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【コミック2巻 11/15発売!!】神の使いでのんびり異世界旅行〜最強の体でスローライフ。魔法を楽しんで自由に生きていく!〜  作者: 和宮 玄


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海の幸

「あら、もうこんなに」


「美味しそう……」


「あっ。僕たちの席はここらしいです」


 こちらもサッパリした様子のカトラさんとリリーが来たので、席に案内する。


 2人が歩いてきていると、アルヴァンさんたちも皿を持って戻ってきた。


「おぉーこれで全員揃ったな。ちょうど料理の準備も終わったところだ。さぁ食べるぞ!」


「すみません、お任せしてしまって」


 カトラさんがお辞儀をするので、僕とリリーも頭を下げる。


 するとアルヴァンさんは机に大皿を置いてから、親指で後ろを指した。


「感謝すんのはアイツと、婦人会の面々にだけでいいぜ」


 アイツと、婦人会……?


 カトラさんたちと一緒に、体を傾けアルヴァンさんの向こうを覗き込む。


「あ、サージさん」


 キッチンから出てきたのは、漁師組合の副組合長だというダンディーな細マッチョさん。


 それと、20代~40代くらいの年齢層が広い女性たちだった。


「やあ、この間はありがとうね」


「皆さんが、この料理を?」


「ああ、俺は少しばかりこちらのお嬢さん方を手伝っただけだけどね」


 僕が尋ねると、サージさんは後ろの女性たちを紹介してくれる。


 聞くところによると、こちらの皆さんは漁師の妻たちで結成された婦人会のメンバーだそうだ。


 今回漁に参加してくれた乗組員の奥さんたちが来てくれていたらしい。


「もうなに言ってるのよ。サージさんが一番働いていたじゃないっ」


 サージさんの女性人気は、かなり高いんだな。


 料理が得意で頑張ってくれていたとのことで、婦人会はきゃーきゃーと黄色い声を上げている。


 席に着いた乗組員たちは少し面白くなさそうにしているけど、あまり気にしていないあたり、いつものことなのだろうか。


 それか、サージさんへの尊敬や信頼関係ゆえなのかな?


「皆さん、ありがとうございます」


 とにかく、自然とカトラさんとリリーと声が揃いながら料理の感謝を伝える。


「好きなだけ食べてもらえると、あたしたちも嬉しいよ」


 婦人会の中で年長の方だろうか。


 サージさんの後ろから、ふくよかな女性が朗らかに言ってくれる。


 ……と、いうわけで。


 さっそく食事会が始まることになった。


 周りにも何個か机が用意されていたのは、婦人会のみなさんの分だったらしい。


 最後に、レイがキッチンから戻ってきた。


 僕の足下に腰を下ろしたけど、もしかして調理途中でつまみ食いさせてもらってたんじゃないよね?


 ぐっ。


 目で問いだたすと、視線を逸らされてしまった。


 こ、こいつめ……絶対食べてただろう。


 あ、口元に赤いソースがついてるし。


「はい、トウヤ君」


「ああ、すみません。ありがとうございます」


 レイと攻防を繰り広げていると、カトラさんが小皿に料理をよそって渡してくれた。


 今回のメインは、もちろんクラクだ。


 ショウガのような物を乗せたカルパッチョに、唐揚げ風の揚げ物。


 口に入れたら酸味が広がるマリネは、トマトに似た黄色いカンバと一緒に和えられている。


 ホクホクの芋とタコを、塩気のあるアンチョビ風の味わいにまとめ上げている物。


 そしてメインに最近ネメシリアで流行しているパスタにタコや、焼き目をつけたズッキーニっぽいものを入れた物まである。


 タコ三昧ならぬクラク三昧。


 巨大な魔物だったから大味なのかと思っていたけど、高級なタコと同じくらい味が濃くて美味しい。


 漁が難しいから高級なだけでなく、この味のクオリティーだから値が張るのかもしれないな。


 もちろんクラクだけでなく、海で獲れた魚なんかもある。


 こっちは塩焼きや煮物が中心で、ほろほろの身が甘くふんわりしていて美味しい。


 大人はワインに他の都市から来たという清酒、ネメシリアで人気のレモン酒を呑んでいる。


 ちなみに僕たちはレモネードを飲んでるが、これがまた最高だ。


 爽やかな酸味とクドすぎない甘み。


 スッキリ飲めるから、不思議と食事も進む。


 お酒もあり、大人数でわいわいと楽しむ食事会は夕方頃まで続いた。


 途中、すっかりカトラさんの顔も赤らんできたあたりで僕はそそくさとキッチンに行き、レンティア様たちに貢物を送ることにした。


 あまり待たせていると、自分ばかり食べてと怒られる未来がはっきりと見えたからだ。


 残しておき、持ってきた料理をアイテムボックスから取り出した自分の食器に移す。


 カップに入れたワインに清酒、レモン酒、一応ネメステッド様がお酒を呑めるかわからないので念のためレモネードも用意する。


 そしてあとは、一つずつ手に持ち送っていく。


 1つめ、2つめ、3つめ…………。


 テンポ良く送り終えると、脳内にネメステッド様の声が瞬時に響いた。


『これだ、これだッ! よくやったな使徒よ――! さぁ始めるぞ、我が甘美なる宴を!!』


 よ、喜んでいただけたようでなによりです。


『トウヤ、すまないね。ネメステッドのヤツも珍しく嬉しそうに目を輝かせてるよ』


 あ、レンティア様お待たせしました。


 目を輝かせているネメステッド様、なんか微笑ましいな……。


『酒も助かる。とりあえず、感想は次に会う機会にでも、それじゃ、アタシも失礼するよ』


 早く呑みたかったのだろう。


 レンティア様もそれだけ言うと、気配がなくなる。


 キッチンから戻りながら、僕はひとまず使徒としての仕事が完了したことにホッとしていた。


 クラク漁もその規模に驚かされたけど、まあ自分もこうやって美味しい物を食べられたから良かったかな。


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