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流れる時間

 出発の日時が決まると、時間は思いのほか早く流れた。


 それからの三日間、主に行われたのは買い出しなどだ。


 フストを出たとき同様に、これからの旅路で必要となる物や、この街で買っておきたい物を購入しておく。


 元々計画としては街でお金を稼ぎ、旅費を賄っていくつもりだった。


 しかしネメシリアは、知っての通り冒険者の仕事がほとんどない。


 残りの滞在期間の銀の海亭の宿泊費は、ノルーシャさんがリリーを筆頭に僕たちとの今後の付き合いを期待し、旅の祝いにと支払ってくれたので助かったけど……財政事情が苦しくなってきたのが正直なところだ。


 一番稼ぎが見込める次の目的地、迷宮都市でしっかり収入を得て貯金をつくらないと。


 もしかするとその前に、間の小さな街で仕事をしないといけなくなるだろうか?


 いや、食料はアイテムボックス内にたんまりあるし、宿さえどうにかなれば大丈夫なんだよなぁ……。


 あっ、そういえば。


 ギルド証の失効期限の関係で、ネメシリアを出発する日にアイテムボックスに収納している薬草を売るつもりだったけど、その日にクラクから獲れた拳一・五個分くらいの魔石を売れば、それもお金になる。


 よしよし、お金のことは思ったより大丈夫そうだ。


 心配しなくて良さそうなので、話を元に戻そう。


 僕はカトラさんとリリーと一緒に街に繰り出した。


 時々メアリさんやジャックさんも付き合ってくれながらも、二人は二人で仕事や、滞在中に観光で巡っておきたいところもあるだろう。


 なので、基本的には三人だけで買い出しはすることになったのだ。


 まずは保存が利く物をメインで取り扱っているお店で、パスタを購入。


 標準的な麺タイプのものから、平麺系のフィットチーネ。


 マカロニやペンネをはじめとしたショートパスタに、料理に使えるようにラザニアっぽい板状の物まで一通り買っておくことにした。


 他にも魚介類など、この街ならではの物を買っていき……。


 もちろん、民族衣装を着て街を回った際、カフェで決意したカトラさんのスープ作りのための食材も大量に集めていく。


 鍋や薪、その他の生活必需品については粗方揃っているので、今回購入したのはほとんどが食材になった。


「ユードリッドの様子を見てもいいかい?」


 またジャックさんにそう言われ、宿の厩舎でユードリッドの状態を見てもらうことになった。


 元々なるべくストレスにならないよう、外に出して軽く体を動かさせてあげるだけでなく、数日に一回は街の外まで出てユードリッドが運動不足にならないように気を配っていた。


 レイも同じタイミングで無力化を解いて自由にできるから良いと思っていたけど、その甲斐もあったのだろうか?


 ジャックさん曰く、ユードリッドの体調も心配する必要はなく、このままの調子で大切にしてやってほしいとのことだ。


 そうしたこの三日間のうち、三日目である最後の一日は各自自由行動にすることになった。


 リリーはジャックさんたち両親と、僕とカトラさんは一人ずつ自由に過ごす。


 僕はレイを連れ、街に出た。


 済ませておかなければならないことは先に終わらせておき、前から気になっていたクーシーズ商会の二階にあった魔法書を物色しに行く。


 本来はダメだけど、前もってジャックさん経由でノルーシャさんに閲覧の許可は貰っていた。


 魔法書は高価な物なので、いつでも直ぐ隣に店員さんがいる。


 あまり熟読したりはさすがにマナーも悪いので、パラパラとだけ見させてもらうことにする。


 何個か欲しい本も見つかったが、値段を聞くと今の懐事情では厳しそうだった。


 なので諦めざるを得ない。


 しかし知識としてだけでも気になる魔法をいくつか知れたことで、探究心に火がついた気がする。


 冒険者として働いて、稼いで……となる迷宮都市では、きっと魔法についても成長できるはずだ。


 冒険者が集まってる都市だって聞くし、魔法書なんかたくさんあるだろう。


 商会を後にして、街の中心部にある屋台で小さめのエビを素揚げした物を串に刺して売っていたので、それを食べながら宿に帰る。


 この前日も、前々日も食べ物を買ったときはレンティア様とついでにネメステッド様にも送っていた。


 だから、エビ串も追加で二本買って献上しておく。


『おお! 味付けもシンプルなのに、これまた旨いね! 酒にぴったりだろうが……いや、まだ仕事があるからね……ぐぬぬっ』


『何ッ!? なんだ、この鼻を抜ける豊かな香りは――! エビというもの、殻をそのまま食べても美味しいではないか。しっかり噛んでいくと、口の中に無限の風味が広がるぞ――ッ!?』


 二柱の神様が、こんな感じで脳内でリアクションをとってくれるので最近は結構楽しくなっていた。


 レンティア様たちはわいのわいのと騒いでいる。


 街の外れまで戻ってきた辺りで、ひとしきり盛り上がり終わり、お二方はお仕事に戻られた。


 その後は僕も、引き続き自分の時間を過ごしながらダラダラと一日は過ぎていった。


 そして夕方頃に宿でカトラさんとリリーと落ち合い、食事会の手配をしてくれたジャックさんから伝えられた集合場所と時間をリリーから聞いたのだった。


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