おすすめの場所
お久……しぶりです……(小声)。
更新が長らく止まってしまい、申し訳ございません。書籍の方の原稿を書いていたら、気付いたらこんな時期に……。
気を抜いたらもう年が変わってしまいそうです。
さて、【書籍4巻】が『来年1月12日ごろ』に発売が決定しました!
なろうで現在公開中のネメシリア編のあと、迷宮都市ダンジョールにいき……そしてさらにその後、神都という街を舞台に描いた章になっています。
二つも先の章……。
旅も一段落、という箇所までいっていますので、ぜひお手に取っていただけますと幸いです。
部数的に書店で見つけられるかわからないので、アマゾンなども検討していただけると良いかと。
それでは、webの更新も心を入れ替えまとめて予約しておきたいと思います。
毎日12時ぴったりの更新です。よろしくお願いします。
現在なろうでは、港町ネメシリアにリリーの親であるメアリたちも来て、一緒に観光している最中になります。
では、本編どうぞ。(長文失礼しました)
「はい! そうだ、ついでに何か買っていかれませんか? うちの野菜はどれも美味しいですよ」
店先まで近づいていくと、セナが両手を揉みながら野菜を売り込んでくる。
「ごめんなさいね。私たち、今いろんな場所を回ってて」
商魂たくましいが、ちょっとわざとらしくて可愛らしい動作に、カトラさんも思わず笑顔になりながら断っている。
「また今度、時間があるときにたくさん買いに来させてもらうわね」
「約束ですよ? お待ちしていますので」
そこまで言うと、セナは握っていた両手を離した。
なんとなく八百屋モードから抜けた気がする。
「そういえば、その格好。みんな素敵だね」
僕たちの服装を見て、最後に目の前にいたリリーに伝えてくれている。
「……ありがとう」
「ねえカトラちゃん。こちらは?」
その後ろではメアリさんが、カトラさんにセナのことを訊き、手早くかくかくしかじかと説明を受けている。
「まあ、さっき話していた漁にも一緒に行ったのね」
メアリさんは嬉しそうに自ら前に出る。
「あの、こちらは……」
「リリーの母のメアリよ。リリーたちと仲良くしてくれてありがとうね」
「リリーちゃんの!」
一瞬戸惑った様子だったセナも、メアリさんがリリーのお母さんだと聞き驚くと、ぺこりと頭を下げた。
「はじめまして、セナです。お綺麗だからびっくりしちゃいました」
「まあ。ふふっ、ありがとう」
メアリさんが嬉しそうなのは、娘の新しい友達に会えたような感じだからなんだろう。
「あれ? でもリリーちゃんたちは旅の途中だって……」
さっきジャックさん夫妻とリリーの関係を知ったニグ婆とは違って、セナはクーシーズ商会とかに関することは知らないもんな。
僕たちのことは、ただの旅人だとしか聞いていないわけだし。
それなのに何故、母親が突然現れたのか。
そんな当然の疑問に、リリーが答える。
「パパとママも仕事で、昨日ネメシリアに来た」
「ああっ、お仕事で! じゃあ……商人?」
「うん、そう」
交易が盛んな街。
ネメシリアに来るとなったら、もう商人一択になる感じみたいだ。
というかそもそも、この世界でいろんな場所を回るのは冒険者とか、商人くらいなのかもしれないが。
「そうだわ。せっかくだし、セナちゃんにこの辺りでおすすめの場所を教えてもらえないかしら?」
もう行く流れかと思ったけど、最後にメアリさんが手を合わせてそんな提案をする。
「派手じゃなくても構わないから、どこかあるからしら」
「おすすめの場所……あ、そうだ」
顎に手を当て、考え始めてくれたセナはすぐに思い当たる場所があったらしい。
「ほんと、派手じゃなくて地味ですけど。この近くにある資料館なんてどうですか?」
「資料館……?」
僕が訊くと、セナが頷いて詳しく説明してくれる。
「うん。そんなに規模も大きくなくて、あんまり行く人もいないけどね。一応あるだけで、町内会で管理しているくらいの場所だから」
へぇー。
だけど、いくら小さい規模でも資料館があるなんて凄いな。
日々の余裕なんかも日本とは全く違うから、そんなものがあるとは思いもしなかった。
「じゃあ……行ってみましょうか!」
メアリさんが僕たちの表情を確認してから、最終的な決定を下す。
セナにはそれからさらに説明を聞いたが、ネメシリアの街や漁師たち、移民たちの歴史を残すためにその資料館は作られたらしい。
この街も古くからあって、歴史を大切にする人々がいるからこそ、そんな施設があるんだと思う。
行き方も教えてもらい、セナとは別れることになった。
「ありがとうね、それじゃあまた」
カトラさんの挨拶に続いて僕たちも「バイバイ」と手を振り、セナの実家である八百屋を離れる。
あまり距離はないとのこと。
真っ直ぐ行くと、小さな十字路に出る。
「あそこに大きな木が見えるので、こっちで間違ってないみたいですね」
十字路を右に曲がり、進んでいったら大きな木がある家が見えてくる。
ちなみにこの木がある家。
セナ曰く、ダンドたちの家だそうだ。
家が密集していているエリアなのでだだっ広いわけではないが、周りの家と比べると土地も広く、家も歴史を感じさせる。
アルヴァンさんは仕事で、ダンドもニグ婆と作業の手伝いに行かされているのだろう。
家の中から人の気配はしない。
それから少し歩くと、小さな建物が目に入ってきた。
『資料館』と書かれた看板がドアにかかっているので、ここで間違いないだろう。
「可愛らしい場所ね」
メアリさんがそう言いながら入っていくので、僕たちも続く。
入り口ではお婆さんが椅子に座っており、「何かあったら声をかけてください」と言われた。
というか、本当に自分たちの街の歴史を保存することが目的の施設なんだな。
入場料は取られなかったが募金箱があったので、僕たちは少し太っ腹に一人大銅貨一枚ずつ入れて中に入ることにした。




