知り合い
冒険者、だろうか?
それぞれが剣や斧、杖などバラバラな物を身につけ、背丈や雰囲気などもバラバラな四人組がこっちに向かってきている。
「あ! あの木、あの木。ほら、あそこだったら雨宿りにぴったりでしょう?」
そのうちの唯一の女性が、僕たちがいる大きな木を指さして何やら言っている。
彼女たちもここで、この雨をやり過ごすつもりみたいだ。
四人組は全員がかなり俊足で、みるみるうちに近づいてくる。
こちらをちらっと見ながら、数メートル距離を置いて木の下に入ってきた。
「えっ……。あ、ああっ!!」
そして、カトラさんがそう叫んだのは彼らが一息つこうとしている時のことだった。
今度は僕とリリーが顔を見合わせ、カトラさんを見る番になる。
彼女は今まで見たことがないくらい目を大きく見開き、嬉しそうな表情をしている。
どこか現実だとは信じられないような、そんな表情だ。
カトラさんが見ていたのは、今さっき来たばかりの四人組。
彼らも突然の叫び声に何事かと驚いた様子だったが、すぐに四人のうち二人の顔が明るくなった。
目を丸くし、カトラさんと同じように信じがたいものを見たかのような表情になっている。
同時に隠しようのない嬉しさも滲ませている。
えーっと、これは……。
「か、カトラじゃないかっ!?」
片方の男性がカトラさんの名前を呼ぶ。
「サムさん、モクルさんっ!!」
その瞬間、カトラさんはカップを置き、勢いよく荷台を飛び出していった。
なるほど。
どうやら彼らはカトラさんの知り合いだったみたいだ。
カトラさんは冒険者四人のうち二人と抱き合うと、互いに親しげに話している。
リリーと目が合い、僕たちも行ってみることにする。
寒さはもういいんだろうか。
羽織っていた毛布なんかは置き、リリーは上着だけの格好で付いてきた。
その後ろにレイもついてくる。
ちなみに僕はフストを出る前、孤児院でメアリさんに手伝ってもらいつつ作った外套を着込んでいる。
「お、この子たちは……」
すぐに、さっきカトラさんを呼んだ方の男性が僕たちに気付き言った。
「私の旅の仲間たちよ。どう、フレッシュでしょう?」
「トウヤです」
「リリー」
黒の短髪に、がっしりした体つきの男性だ。
革製の上質そうな装備に身を包み、腰には両手剣を携えている。
剣士なんだろう。
四十歳くらいに見える彼は、優しく微笑むと握手を求めてきた。
「サムだ。いやあ驚いた。たしかにフレッシュ、な仲間と旅をしているようだな、カトラ」
僕とリリーと握手を終え、サムさんはカトラさんに言葉を返す。
笑ったときに目尻に入る皺が、人の良さを感じさせた。
「ちょ、ちょっといいかな?」
そこでカトラさんと知り合いらしいもう一人の人物が、控えめに手を挙げた。
「あ、僕はモクルだ。よろしくね」
控えめに挙げられた手とは反対に、モクルさんは体が大きく二メートルくらいありそうな巨漢だ。
獣人のようで、頭には熊みたいな耳が二つある。
だけどその見た目とは反して、優しさが全身から滲み出ているような人で不思議だ。
「で、なんだけど……」
モクルさんはちらり、と僕の横にいるレイを見る。
「そこにいるのは誰かの従魔かな? 凄い存在感があって聞かずにはいられなくてね」
「あ、一緒に紹介せずすみません。レイといって僕の従魔です」
レイが発する魔力を感じ取ったのか。
それか、もしかすると獣人特有の感覚とかでフェンリルとしてのオーラを察知したのかもしれない。
「そ、そうか。ならいいんだ。いや、ごめんね」
モクルさんはホッとした様子で言うと、カトラさんとリリーの顔を見てから口を閉じた。
偶然目に入っただけだから見間違いかもしれないけど、最後にはサムさんの目も見ていたような……。
今まで警戒されるとしても、食い気味にレイのことを確認されたりはしなかったからなぁ。
相手は武器を携帯してるし、多分冒険者だろう。
普段から魔物を相手にしているのかもしれない。
変に、警戒させちゃったかな?
「二人も話は聞いてただろ。彼女たちに紹介させてくれ」
僕はそう心配したけれど、サムさんは後ろにいる残りの二人にも声をかけ呼んでくれた。




