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【コミック2巻 11/15発売!!】神の使いでのんびり異世界旅行〜最強の体でスローライフ。魔法を楽しんで自由に生きていく!〜  作者: 和宮 玄


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ダンジョール

 三時間くらい進んだだろうか。


 サムさんたちが乗るとユードリッドが牽くことができなくなってしまうので、馬車と並んで歩く『飛竜』の面々とスピードを合わせて坂道を上り、僕たちは最後の一つの山を迂回するように越えてきた。


 最初に見た雨の中で走っている時の速度だったら、サムさんたちの移動速度は馬車なんかよりもずっと速いだろう。


 なのに、わざわざ僕たちに合わせた速度で歩いてくれているのだ。


 だから時々僕も下りて自分の足で一緒に歩いたりしていると、カトラさんが合図を出して隣で馬車が止まった。


「ふぅ……無事に帰ってきたのぉ」


 ゴーヴァルさんが一つ息を吐いている。


 ようやく目の前に現れたのは、僕たちが目指していたダンジョンを擁する街。


 重ね着をしつつ僕と同様に馬車から下りて歩いていたリリーも、体を動かしたおかげで寒さは吹っ飛んだようだ。


 くしゃみもなりを潜め、彼女はようやく登場した目的地を前に目を輝かせている。


 僕と同じで来るのは初めてらしいからなぁ。


「ここが、ダンジョール……」


 山々を越えた先に現れた迷宮都市ダンジョール。


 周りを高さが異なる山に囲まれ、盆地になった五角形にも似た形をした都市だ。


 街の形状については地図上で知っていたけれど、たしかに少し見下ろすような状態になっているここからだとそんな形をしているようにも見える。


 ただ、それだけじゃない。


 まず初めに感じた何よりもの印象が僕の口から出た。


「綺麗ですね、雪!」


 そう、雪だ。


 視界に広がるダンジョンの街は薄らと雪が積もり、粉砂糖がかけられたようになっていた。


 街の端をぐるりと囲む山々の裾野も、木々が白く染まっている。


 少し前から白くなっている山が視界には入っていたけど、道は濡れてるだけで積もってなかった。


 単にさっきまで降っていた雨で濡れているのかと思ったけど……。


 雪のことは聞いてなかったから、まさか街に雪が積もっているとは思ってなかった。


「このくらいからは降雪も本格的になっていってね。雪が深くなっていくと思うよ」


 モクルさんが少し鼻を赤くしながら教えてくれる。


「もっと降るんですかっ? じゃあ、雪遊びとかも……」


「ははっ、いいね。僕も参加したいけど、こんなおじさんも一緒にいいかな?」


「もちろんですよ。ぜひぜひ!」


 そうか。


 もっと雪が降り出すというなら、その前の良いタイミングで来れたのかもしれない。


 積雪は大変なこともあるだろうけど、楽しみも増えるなぁ。


 スキーとかも子供の頃はよく行っていたんだけど社会人になってからはさっぱりだったし。


 挑戦できないだろうか?


 真っ白な息を吐きながら僕が興奮していると、リリーが何かに気がついたように御者台に座るカトラさんに声をかけた。


「雪が降ったら、馬車、大丈夫?」


「あー、それは……ね? サムさん」


 カトラさんはこの時季のダンジョール事情について知っているのか、確認をとるようにサムさんと目を合わせる。


「ああ。それに関しては心配しないでも大丈夫だぞ」


 サムさんが、そのまま説明してくれるようだ。


「街の中の主要な道と、都市外に繋がっている街道については馬車の通行を止めるわけにもいかないからな。通りが多いから雪が降っても降ってもすぐに固まるのさ」


「宿から馬車を出すときは苦労するみたいだけどね」


 横からジャスミンさんが付け加える。


「そう、ならよかった」


 この街をホームとしている彼らから聞き、リリーは安心したように、ふむと頷いた。


 僕なんて雪にテンションが上がって馬車のことに頭が回らなかったのにな。


 冷静というか、やっぱり大人びているというか。


 リリーが凄いのでちょっと情けなくなってしまっていると、不意に頭上から、白い物が落ちてきた。


『あっ』


 何人かの声が重なる。


 みんなが一斉に空を見上げると、さっきまでと同じ重たい雲から、ひらひらと無数の細雪が降ってきていた。


 雨とは違って、スローモーションみたいに。


 ゆっくりと、風に流されながら落ちてくる。


「……雪って、なんだかいいわね」


 多分、独り言だったんだろう。


 カトラさんがポツリと漏らした言葉だったけど、僕も同じ気持ちだった。


 テレビなんかがない世界で、雪が降らない場所に住んでいるカトラさんやリリーにとっては、きっと雪は距離が遠くて一層神秘的に映っているのかもしれない。


 しばらく、彼女たちは上を向いたままだった。


 妹や娘を見るみたいに、二人に優しく微笑んだジャスミンさんが、一歩前に出て振り返る。


「ようこそダンジョールへ。じゃ、宿に行きましょっか」


 その言葉に導かれるように僕たちは坂を下り、雪の街に入っていく。


明けましておめでとうございます!

今年は小説の執筆をもっと頑張りたいと思います。


年が明けたタイミングで、ちょうどトウヤたちも迷宮都市ダンジョールに到着しました。

これからこの街での起きるあれやこれやを、ぜひ楽しんでいただけると幸いです。

引き続きよろしくお願いします。

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