湧いてくる
お久しぶりです。更新再開します。
できたら、このままダンジョール編を走り切りたい……!
そして嬉しいお知らせです。
このたび、ちょうど1週間後の5/15に本作のコミカライズ第一巻が発売される運びとなりました!
すでにアマゾンなどの各種通販サイトでは予約が開始していますので、チェックしていただけると嬉しいです。
表紙からもう、めちゃくちゃ素敵ですので!
瀬戸内くらげ先生が魅力度マシマシで描いてくださっているコミカライズ版「神の使いでのんびり異世界旅行」、何卒よろしくお願いいたします!
……。
ほとんどの冒険者がまっすぐ進み次の階層を目指すので、草原で活動しているのは初心者が多いようだ。
歩いていると、時々若い子たちだけで組んだパーティを見かけた。
皮の防具に剣や杖。
全員が全員、話を合わせたかのように似た格好をしているので面白い。
多分ギルドがおすすめしていたりするんだろう。
魔物の数はそこまで多くはなかった。
ちらほらと目視できるくらいだ。
魔力を遠くまで漂わせて探知してみても、強そうな気配は見つかっていない。
結構平和だな。
フスト近郊の草原と同じくらいかもしれない。
心地いい気温だし、ピクニックとかをする分には雪が降ってる地上よりも良い場所かも。
そんなことを考えながらみんなの後に続いていると、奥に小さめの湖が見える場所でカトラさんたちは止まった。
「この辺りにしましょうか」
「そうだね。見晴らしもいいし、他の冒険者もいない。魔物と一対一で戦えるいい場所だと思うよ」
モクルさんが同意して、今日の活動場所が決まる。
うーん、間違いなく素敵な場所だとは思うけど……。
「でも、見た感じあんまり魔物がいないですよ?」
「あぁ。それは大丈夫だよ、トウヤ」
歩き回りながら倒していった方がいいんじゃ、と不思議に思いながら訊くと、ジャスミンさんが首を振った。
「ダンジョンはね、入り口や階層間の階段付近を除いて、人が集まってると重点的に魔物が湧いてくるんだ! もちろん誰もいなくても出現するけど、結構数に違いがあってね」
「湧いてくる……。そ、そんな感じなんですね」
「ダンジョンの仕組みについては諸説あるから。人によっても考え方は違うし、まあ実際に目で見てみた方が早いと思うよ」
地上にいる魔物は、普通の動物と同じように子供を産むことで増えていっていると学んだ。
単なる動物と違う点があるといっても、それは体内に魔石を持ち、魔力をまとっているという点などだ。
でも、ダンジョン内では魔物が湧いてくると。
同じよう魔石が獲れ稼ぎになるとは聞いているけど、色々と違いもあるらしい。
サムさんが地面に腰を下ろす。
「俺たちは見守っているが、誰からやってみる?」
「そうねぇ。私もついでに、ダンジョンで魔物を倒す経験を久しぶりにしておきたいけれど二人が先ね。トウヤ君からいってみましょうか」
「えっ、僕からですか……?」
自分を指で差して聞き返すと、カトラさんは一つ頷きリリーを向く。
「いいわよね?」
「うーん。最初のはトウヤに譲ってあげる。でももう一体見つけたら、すぐにわたしもいくから。どっちが先に倒すか競争」
いや、競走って。
「おっ、いいねリリー! 二人とも頑張れーっ」
すでに草の上に座り込んだジャスミンさんが、腕を突き上げて煽ってくる。
他のゴーヴァルさんたち『飛竜』のメンバーも、同じく笑顔で手を叩いたりして「いいぞいいぞ」といった感じだ。
はぁ……。
呆れながらリリーと目を合わす。
彼女はやる気十分といった様子で、わずかに右の口端を上げていた。
まあ、これくらいだったら乗ってあげてもいいけどさ。
「ここの魔物相手だったら二人とも心配はいないから、私もみんなと一緒にこの場所で見てるわね。万が一何かあっても、すぐに駆けつけられるようにしておくわ。サムさんたちもいるんだから、目の届く範囲だったら好きに動いて構わないわよ」
カトラさんまでそう言うと、腰に手を当てて観戦モードに入ってしまう。
これ以上の口出しはしないってことのようだ。
ちゃっかりレイも、カトラさんの横に移動して腰を下ろしているし。
「わかりました。まあじゃあ、始めるよ?」
「うん、いつでもいい」
リリーが頷いたのを確認してから、僕は周囲をぐるりと見回した。
同時に魔物の気配を探り、おおよその位置にあたりをつける。
ん?
さっきまでいなかった場所に、魔物の気配がある。
目を向けると、日差しにゆらゆらと反射する緑色のゼリーが見えた。
距離は二百メートルくらい。
草と近い色だから見えづらいけど、あれは……スライム、だろうか?
フストで水路にいるスライムを駆除したときカトラさんから聞いた。
たしか街中のゴミを食べてくれるスライムとは違って、ダンジョンにいるスライムは普通に攻撃してきて危険だと。
よーし。
じゃあ。
警戒は十分にして、あのスライムを倒そう。