測定器
「トウヤ、リリー。あれが測定器。私たちはここで待ってるから、二人で見てきていいよ」
僕がS級パーティの凄さに慄いていると、足を止めたジャスミンさんに声をかけられた。
「あ、はっ、はい」
「なに、緊張してるの?」
「あーいえ、これはまた別で……って、二人でですか?」
なんでみんなで行かないんだろう。
「トウヤ君」
僕が聞き返すと、代わってカトラさんが答えてくれる。
「ステータスって大切な情報でしょう? 魔力量とかは他人でも大体わかるけれど、できればあんまり人に知られたくないって思う人も多いのよ。だからダンジョールのギルドでは、確認は一人でするのが一般的なのよ」
「なるほど……」
たしかに示された『測定器』という魔道具は、仕切られたブースの中で壁に向いて置かれている。
一人ずつ入ってステータスの確認を行うようだ。
冒険者としての慣わしの話なんだったら、ここは乗っておいた方が良い経験になるだろう。
なにしろ僕の場合は、ステータスを確認するだけなんだったらいつでもできるんだし。
「わかりました、じゃあ行こうか」
「……うん」
リリーを呼んで、一緒に測定器と言っていて魔道具のもとへ向かう。
こっちは魔石の買取とは違って今は三人しか列になっていない。
一人当たりそこまで時間もかからないみたいで、並んで待っているとすぐに僕たちの番が来た。
まずはリリーがブースの中に入っていく。
ギルドが提供しているサービスだから、ここはお金がかからないらしい。
良心的だ。
リリーは壁と測定器の間に立ち、壁に背を向けてステータスを確認している。
測定器をジーっと見て、しばらくすると右手にある出口からブースを出ていった。
よし、次は僕の番だ。
あ……そういえば、使い方わかるかな?
詳しく聞かないままここまで来ちゃったけど。
後ろにも人が来たので、とりえずブースに入って測定器の前まで行く。
測定器はゲームセンターにあるカードゲーム機のようなサイズと見た目で、画面にあたる部分が鏡になっていた。
良かった。
左右に丁寧に説明が書いている。
まあ目の前に誰が見ても手を置く場所ですよとわかるように、手形が描かれた箇所がある。
だから何をすればいいのか大体わかるけど、一応サッと説明に目を通しておく。
……うん、想像通りここに手を置くだけで良かったみたいだ。
少し緊張しながらも、あまりゆっくりしてもいられないので早速手を置いてみる。
するとその瞬間、鏡に文字が浮かび上がってきた。
おお……んっ?
【 レベル 】 4
【 攻 撃 】 SS
【 耐 久 】 SS
【 俊 敏 】 SS
【 魔 力 】 SS
【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス
あれ。
なんか、思っていたのと違う感じだ。
揺らめく水色の光で表示されたのは、僕がいつも確認してるステータスに比べて項目も少ないし、何より数値ではなく『SS』で能力値が表示されたものだった。
冒険者とか魔物のランクから考えると、『SS』は「かなり高い」といった程度の意味合いなんだろう。
だけど……これだったらステータスをオープンした方が、詳細な情報が知れていいかもしれないなぁ。
いつでもどこでも見られて手軽だし。
うーん。
勝手な感想で申し訳ないけど、ちょっとガックシだ。
せっかくの魔道具なのに、文字が表示されただけであんまり魔法っぽさも感じられなかった。
「ステータスオープン」
【 名 前 】 トウヤ・マチミ
【 年 齢 】 10
【 種 族 】 ヒューマン
【 レベル 】 4
【 攻 撃 】 3300
【 耐 久 】 3300
【 俊 敏 】 3300
【 知 性 】 53
【 魔 力 】 5100
【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス
【 称 号 】 女神レンティアの使徒
神ネメステッドのお気に入り
幸運の持ち主
フェンリル(幼)の主人
近くに人はいないので、小声で呟いてみたが……うん、やっぱりこっちの方がしっくりくる。
攻撃や耐久なんかも、100ずつだけど着実に数値も上昇している。
目の前に浮かんでいるこの半透明のウィンドウで、成長が可視化されていることの良さを改めて実感することができた。
頑張り甲斐がある気がする。
じゃあもう行こう……あ、そうだ。
鑑定機の前を離れようとして、ふと思いついた。
もしかしてこの魔道具を使ったら、レイのステータスを確認できたりしないのかな。
コミカライズ第1巻が、明後日の5/15発売予定です。
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