VIP待遇
三番のゲートからギルド内に戻ってきた。
サムさんたちの後ろに続き、魔石専用の買取所へ向かう。
ここのギルドでは魔石専用と、第二階層から一定の確率でモンスターが落としだすドロップアイテム専用の買取所が分かれているみたいだ。
多くの冒険者が帰還する時間帯だったらしく、どの窓口の列も長く伸びている。
サムさんたちが来たことで、またしても周囲からの視線を感じる……が、気にしない気にしない。
他のみんなが普通に話して時間を潰しているので、僕もその輪に入って周りは見ないようにする。
遠巻きから興味ありげに見られているだけで変に干渉されたりはしていないのだ。
目立ってしまっていることは仕方がないと、もう我慢するべきだろう。
じゃないと、これからも疲れて仕方がない。
そう思うと、少し気が楽になった。
いや……やっぱり嘘かも。
こうも周りから視線を感じると、まだ緊張しちゃうなぁ。
そうこうしていると列が進み、窓口の女性職員さんが眉を上げながら迎えてくれた。
「まあ、サムさんたちじゃない。こっちに来てくれるなんて珍しいですね」
「いや、今日は彼女たちの初のダンジョンへの付き添いなんだ」
「それは……すごいですね! 皆さんが付き添いだなんて」
職員さんは、そう言って頭にある猫耳をぴくりと動かす。
こうしてギルド内を見渡しても思うけど、ダンジョールは獣人の方も多い。
今までのどこよりも本当にいろんな種族が集まっている。
それとわかってはいたけど、サムさんたちの顔の広さって凄いんだな。
「以前からの知り合いで」
カトラさんが挨拶がてらに会釈すると、職員さんは人当たりの良い笑顔を浮かべ、期待感と共にこちらを見てくる。
「『飛竜』はこの街のヒーローですから。そんな方々と知り合いだなんて、皆さんもすぐに上位のランクになるやもしれませんね!」
容量がかなり大きいとバレなければ良いだけなので、その間に僕はアイテムボックスから取り出した魔石の数々を、ジャスミンさんに教えてもらいながら窓口の横にある金属板に滑らせていった。
魔石は滑って、窓口の向こう側に落ちていく。
何か特殊な箱に入っていったみたいだ。
体重計のように表示された数字を見て、職員さんが硬貨を渡してくれる。
「まあ。やっぱり魔石の数もすごいし、これは期待の新人さんたちです」
あの箱は、獲ってきた魔石の価格をまとめて計測できる代物だったようだ。
これも魔道具なのかな?
魔道具の職人が多くいるというくらいだし、いろいろとあってハイテクな感じだなぁ。
出された硬貨は、今まで使ってきたものとは違ったデザインの公国のものだ。見た目が違うだけで種類や価値は王国貨幣と同じくらいらしい。
だから……うん。
単価としては、フストでスライムの魔石を売った時より少し良いくらいかな。
硬貨は僕が受け取ってアイテムボックスに収納しておく。
次はステータスの確認へ。
「あんまり、あそこは行かないの?」
窓口を離れギルド内の人混みを移動する最中、リリーがモクルさんに質問する。
職員さんとの会話で、サムさんたちが来るのは珍しいと言っていたからだろう。
「あー。僕たちは、ダンジョンに潜るときは結構深くまでいくからね。回収してきた物も希少なことが多いから、まとめて裏の部屋で買取を行ってもらってるんだよ」
「すごい。VIP、待遇……?」
「あはは、そう言ったら聞こえはいいけどね。単に対応が楽になるからだよ」
モクルさんはいやいやと手を振っているけど、きっとVIP待遇に違いない。
周りからの目を気にしないと心に決めたばかりなんだけどなぁ。
なんか次は急に、モクルさんたちの凄さに圧倒される気持ちが交代するように跳ね上がってきた。
こ、これまで結構ラフに接していたけど……。
そうだよな。
全員がSランク、かつS級のパーティなんだから凄いに決まってる。
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