうだ。


 驚きにかき消されて忘れていた。


 ネメシリアで宿代を一部支払ってくれたりしたお礼を、再会できたら最初に言おうと思っていたのに。


 慌てて腰を上げ、頭を下げる。


「いえ。私のわがままでしたので、ご迷惑ではなくお喜びいただけたのでしたら良かったです」


 ノルーシャさんは微笑みながら、深くお辞儀を返してくれた。


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